0191・第5エリア・5階まで
ミクがジッと見ている方角、そこに居る3人は結果として近づいてこなかった。アレッサは安堵し、貴族という面倒な生き物と関わらずに済んだ事に胸を撫で下ろす。ミクも目線を外し、2人は移動する。
どうやら向こうも1階をウロウロしていただけで、2階に下りる事が出来たのかも定かではない。ミクとアレッサは適度にウロウロしながら魔物と戦い、階段の位置を確認。2階へと下りていく。
2人にとって3キロ四方というのは、そこまで広い空間ではない。実際ゴールダームのダンジョンは大変なのだ。20キロ四方の中にある階段を見つけ出すというのは簡単ではない。
地図があるならば良いが、無い場所ではどこにあるか分からず、虱潰しに探すしかない場合も多いのだ。当然、見つけ出す事は簡単ではなく、ウロウロしている間に死亡する探索者もよくいる。
最前線が大変なのはそれもあり、探索者同士が地図を教え合うという事も無い。探索者にとって自分達で作った地図は財産だ。そのうえギルドに売れる物でもある。
当然ながらタダで渡す事など無いし、なんだったら盗み見ようとする者も居るぐらいだ。そうやって情報を得ている者も居ない訳ではない。それぐらい、自分達で階段を探すというのは大変なのである。
「向こうの貴族令嬢も探してたんでしょうけど、見つけられなかったんでしょうね。もしくは階段だけ確認して戻った? 少なくとも2階に下りてきてないから、ここに居ない事は間違い無いよ」
「なら今の内に早歩きで調べて歩こう。運が良ければ5階くらいまでの階段は見つけられそうじゃない? 3キロ四方だとそこまで広くないし。ゴールダームの第6エリアよりマシ」
「あそこはねー、思ってるよりも遥かに広いから仕方ない。ピーバードの姿なら簡単に調べられるんだけど……。夜の間に調べておいた方がいいかな? 階段の位置を全部調べておいて、明日攻略するとか」
「……別に悪くはないと思うけど、それはそれでどうなのか? という気はしないでもないかなぁ。反則だと思えるけど、決してやっちゃいけない訳じゃないし……」
「ついでに言うと、今は誰も居ないんだよね。まあ。だからと言って隠れてるヤツが居ないとも限らないから、流石にやらないけど」
「それが良いわよ。貴族とかだと、おかしな魔道具とか持ってる恐れがあるし、案外遠くから確認してたりするかも。今この階に居るのかも分からないし、危険な事はしないに限るわ」
そんな話をしつつの早歩きで3階の階段を発見。下へと下りる2人。
案外言っていた通りに5階まで下りられるかもしれない。そう思っていたら、その通りに5階まで下りられたようだ。現在時刻との兼ね合いで帰る事にしたが、明日には攻略が終わるだろう。
「まさか5階まで簡単に階段が見つかっていくとはね。こういう場合はゴールダームより簡単だと思えるわ。水浸しと泥塗れには怒りしかなかったけど」
「それでも1階層の広さを考えたら、そこまで腹も立たないけどね。上下から攻めてくる場所でひたすら階段探しよりは、よっぽど楽だと思うよ。向こうはゴブリンの集落もあるしね」
「まあ、あれは面倒臭いという程度で終わるから別に良いけどね。実際に赤いゴブリンも緑より少し強い程度でしかないし、命の危険を感じるような連中じゃないから」
「盾持ちエルフより苦戦しないのは間違いないね。アレは珍しくアレッサが苦戦した相手だけど、もしかしてエクスダート鋼か何かだったの? あの盾」
「分からないけど、もしかしたらそうだったのかも。焦ってたから武器の強化もしなかったし、【身体強化】も忘れてたの。ミクに言われて使ったら、あっさり輪切りだったけどね」
