0196・新たな魔剣
第6エリアの空を飛ぶミク。現在すでに9階を飛んでいるのだが、階段はもう発見している。というより、下りてきた階段の真横に10階への階段があった。明らかに怪しい配置である。
そんな階段を見たからこそ丹念に9階を調べているのだが、気になるものは見つからない。変だなと思いつつも外周を調べていると、明らかにおかしい物が1つあった。
それは、海と陸地の境界の場所に突き刺さっている1本の剣だ。そう、また剣である。当然ながらミクのテンションはダダ下がりであり、これ見よがしに刺さっている剣を圧し折りたい気分であった。
(相変わらず、何かと言ったら剣だね。多くの人間種の意識で出す物を決めてるなら、剣になるのも分からなくは無い。ただねー、真面目に戦う気があるのかと思うよ。剣は平均的な武器でしかないっての)
とりあえず近くに降り、オークの姿になると剣に近づく。岩に刺さった剣をそのまま放置するか引き抜くか、悩んだ挙句に引き抜く事にしたミク。
(適当にお土産にすればいいや、他の奴等に取られるのも何か違うし。仮にアレッサが使わなくても、あの3人の誰かが使うでしょ。私は絶対に使わないけどね。携帯性の高い、普通の剣を使う意味が無いから)
その程度の考えしかなかったのだが、近付くと突然海側から巨大な蛇のような魔物が顔を出した。何処かの青い星の者なら、シーサーペントとでも言うのだろうが、ミクにとっては蛇でしかない。
その巨大な蛇はミクに抜かせまいと水のブレスを吐いてきたが、それを横っ飛びでかわすミク。さて戦闘かと思ったら、巨大な蛇は海の中へと潜っていった。何が何やら分からないミクは困惑する。
(いやいや、水ブレスを吐くだけ吐いて去っていくとかおかしいでしょ! あれだけの為にあんなデカいのが出てくる訳ないんだから、早く出て来い。私に喰われろ!)
そう思いつつ待つものの、いつまで経っても出てこない巨大蛇。腹が立ったものの、仕方なく諦めて剣に近付くミク。すると剣に手が届くギリギリで再び現れた。が……。
「もらったぁ!!」
【太陽の身体強化】を使ったミクは、弾丸のように巨大蛇の顔に近付き喰らった。突如として空中で広がった肉が、巨大蛇の頭部分を食い千切り貪る。頭部を失った巨大蛇はあっと言う間に死亡。海に沈む。
それでも足りない肉塊は、海に潜って巨大蛇を食い荒らす。他にも大きなロブスターのような魔物や、巨大なムカデのような魔物も居たが、全て貪り食ったミク。魔物が近付いてこなくなった段階で剣の場所へと戻る。
(いやー、流石は海の中だね。見た事も無い魔物がいっぱい居たよ。鋏を持ったヤツもムカデのヤツも喰ったから、あの姿になれるようになった。ムカデの方は便利そうな感じだけど、鋏の方は使う機会があまりなさそう)
ムカデは蜘蛛と同じく、色々所に侵入する際に使えるだろう。蜘蛛と違って低い姿勢でも移動できるので、より狭い場所に入りやすい。が、ロブスターの姿は使いどころに限られる。それは仕方ない事であろう。
ミクは気を良くしつつ剣に近付き引っこ抜く。あっさりと抜けた剣は至って普通でシンプルな剣だった。装飾は碌に無く質実剛健な感じだが、唯それだけであり、剣としては平凡だ。
(幅広で短く、どちらかといえば叩きつける系の剣かな? 鉈に近いと思うけど、剣は剣だしね。それより魔力を感じるから魔剣な筈なのに、魔力を篭めても何も起こらない。どうなってるの?)
