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0189・水ダンジョン・第4エリア攻略




 朝。日の出と共にアレッサは起き、ミクも起きる。挨拶をした後、頭が覚醒するまで雑談に付き合い、その後は宿を出て食堂へ。大銅貨6枚を支払って食事を注文すると、席に座ってゆっくり待つ。


 適当な話をしつつ待っていると運ばれてきたので、急いで食べて外に出た。混雑してきたので早く食べたのだが、何かあったのだろうか? 2人が首を傾げつつ探索者ギルドへ向かうと、そこは探索者でごった返していた。


 どうやら食堂の混雑は、地図を見るのを諦めた者達が押し寄せて来ていたかららしい。ミクとアレッサは顔を見合わせ、仕方なく突入する事に。


 無理矢理に押し退けつつギルドの中へ入り、怒号と喧騒の鳴り響く間を通り抜けて地図を確認する。肉塊は一目見れば覚えられる為、全て一瞬で確認すると、すぐに外へと出ていく。


 しかし外から入ろうとする者が多い為、簡単には脱出できない。仕方なく無理矢理に肩で押しながら脱出していくミクと、その後ろをついていくアレッサ。ようやく外に出ると、安堵の溜息を吐く2人。



 『お疲れ様でした。アイテムバッグの上に乗っている私も大変でしたよ。誰かが触ってきましたが攻撃していいものか分からず、仕方なく耐えていましたが、それで正解だったようです』


 「お疲れ様。それにしても混雑ぶりがおかしいと思うのは私だけ? あれ絶対に攻略も出来ない奴等も見てたよ。そもそも第4エリアまで行ってるのか分からないし、行けてても攻略できそうにない風貌の奴はいっぱい居た」


 「お疲れー。多分だけど、皆が集まってるから集まるっていう野次馬も多かったんじゃないかな? ミクの言った通り、攻略できそうにない連中が必死に見てたしね。それより確認できた?」


 「大丈夫。確認できたし、もう覚えた。後は攻略するだけ」


 「それじゃ、ダンジョンに行こうか」



 そう言って王都を出ると、ダンジョンまで歩いていく2人。相変わらずアレッサは暑そうにしているが、いい加減に慣れないものかとミクは思っている。もちろん口には出さないが。


 ダンジョンに着くと、すぐに第4エリアへのショートカット魔法陣に乗る2人。転移した先は、昨日聞いた通り泥沼のような地形であった。所々に浮島のような物があり、そこでは休めるのだろう事が分かる。


 しかしそれ以外には何も無く、泥の地面がひたすら続くだけであった。よくもこんな場所を突破したなと、褒められるべきであろう。それぐらい、面倒臭そうな場所である。



 「アレッサ、泥の中に魔物が居るから注意するようにね。どうもこの泥は思っているより重いみたい。逆に言えば、【身体強化】をしていれば泥の上を走れるんじゃないかな?」


 「え? ……正気、なんだ。いやー、それは流石に………ってマジで走ったし。でもわたしは無理でしょうと思うんだけど、こっちに来いってジェスチャーしてる。……仕方ない、覚悟を決めよう。女は度胸!」



 アレッサは【陽炎の身体強化】を行い一気に走る。すると高速で足を動かしているからか、泥の上を走りぬける事に成功。走った本人が一番驚いているのは、出来ると信じていなかったからであろう、


 確認して問題ない事が分かった為、2人は一気に走る事にした。流石に階段ではゆっくり下りるしかなかったが、それでも慎重に下りる事で滑るのを回避。そのまま2階も走って行く。


 泥が付いて足が重くなっているものの、2人の足を鈍らせるには足りない。そんな爆走を繰り返して10階に到達。しかし休む事は出来ず、立っているしかなかった。



 「前のエリアもそうだけどさー、何でボス部屋前が泥だらけになってんのよ。どう考えてもおかしいでしょうが。本当にここのダンジョンは嫌がらせが酷いわ。ゴールダームより難易度が高くない?」


 「言いたい事は分かるけど、代わりに3キロ四方なんだから諦めよう。向こうは20キロ四方だから、広さが全然違うよ。そういう意味では、ゴールダームのダンジョンでこの嫌がらせをされたら攻略できないんじゃない?」


 「………うん、無理。こんな泥の地形が1階20キロも続くとか、悪夢以外の何物でもないわ。最悪は泥だらけになりながら休むだろうけど、一度腰を下ろすと二度と動けなくなりそう」