「それは知ってるけど、妙に苦戦してたのが気になっててさ。ワイバーン製の物って強化してなくても、結構な威力をしてる筈なんだよ。そうすると粘られた理由としては、あのエルフの腕も然る事ながら盾が優秀だったと考えた方が自然」
「だねえ。あのエルフの腕を思い出すと、そこまで優秀だったかは疑問がある。やっぱり焦ってたのと相手の盾が良かったんじゃないかって思う。それにしても、エクスダート鋼を盾にねえ……」
「意表を突く良い方法なのかもね。実際アレッサが粘られた以上は、普通のヤツで普通の装備なら猛威を振るうんじゃないかな? エクスダート鋼の盾を突破するのは難しいでしょ」
「普通の装備じゃ無理でしょうね。どれだけ頑張ってもウィリウム鋼でしょ? それじゃエクスダート鋼の盾は突破できないわ。………あれ? そう考えると、エクスダート鋼の盾って相当厄介?」
「多分ね。確実に防げる、と思ってるエクスダート鋼の盾で防いで、他のヤツがその隙に攻撃。それで致命傷を与えるって戦い方だと、相手が賊とはいえ苦戦すると思うよ」
「うん、それは確実。となると、少ないエクスダート鋼を活かすには盾の方が良いって事?」
「だね。武器は最悪なら敵の急所とか隙間を狙う、または鈍器系で潰せばいい。それよりは確実に防げる盾で防ぐって形だろうと思う。考え方として悪くないし、現にアレッサは粘られた」
「むー……賊如きに粘られたのよねー。それが物凄く腹立たしい。今も納得はいってないけど、仕方ないか。実際に止められてたのは間違い無いし」
そうやって話していると脱出の魔法陣まで戻ってきていたので、上に乗ってさっさと脱出。王都への道を帰る。相変わらず暑いのかフードを被ったまま、口を開く事は無いアレッサ。
王都に戻り、そのまま食堂へ。大銅貨6枚を支払って注文すると、席に座ってゆっくりと待つ。そこまで時間も掛からずに運ばれてきたので、食べ始めるもアレッサが話し掛けてきた。
「何かすっごい悪意が飛んできてるんだけど、どういう事? 敢えて見ないようにしてるんだけど、ミクは確認出来るよね。教えてくれない?」
「ダンジョンで見た<サンドローズ>とかいう奴等。そいつらがこっちに悪意を撒き散らしてきてる。何かしてきたら喰うから放っておいていいよ。本体空間にアレッサを入れれば、傷つけられる事もないしね」
「それは確かにそうね。ならゆっくりしてて大丈夫だし、熟睡できそう。いつもそうだろって言われたら、返す言葉が無いけども」
「そこは気にしなくていいんじゃない? 12歳に戻ってるんだし、生きている以上はそうなるでしょ。私は分からないけど、それは私が特殊すぎるからだしね」
「特殊も特殊、この世にたった1人しかいない特殊さよ。それはともかくとして、よく分からない貴族令嬢3人ならどうなってもいいね。バカな事をしたら、バカと同じ末路を辿るだけだし」
「バカな事をするからバカと同じ末路を辿るんだけど、その事をバカは理解しないんだよねー。バカだから」
「仕方ないわよ。古今東西、何も変わらない事だもの。あれよ、真理ってヤツじゃない?」
何処がどう真理なのかは知らないが、食事を終えたミクとアレッサは宿へと戻る。どうも同じ宿に泊まっているらしく、とある部屋に入っていった貴族令嬢3人。
ミクは監視のしやすさに喜びつつ、アレッサを綺麗にしてベッドに寝かせる。自身も下着姿になるとベッドに横になり、貴族令嬢だけでなく様々な物を監視していく。
今日は瞑想の練習は無理だなと思いつつ監視していると、貴族令嬢の部屋から1人が出て何処かへと行ったようだ。2人は残っているものの、1人は何をしに出かけたのだろう?。
その1人も追えているが、あくまでも追えているのは反応だけだ。しかし、向かっている先がスラムな事に奇妙さを感じるミクであった。




