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0203・ラーディオンからの頼み




 「まず最初に言っておくのは、それまでの状況ね。私達が着いた頃には第3エリアまでしか貼り出されてなかったの。で、第3エリアを攻略した後だったかな、第4エリアの地図も貼り出された」


 「それを売ったのは<サンドローズ>とかいう貴族令嬢3人組のチームだったわ。ただし悪い噂が聞こえてくる3人組だったうえ、わたし達が地図を元に第4エリアを攻略して、第5エリアに行った際に目をつけられた」


 「目を付けるって……ああ、目障りに思われたのか」


 「そう。その結果、スラムのチンピラを嗾(けしか)けてきたので反撃、貪り喰ってやった。その際に3人ともエルフである事が判明。どうも貴族家を乗っ取ったみたいだね。もちろん見た目は魔道具で変えてるけど、本人達がエルフだと言ってたから」


 「エルフの全部かは分からないけど、エルフ至上主義みたいなものを持ってて、他の全ての種族を見下すからねえ。そんな事をしてるから怪物に喰われるんだけど」


 「そりゃな。そもそもエルフの国を敵に回しても勝てるんだろうし、そんな相手に手を出したら殺されるだけだろうよ。そのうえ喰うのを許してるのは神様なんだから、どうしようもねえっての」


 「その後は第5エリアを突破して、そのままの勢いで第6エリアも突破した。一応の義理で地図を渡してやろうかと思ったら、向こうのギルドに嘘吐き呼ばわりされてさ。それで面倒臭くなって出ようと思ったら……」


 「向こうのバカどもが、嘘吐きには身をもって教えてやるとか言って出て来たわけ。で【身体強化】でミクが脅したら、向こうのギルドマスターが慌てて下りてきたのよ。その時に騒がせて威圧したから探索者証を剥奪だ、とか言い出したの」


 「何だそのバカは? マヌケ過ぎるが、もしかして殺しちまったか?」


 「いーや、顔面に探索者証を叩き付けてやって、ゴールダームに帰ったら報告するって言ってやったよ。私達をジャンダルコの新人とでも思ったんじゃない? ランク11だとは思わなかったんだろうね」


 「ああ、バカやっても握り潰せるとか思ってたのか。そしたら相手がランク11で慌てたと。そのうえ相手の本拠はゴールダームとなりゃマズいわな、ギルドマスターをクビになる可能性が高い」


 「でしょうね。下っ端がわたし達を探し回った挙句、無理矢理に連れて行くって言ったんで、横から第三王女が口を挟んだもの。まあ、第三王女にも失礼な口を利いて、あわや首が飛びかけたけどね」


 「バカすぎるだろ、そいつら。話にならんぞ。幾ら探索者ギルドが中立だからって、王族への侮辱が許される訳ねえだろうに」


 「その後、第三王女と一緒にギルドへ行ったら、温情で返してやるから感謝しろ、とかホザいたわよ? また第三王女が小言いって、知らずにバカな事を言ったから土下座となったけど。ギルドマスターってバカでもなれるの?」


 「んなわけねーだろ。そんなマヌケがなれるなら苦労しねえよ。何かの力が働いたか、それともギルドマスターになって堕落したかのどっちかだ。そういうマヌケの所為でワシらまで変な目で見られるからな、ふざけるなってトコだ」


 「まあ、そいつはその後で第三王女に挑発されてエルフだったのがバレたけどね。そういえば筋骨隆々のムキムキエルフだったけど、あんなエルフって珍しいわよね? わたしでさえ初めて見たわよ」


 「ムキムキ? ……ああ! <筋肉バカ>か。そいつは有名な筋肉だけのバカで、ギルドマスターが集う会議でも役立たず扱いされてる奴だ。そうか、そういやジャンダルコのギルドマスターは奴だったな。しかし中身はエルフかよ」


 「エルフってだけで役立たずではないんだろうけど、エルフ至上主義に陥ってる奴等は漏れなくバカだね。まあ、他者を見下す事しかしないからだろうけど。基本的に見下す奴って低脳なんだよね」


