0197・ギルドでの一幕
適当な話を終えて食堂に行き、大銅貨6枚を支払って朝食を食べる2人。食事が終わったらすぐにダンジョンへと行き、第6エリアへのショートカット魔法陣に乗る。周りの探索者が驚く中、ミクとアレッサは転移していった。
昨日既に攻略を完了している為、【身体強化】をして一気に走っていく。どんどんと進んでいき、あっと言う間に10階に辿り着いた。ボス部屋前では休めないものの、相談の為の休憩を行う。
「そうそう。ボスの巨大ミミズは水を吸い込むから、その吸い込んでいる間は動けないかな。だから吸い込み終わった後、ブレスを吐かれてる最中に接近して切り裂くのが一番良いと思う」
「成る程ね。でも2人だとどっちに吐いてくるか分からないから、一旦離れておいて、吐かれてない方が接近して切り裂く形かな? それが一番良いし、お互いに邪魔にならない方法でしょ」
「そうだね。それでいこうか」
2人の相談も終わり、ボス部屋へと踏み込んでいく。入り口の扉が閉まって注水された後、魔法陣が現れてボスの巨大ミミズが出現する。ボスはすぐに吸い込みを開始するが、知っている2人は後ろに下がって吸い込まれないように耐える。
ミクとアレッサの距離はある程度空いており、吸い込み終わったボスはミクの方へとブレスを吐いてきた。ミクはブレスを誘導するような速度で走り、アレッサに当たらないように自分の方へと向けさせる。
一方アレッサは【陽炎の身体強化】で走り、接近しながらウォーアックスを取り出して脇構えで近付く。ミクの方、つまり左を向いているボスの懐に潜り、右から左へと水平に薙いで切り裂く。
痛みを感じているかは定かではないが、水と体液が流れ出た事に対して怒ったボスは、アレッサに対して圧し掛かろうと倒れる。それを見たアレッサは慌てて逃走、一気に逃げ出した。
一方ミクはそれを見た瞬間にチャンスだと思い、【陽炎の身体強化】で接近しつつ長巻を取り出す。そしてボスが倒れた瞬間、一気に横に切り裂いた。
倒れているのでボスの体に対して縦方向だが、アレッサよりも広範囲を切り裂いたからか、大量に流れ出る水と体液。体から失われていく水と体液に、のた打ち回るボス。
結局、それが決め手となり勝利した2人は、ボスのブチ撒けた水と体液を避けつつ、ボスの死体を回収する。大きな巨大ミミズではあるものの、大型のアイテムバッグには入ったようだ。
「とりあえずは倒せたけど、最後のボスには相応しい強さかな? ワイバーンに比べれば弱いんだろうけど、それでも普通の探索者にとっては強いよ。実際に圧し掛かられたら確実に死ぬだろうしね」
「まあ、どんな鎧を着てようが、どれほど堅牢な盾であろうが死ぬだろうね。重量を使った攻撃っていうのは地味だけど強力だから、侮れないし厄介だよ」
脱出の魔法陣のある部屋にも水と体液が流れてきている為、綺麗にする事も出来ずに脱出する2人。外に出た後は、【清潔】と【聖潔】を使いつつ王都へと歩いて戻る。流石に門番が何かを言ってくる事もなく、王都の中へと入った。
真っ直ぐに探索者ギルドへと行き、受付嬢に攻略してきた事を伝える。あくまでもギルドに対する義理としてだ。
「水ダンジョンを攻略してきた……ですか。そのー……信用できないのですが」
「それならそれで構わないよ。あくまでも義理で伝えただけだから。じゃあ、行こうか」
「そうだね」
そう言って後ろを向いて出ようとすると、ニヤニヤした連中が囲んでいた。またバカどもかと嘆息する2人。何故か分からないが、ジャンダルコではこういう事が多いなと思っていると、早速調子に乗ったバカが突っ掛かってきた。
「よう。流石に聞き捨てならねえから、ちょっくら探索者の厳しさってヤツを教えてやるぜ。まさかダンジョンを攻略したなんつー、あからさな嘘を吐くヤツが居る………」
