0188・依頼の終わり
その後はスムーズに【真偽判定】も終わり、全てが終了した。夕方前ではあるものの、それでも夕食が食べられそうな事に安堵するアレッサ。第三王女と共に小ホールを出て王の執務室へと行く。
王太子は小ホールに残ってやる事があるらしく、このままさっさと帰りたい2人。何となくだが、あの王太子は好い性格をしている。そんな気がしているのだ。
王の執務室に行き、滞りなく依頼が終わった事を第三王女が伝えると、依頼料が支払われた。ミクは小金貨2枚、アレッサには中金貨1枚だった。それはいいのだが、ミクはそれ以外にも頼みがある事を話す。
「我に頼みか……もちろん叶えられる事であれば構わぬが、いったい何かな?」
「昨夜、私達の泊まっている部屋に押し入って来た連中が居る。そいつらは王都ブランの裏組織と闇ギルドだった。私は報復として皆殺しにしたけど、それを無罪にしてほしい。代わりに渡すのはコレ」
そう言って、ミクは樽を幾つか出す。それを見た王と宰相は首を傾げ、周りの騎士は動けるように腰を沈めている。いきなり樽を出したのだから警戒するのは当たり前だろう。
「これは裏組織と闇ギルドから奪ってきた貨幣が入った樽。闇ギルドの本部だったらしく、個人で持つにはちょっと多すぎるのよ、金額が。だから罪に問わない代わりに、コレをそっちに渡すってこと」
「こ、これは……!! とんでもないですぞ、陛下! 金貨が山ほど入っております!」
「何だと!?」
慌てて王も樽の中を覗くが、そこには小金貨、中金貨、大金貨が大量に入っていた。そもそもワインを寝かせる大樽に山ほどの金貨が入っているのだ、それは大量であろう。重量も凄いが。
覗いて驚いた後、王はミクの方を見て問う。
「我が国にとっては、むしろありがたいのだが……そなたは良いのか? これ程の金貨があれば遊んで暮らせように」
「私は探索者だし、小金貨を稼ぐのは難しくない。それと、流石にそれだけの量だと怪しまれるし狙われる。さっきも言ったけど、その量は個人で持つには多すぎるのよ。それなら然るべき所に渡して、代わりに堂々と出来る立場を得た方が良い」
「それが裏組織と闇ギルドの者どもを皆殺しにした事の帳消しですか……。釣り合っておらぬ気もしないでもないですが、このまま連中の死は闇に葬った方が良いという事ですな?」
「そう。本部だった以上、当然支部がある訳だしね。各国でそいつらが蠢動する可能性が高いけど、こちらとしては知らぬ存ぜぬで居たいの。こっちからすれば、襲ってきたからブチ殺しただけなのに、その後の責任まで持たされても困るってところ」
「お前が壊滅させたのだから何とかしろ。などと言ってくる可能性を潰したいという事ですね。ここで口裏を合わせて、そんな組織知りませんよ、という事にしたいと」
「ああ、成る程。つまり、お前達は足元に闇ギルドの本部があったのに知らなかったのか、と他国に言われる訳だな? 闇ギルドの支部が暴れれば、そのうち本部が我が国にあった事は漏れるだろう」
「その時に知らぬ存ぜぬを貫くと………件の闇ギルドが壊滅していた説明はどうします? いや、勝手に抗争で滅んだ事にしておいた方が都合が良いですな。それなら我が国は知らぬ存ぜぬが貫けます、もちろん怪しいのですが」
「その時には相手国の闇ギルドの事を突っ込んでやればよい。そちらに本部がある闇ギルドには随分困らされている、とでも言えば黙ろう。何処の国にも闇ギルドの本部はあるのだ。無いのはゴールダームぐらいであろうよ」
「あそこは様々な組織の出入りが早すぎますからな。ある程度の規模の裏組織や闇ギルドでも潰れる場所です。更に言えば<鮮血の女王>がおられますから……」
