0202・ラーディオンへの説明
「ダンジョン攻略が終わった後、一応の義理で探索者ギルドに報告に行ったら嘘吐き呼ばわりされたよ。で、面倒だから帰ろうと思ったら絡んできてさ。また【陽炎の身体強化】で威圧したら、2階からギルドマスターっぽいのが慌てて下りてきた」
「そして威圧した私達が悪いみたいに言って、探索者証を没収だとか言い出したの」
「はぁ? 探索者証って……犯罪などを犯していない限り、無理矢理に取り上げる権限なんてギルドマスターにすら無いわよ。かつて好き勝手をするギルドマスターが居た所為で、誰も勝手に取り上げるなんて出来なくなってる筈」
「でも探索者証を没収だーって言ってたから、ミクが顔面に投げつけて叩きつけてたよ。そのうえで、ゴールダームに戻ったら報告するから覚悟しておけって言ってギルドを出たの。わたしも投げつけておいたけどね」
「そりゃ頭を抱えただろうね。何をバカな事を考えたのか知らないけど、結果としてはギルドマスター失格の事をやらかしただけさ。むしろ自分の立場が最悪になっただけだね」
「バカはそんな常識的な事は考えないよ。第三王女が居る時に下っ端が押しかけてきて、王女に喧嘩を売って土下座。次にギルドへ行ったら、温情で探索者証を返してやるから感謝しろって言ってきたし」
「……頭が悪過ぎるだろ、そいつ」
「その後、第三王女に喧嘩売って土下座。エルフみたいに野蛮だって言われて激怒してたから、多分エルフだったんだろうね。わたし達は後の事を兵士に任せて、王城に行ったからどうなったか知らないの」
「成る程。王城には何しに行ったの?」
「王城内の倉庫に溜めてあった魔石を浄化。【真偽判定】用の紙を素早く乾燥させる為に魔剣を渡して、その後は脱兎の如く逃げ出したよ。あの王太子に絡まれるのは御免だからね」
「そうそう。無理難題を言われる前に逃げないと、何をさせられるか分からないもの。わたしもミクも一気に逃走したわよ。別に絡んできても叩き潰せるけど、そうすると王太子殺しになっちゃうからね。それは余計に面倒臭い」
「それ以前に犯罪者とかじゃなきゃ殺せないし、それを分かって使おうとしてる可能性がある。あの王太子はそういう面倒臭いタイプ。だからこそ、早めに逃走しておく必要があったのよ」
「邪魔臭いタイプねえ。その後は飛んで戻ってきたんでしょうけど、夜に部屋に戻ってたの? あんまり良い事じゃないし、怪しまれるわよ?」
「門を通った記録も無いしね。とはいえ外の門なら、そこまで文句も言われないと思うよ。あっちは人通りが多いから、顔なんていちいち覚えてないだろうし、2~3日後なら高い確率で忘れてるさ」
「なら問題なさそうだね。そろそろ話す事も無くなったし、私達はギルドに言ってくるよ。一応ラーディオンに説明しておいた方がいいだろうからね」
「了解、了解。あの小坊主も知っておいた方が良いし、探索者にやられた事だからね。把握しておかないと、妙な失敗をしかねないわ。面子の問題も絡んでくるから、話しておかないと逆恨みされるかも」
「じゃ、とりあえず行ってくる」
「いってらっしゃい」
それなりの時間になっているが、昼食には大分早い。何処かの青い星ならAM10:00頃であろうか。そんな時間に探索者ギルドへと行き、受付に依頼が終わった事を告げておく。
「あれは特殊な護衛依頼でしたので、完了の報告は要りませんよ。向こうで報酬は支払われたでしょうし、ギルドとしても他国の王族には関わり辛いですから」
「報酬は支払われたんだけど、ちょっと色々あってね。とりあえずラーディオンに会える? 今の間に説明しておかないといけない事があるの」
「分かりました。少々お待ち下さい」
受付嬢が2階へと上がって行き、少し経つと下りてきた。どうやら上に上がって問題ないらしく、ミクとアレッサは2階に上がりノックした後でギルドマスターの部屋に入る。