面倒になったミクは【陽炎の身体強化】を使い、鬱陶しいバカどもを黙らせた。頭の悪いマヌケどもの相手など面倒でしかない。こういう愚かな連中は力で黙らせるのが手っ取り早いのだ。
「鬱陶しいゴミどもが、いちいち関わってくるな。こっちは出て行くと言っている。所詮カスなのだから、身の程を知れ」
最近イライラする事が多いからか、段々容赦の無い言葉使いになってきているミク。「これはマズいな」とアレッサが考えていると、上の階から慌てて降りて来た者が大きな声を出す。
「いったい何者だ、こんな重圧を放っているヤツは!? そこのお前か、何故こんな事をしている!!」
「勘違いして調子に乗ったバカどもが喧嘩を売ってきたから、身の程を教えただけだよ。何故も何も、文句なら喧嘩を売ってきたバカどもに言えばいい。行くよ、アレッサ」
「ういうい、面倒臭いからさっさと帰ろう。最初から最後まで鬱陶しい所だったよ、ジャンダルコは」
そう言ってミクとアレッサは出ようとするが、2階から降りて来た奴が大声で話し掛けてくる。その事にミクの怒りは更に溜まる。先ほどは【陽炎の身体強化】でも手加減していたというのにだ。
「待て! 貴様らには帰っていいなど一言も言っていない!! ここでギルドの者を威圧したのだ、貴様らの探索者証を剥奪する!! お前達そいぶえっ!?」
「私の探索者証を取り上げるというなら渡してあげるよ。私はゴールダームを本拠にしている、探索者のミク。ランクは11だ。その私から奪ったのだから、覚悟をしておけ」
「じゃあ、わたし、も!! いやースッキリしたね。ランク11のわたし達から無理矢理に探索者証を奪った。さて、ラーディオンはどう出るのかな? それも含めて楽しみだねえ」
そう言って探索者ギルドを出て行く2人。残された者達は呆然とし、2階から降りてきたギルドマスターの方を向いている。
「名前はミク、ランクは……11! こっちはアレッサ、ランク11!! そんなバカな!? 本当にランク11だと!? しかもゴールダームが本拠という事は、あの<首狩り>ラーディオンの部下じゃないか!!」
「「「「「「「「「「く、首狩り……」」」」」」」」」」
かつて盗賊や迷賊を狩り、金品を強奪していた事があるラーディオン。そのときに名付けられたのが<首狩り>の異名である。それを知っている者は、彼を<首狩り>ラーディオンといって怖れているのだ。
盗賊や迷賊といえど容赦なく殺し、金品を強奪していく様は正に蛮族。それらを知っている以上、何を敵に回したかも分かろうというものである。
<鮮血の女王>であるイリュディナには頭が上がらないが、彼とてギルドマスターとして荒くれの探索者を纏められる実力者なのだ。ゴールダームの探索者は、そもそも他の場所よりも一段上のレベルにある。
そうでなければ世界最高難易度のダンジョンに挑戦など出来ない。ミク達の探索者証を無理矢理に奪ったとなれば、ゴールダームとジャンダルコの探索者ギルド同士で戦争になりかねないのだ。
何故なら探索者証を取り上げる権限など誰にも無い、犯罪でも犯していない限りは。そしてギルドマスターが喚いて取り上げようとし、2人は素直に従っただけである。投げつけた事は問題ではない。
「さ、探せ! さっきの2人を探すんだ!! このままだとゴールダームの探索者ギルドと戦争になるぞ! そんな事になってみろ、間違いなく国から目をつけられる。早く探してこい!!」
「「「「「「「「「「は、はい!!」」」」」」」」」」
慌てて探索者と受付嬢が動き出したが、何故こんな事になったのかと途方に暮れるギルドマスター。
何故も何も、お前の所為だろう。と何処かから聞こえた気がするのは、きっと気のせいではあるまい。