何度も魔力を篭めるのだが、何も動きを見せない魔剣。いったいどのような効果があるのか皆目検討もつかないが、魔力を流して突いたり振ったりしてみる。しかし全く反応は無い。
首を傾げながら適当に振っていると、地面近くを流れる水に当たった瞬間、蒸気になった事で気付く。これは水を気化させる魔剣だと。その事に気付いた瞬間、ミクはとても素晴らしい笑顔になる。
(これ、素材を乾燥させるのに物凄く使えるじゃん。せっかくだから解析してワイバーン製の物を作っておこう。そっちは短剣か棒でいいね。わざわざ剣である必要性が無いし)
水ダンジョンに置かれた、水を奪う剣。意味深長な魔剣であるにも関わらず、ミクにとっては素材を乾燥させるという物でしかない。否、そちらの方が価値が高いのだ。魔物など相手にならないのだから。
魔剣を本体空間に転送した後、ミクは気分良くボス戦へと向かう。今日ボス戦を終わらせておき、明日アレッサを連れてボスを倒したらすぐに帰ろうと思ったのだ。なので明日の為の下見である。
ソロなのに下見かと思うが、ミク1人なら何とでも出来てしまうので下見であろう。階段に戻ったミクは、すぐ近くの10階への階段を下りる。そして休憩をとる事なく、ボス戦へと挑む。
中に入るとミクの腰元まで水があった。入り口から外へと流れ出たが、再び注水されて腰元まで水が来る。あくまでもオークの背丈で腰元だ。それでもアレッサにすれば厳しいだろう水量である。
最後はどんな魔物なのだろうと思い構えていると、出てきたのは巨大ミミズであり、そいつは口を開けて吸い込んできた。一気に水が無くなっていくと同時に、ミクも吸い寄せられていく。
すぐに後ろに飛んで事なきを得たが、流石にボス部屋の大半の水を飲み込んだのではなかろうか? そう思っていると、突然水のビームみたいなブレスを吐いてきた。
巨大蛇は水弾みたいなブレスであったが、こちらは大量の水を一気に吐きかけてくるようだ。ミクは走りながら回避するものの、水ブレスは止まらない。巨大蛇もそうだが、こいつも物理的なブレスである。
ミクは素早く巨大ミミズへと接近すると、そのまま触手を長い刃に変えて切り裂く。すると、切られた箇所から大量の水と体液をブチ撒けながら、暴れるようにのた打ち回り始めた。
大量の水はともかく体液が気持ち悪いが、しばらく待っていると扉が開く。つまり倒せたらしい。ワイバーンと違って締まらないボスだと思いながらも、ミクは巨大ミミズを本体空間に入れる。
そのまま脱出の魔法陣で外に出ると、ピーバードの姿になって王都へと帰るのだった。
宿の部屋へと戻ったミクは、アレッサをベッドに寝かせ、自身も下着姿になってベッドに寝転ぶ。そのまま朝まで色々な事をして過ごすのであった。
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翌朝。日の出と共に起き出したアレッサに挨拶し、ミクは昨日の夜に攻略してきた事と魔剣の事を伝える。
「1人で下見かぁ……分からなくもないけどね。ミク1人の方が圧倒的に安全なのは間違い無いし。それよりも魔剣ってどんなのだったの?」
「水を気化させる魔剣。水に浸けて魔力を流すと、水が蒸気に変わってた。面白いのは熱も無く蒸気になるところかな? 強制的に気化させている感じだね。素材を乾燥させるのに役に立つよ」
「あ、そう……」
内容を聞いて興味を失ったアレッサ。しかし、ボスの事を聞いて理解する。ボス戦のフィールド、その水を減らす為の魔剣なのかと。逆に言えば、魔剣無しでの攻略は極めて厳しいと思うのだった。
「そうでしょ? だって巨大ミミズから一気にブレスを吐かれるんだからさ。ミクが魔剣持ってっちゃったら、誰も攻略できなくない?」
「そんな事を言われても知らないよ。ボスが倒せないなら、それは単なる実力不足でしょ。魔剣なんて先に取った者勝ちなんだからさ」
「まあ、そうなんだけどね。とはいえ巨大ミミズだから倒せなくても誰も困らないかな。それにミクの言う通り、早い者勝ちなのは事実だし」
そもそも自分の実力で攻略するのがダンジョンであり、魔剣が無ければ攻略出来ないようにはなっていない。