中ではラーディオンが書類と格闘していたが、ミクとアレッサはスルーしてソファーに座る。そのままコップと樽を出して適当に飲んでいると、ようやく一段落ついたのかラーディオンが顔を上げた。
「ワシに何か伝えとく事があるらしいが、なんだ? お前さんからの言葉は聞くのがちと怖いんだがな」
「そんな怖い事は言ったりしないって。ただ説明しておかなきゃいけない事を言うだけだよ。私達はジャンダルコ商王国に第三王女の護衛として行った訳だけど……」
「ジャンダルコ商王国にはエルフが相当入り込んでたよ。王族専用の屋敷、そこの執事長がエルフだったり。砂漠で襲ってきた連中がエルフだったり、王都ブランの闇ギルドや裏組織がエルフだったり」
「………いやいや、それは入り込まれすぎだろ。いったいどうなってやがるんだ、ジャンダルコは? そもそも王族専用の屋敷って……いつ暗殺されても不思議じゃねーだろ」
「そうそう。私達も同じ事を思ったけど、ちょうど私達が護衛している時が王女暗殺のタイミングだったみたい。まあ、私が居る以上は絶対に不可能なんだけど」
「まあ、そりゃそうとしか言えねーな。お前さんが居て王女が殺されるなんてヘマが起きるとは思えない。他の連中ならいざ知らず、護衛対象の王女が死ぬ事はないだろうよ」
「で、王女を王都まで連れてった後、ダンジョン攻略に乗り出したわけ。さっきの話にあったエルフ、ネックレスとか足輪とか腕輪型の変装用魔道具を持ってるの。そいつらが暗躍してた」
「変装用の魔道具は、身に着ければ髪色と肌の色がブラウンエルフそっくりになるもの。元々エルフだった以上、耳とかはそっくりだから簡単に騙せてたのよ。見つかるまでは」
「成る程。お前さん達が見つけ出したからパニックになったんだな。誰がエルフか分からないとなったら揉めるだろう。疑心暗鬼で何をしだすか分からん」
「平民には伏せてあったからそこまでだけど、それでも王城でアレッサが【罪業看破】や【真偽判定】をする羽目になったけどね。そうそう、ゴブリンの魔石で作った紙に、ゴブリンの魔石を握りこむと【真偽判定】を好きに変えられるらしいよ」
「なに!?」
「ジャンダルコの王城で発覚したんだけどね。王太子が集めた8人の真偽官のうち、6人が貴族に買収されてたの。それでミクの用意した【真偽判定】用の紙で調べたら発覚したってわけ」
「ゴブリンの魔石で作った【真偽判定】用の紙に、ゴブリンの魔石を握りこんだ状態で魔力を流すと、好きな色で光らせられるという単純なものだった。それでも発覚するまでは気付かなかったんだけど」
「成る程な。となるとゴブリンの魔石で作ったもんじゃなきゃ問題ないな。……違うのか?」
「ジャンダルコには正しい【聖潔】の魔法を教えたのよ。だから向こうでは魔石の濁りは除去できてる。で、濁りの無い魔石だと、ワイバーンの魔石製の紙と同じ事が起きるの。光の強弱が出たり、紫色に光ったりね。で、これが正しい魔法陣」
「流石に王城とかそんなのには、わたし達が関わる訳にはいかないからねー。ギルドマスターという要職にあるならまだしも」
「そうそう。後、これが水ダンジョンの地図で、これが水ダンジョンで見つけた魔剣。魔槍でもどっちでもいいけど、要らないからあげる。使いにくい長さの槍だし、電撃が穂先から出るだけだしね。私達にとっては役に立たないの」
「ジャンダルコのギルドマスターは私達の探索者証を取り上げようとしたし、更にはエルフだったりでゴチャゴチャしてるからね。結局、向こうでは渡さなかったのよ」
「………すまん、ちゃんと説明してくれ」
いきなりで上手く飲み込めなかったラーディオン。今度は丁寧に説明していくミクとアレッサであった。