 「そりゃそうだろ。バカだから相手を見下すんであって、まともならそんな事はせん。どんな相手でも警戒するのが一流の探索者だ。何の根拠も無く見下して、勝てて当たり前なんて考える奴から死ぬ。昔から変わらんこった」


 「まあ、何処の分野でも変わらないわね。っと話が逸れたけど、ミクが出した地図は水ダンジョンの全ての地図よ。第5エリアと第6エリアの地図になるわ」


 「これをワシに出されても困るが、まあ、受け取っておこう。今度ギルドマスターが集う会議で見せ付けてやるかな。新しいジャンダルコのギルドマスターは何を思うか知らんが、大変だろうよ」


 「そりゃねえ。自分の所のダンジョンの地図が、何故かゴールダームにあるんだもの。赤っ恥じゃ済まないでしょうよ。それも嘘吐きだと決めてかかった所為だものね」


 「流石に邪魔するのもアレだから、そろそろ私達は行くよ。その槍は売るなり何なり適当にして。誰も使わないし、イリュ達も要らないって言ってたから、必要な人が使えばいいよ。持ってても使わないし」


 「まあ、お前さんがそれで良いなら貰っとくが……。ところで第6エリアの攻略はいつからになりそうだ?」


 「今日は休みで明日からかな? それがどうかした?」


 「いや、実はハチミツの要望が来てるんだ。お前さんがワシに渡した謎金属の剣があったろ? アレを上に渡した際にハチミツの話になってな。上の方が乗り気になっちまって、取ってきて欲しいんだよ」


 「それはいいけど、面倒臭い関わりはお断りだよ? いちいち鬱陶しいし、そんなのの相手なんてしたくないし」


 「んー……あー……少し頼めないか、この通りだ!」



 ラーディオンが頭を下げてまで頼んでくるので、気になったミクとアレッサは詳しく聞く。



 「いったいどうしたの? ラーディオンって権力嫌いよね。それがどうしてそこまでするのか知らないけど、とりあえず詳しく聞かせてくれない?」


 「ああ。実はな、ゴールダームには王太子殿下しか居ないんだ、男のお子様はな。まあ、王太子殿下は23だ。とっくに成人してるし健康にも問題ねえ。後は王女しか居ない訳なんだが……」


 「「わけなんだが?」」


 「第二王女殿下がな、ある程度は探索者ギルドに協力的な訳だ。もちろん王族だから国優先ではあるんだが、貴族関係で鬱陶しい事になった際の窓口は第二王女であるベルカーラ王女なんだよ」


 「で、その王女がハチミツを求めてるから取ってこいって事ね」


 「いや、ちょっと違う。王様に献上するから取ってきてくれが正しい。ベルカーラ王女自体は気の良い王女で、戦闘能力も高いし戦闘センスも良い。ダンジョン国家の王族らしく、探索者にも協力的なんだよ」


 「成る程。ラーディオンとしても、助けてもらってる第二王女には便宜を図っておきたいと」


 「そりゃな。幾ら探索者ギルドと言っても、中立を保つ為には色々と手を尽くすしかねえ。少なくとも今の王族はギルドが中立を貫くメリットを知ってるからいいが、これからも窓口としては持っとかなきゃいけねえのさ」


 「方針転換されても困るし?」


 「そうだ。唯でさえエクスダート鋼は戦略物資だからな。ゴールダームの外交交渉の大部分を担ってると言っていい。だからこそ国の機関にされる訳にはいかねーのさ。もしそんな事になったら、他国が結託して攻めて来る」


 「これ幸いと周辺国が徒党を組みそうだね。そうなると勝てないし、傀儡国家の誕生かな? もしくは属国ってところか」


 「どっちにしたって碌なもんじゃねえ」



 好き好んで傀儡国家や属国になろうとする者など居ないだろう。ただし、危うい均衡(きんこう)である事は間違い無い。


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