「やり過ぎた組織は問答無用で潰されるな。こちらとしては、そちらの言い分で問題無い。闇ギルドが滅んでおるのも都合が良いのでな、知らぬ存ぜぬを貫こう。それと1つ聞いていいかな?」
「なに?」
「ニムフィスから聞いたのだが、エルフィンの王が暗殺されたのは本当か? 娘は<鮮血の女王>と<影刃>に手を出して殺されたと言っておったのだが……」
「それは本当。私とアレッサは<鮮血の女王>の宿に泊まってるけど、実際にスラムでエルフの工作員どもと戦った。そいつらは侯爵の命令で、<鮮血の女王>と<影刃>の不老の秘密を探る為に襲ったと白状してる」
「何という事を……<鮮血の女王>の話を知らぬのでしょうか? それとも甘く見たのでしょうかな? どちらにしても愚かな事だ」
「当然、あの2人が大人しく黙ったままなんてあり得ない。その報復が王の暗殺。私は知ってるけど、エルフィンは必死に隠してるんじゃないかな? 王子が3人に王女が4人。大揉めに揉めるのは分かりきってる」
「つまり<鮮血の女王>の報復はそれも含むという事か。怖ろしいものだ。エルフィンは事と次第によれば傾くであろうし、東側の国々が動きそうな話よ。まあ、奴等が何とかすればよいのだ、我らの知った事ではない」
「そうでございますな。あの国に手を突っ込むよりも、我が国の建て直しの方が先でございましょう。エルフどもにどれだけ入り込まれていたか……それを考えるだけで頭が痛くなってきます」
その後は幾つか話をして執務室を出た。ミクとアレッサは第三王女に連れられる形で王城を出ると、さっさと貴族街を抜けて平民街へと入る。そのまま食堂に行って大銅貨6枚を支払い、食事を注文した。
椅子に座って一息吐きつつ雑談をしていると、周囲から気になる噂話が聞こえてきたので耳を傾ける。
「何でもダンジョンの第4エリアを突破した奴等がついに現れたらしい。そいつらが地図を売ったとかで、明日の朝からギルドに貼り出されるんだと。地図さえ見れればオレ達だって突破できるだろ!」
「そんな簡単に進めるなら、誰も泥地獄で苦労したりしねえっての! あの泥地獄は歩くだけで体力をとられるうえ、魔物が強くて厄介なんだよ。お前だって分かってるだろうが!」
「そうだぞ。挙句の果てには階段まで泥まみれだから滑るしよ。いったい何回階段から滑り落ちたと思ってやがる。そもそもお前が一番多いんだぞ、忘れたのか!」
「うっせえ! 地図が分かりゃ、無駄な所に行かなくて済むだろうが! そうしたら無駄な体力使わなくて進めるだろ!!」
「だからってボスが倒せる訳じゃねえんだぞ! ボス部屋まで行けたからって、勝てるとは限ってねえんだ。ボスの情報も出るだろうから、そいつを調べるのが先だっての!」
「チッ! 根性のねえ奴等だぜ!」
「てめぇが言うんじゃねえよ! 攻略した奴等が出るまで何も言わなかったじゃねえか! お前だって攻略者に乗っかってるだけだろうが!!」
「んだと、てめぇ!!」
情報はいいのだが、何故わざわざ喧嘩をするのだコイツらは。そう思いつつも食事を終え、さっさと店を出る2人。バカに構うほど2人は暇ではない。
そのまま歩いて戻り、宿の部屋へ。ベッドに寝転がろうとしたアレッサを抱き上げて服を脱がし、綺麗にした後にベッドに寝かせる。ミードの事を言うと、少し悩んだ後に飲む事にしたようだ。
樽からコップに注ぎ、少しずつ飲むアレッサ。レティーを含めた3人で適当な雑談をし、アレッサが眠たくなったら終了。ミクもベッドに寝転んで目を瞑る。
後はいつも通り瞑想の修行をするのだが、今のところ手応えが無く困るミク。何となくは出来ている気がするのだが、空気を掴むようなもので、合っているかどうかが分からないのだ。
何となく精神が休んでいるような……? 今のところはそんな感じのミクであった。