 「ここも休めないのは変わらないけど、食事も終えたしそろそろ行こうか? さっさとボスを倒して一旦出よう」



 ミクの言葉に頷いたアレッサは、ボス部屋の中に入っていく。2人が入って閉じられると、部屋の中に泥が補充される。前回と同じく膝の高さまで溜まっているが、今回は泥であり、動き難さが段違いに高い。


 そんな中で魔法陣が輝きボスが現れる。泥の部屋に登場したのは、全身が泥で出来たような人型だった。マッドマンと名付けられていたが、どうやら中身は二足歩行の生物らしい。


 身長は2メートル50センチほどで体中が泥だらけだが、その状態で動けるだけのパワーは持っている。そういうボスのようだ。ボスは名前と泥だらけという特徴しか書かれていなかった。


 なので実際に戦ってみるしかないのだが、ミクは早速ウォーハンマーを叩きつける。しかしそれは泥が動くことで流され、攻撃があらぬ方向へと向く。そしてそのすぐ後に殴られ、後方に吹っ飛ぶミク。



 「ちょ! 冗談でしょ!? ミクが攻撃を当てられず、しかも吹っ飛ぶってどういう事よ!?」


 「あー、ビックリした。触手を使って耐えなきゃ、体中が泥だらけになってたよ、まったく。アレッサ、そいつ地面の泥を操れる。私はそれで体ごと動かされたのよ、だから攻撃を外したというか外された」


 「成る程……って、ちょっと待って! コイツ地面の泥まで動かせるの!? それって反則じゃん! って、うわぁ!?」



 急に地面の泥が動いてアレッサはボスの方へと動かされ、そのまま右腕で殴られた。派手にぶっ飛ぶも、ミクが触手で受け止めた御蔭でダメージは少ない。そもそも泥の体である為、そこまで硬くないのだ。


 しかし厄介なボスであり、どうやって先行した者達は倒したのであろうか?。



 「ミク、どうするの? コイツの倒し方がよく分からないし、このままじゃズルズルと攻撃され続けるだけになるよ?」


 「とりあえず魔法から試してみようか?」



 まずは試しにと【火弾】を撃ち込むと、泥の壁で防いできた。【風弾】は大した効果もなく、【土弾】に至っては泥が飛ぶだけで意味が無い。となると……。


 ミクは【火弾】を最小魔力で連射する。すると嫌がるように泥の壁で防ぐのだが、泥が硬くなると別の泥を壁にしてきた。


 何故わざわざ別の泥を壁にしたのか? それを考えてすぐ、ミクはアレッサに【火弾】を放つように指示する。意味は分からないものの、とりあえずでアレッサは【火弾】を放つ。


 すると、腕で殴って【火弾】を無理矢理に消すマッドマン。その瞬間、ミクもアレッサも倒し方を理解した。



 「魔法が使えなきゃ倒せないとか、本当に厄介なボスね。それでも倒し方が分かっただけ楽なのかし、ら!!」


 「倒し方さえ分かったら楽勝だよ。じゃあ、魔力を篭めて本気で使うからー……気をつけてね」


 「へっ? ……って、逃げろー!!」



 ミクは直径2メートルほどの【火弾】を高速で連射する。それはもう【火弾】の魔法じゃないとツッコミたいものの、それよりも逃げるのが先なアレッサ。冗談でも何でもなく、メチャクチャである。


 最早【火弾】ですらない何かが当たる度に水分が失われ硬くなるマッドマン。そのまま焼かれ続け、奥の扉が開く。どうやら勝利したようなので魔法を止めるミク。


 かなりの熱風が吹いているが、その中心で黒コゲになった人型が倒れていた。マッドマンの中身はヒョロヒョロした人型で、とてもあれ程の泥が纏えたような肉体はしていない。


 気になったミクは中身の人型を食べてみたが、それで理解した。どうやらマッドマンは水を操る能力を持っているようで、それを使って泥を操っていたらしい、


 多少の泥しか操れなかったのは、それ以外に自分が纏っている泥も操っていたからだった。そして、この能力はミクにとって必要ない事も分かった。おそらく未来永劫使わないだろう。


 理由は、水が操れるなど怪しまれるだけであり、そんな能力を使うよりも喰った方が早いからだ。自分の近くにある水を操るだけの能力。


 透明トカゲと比べても、使えない能力である事は間違い無い。


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