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0186・真偽判定中




 「さて、城内の皆がここに集められているのは他でもありません。王命により皆の者を調べる事になったからです。我が国に特殊な魔道具を持ったエルフが侵入しており、この者達は魔道具で我らと同じ髪色や肌の色をしています」



 大ホールに集められた者達が「ざわざわ」と騒々しく喋るものの、第三王女が「静まりなさい」と言うとピタリと声を出すのを止めた。この辺りは流石に王城勤めだと言えるだろう。



 「現在、要職に就いている者や貴族は、王太子殿下が取り調べ中です。ここは使用人などが集められ、1人1人調べていく事になりますが、陛下はこれを機に城内の膿を出すと仰られました。その為に来ていただいたのが、ここに居るアレッサ殿となります」



 再び「ざわざわ」するものの、アレッサが前に出て挨拶を始めると静まり返る。どうやらとりあえずは聞くようである。



 「私が第三王女であるニムフィス殿下から紹介があったアレッサよ。私の持っているスキルは【悪意感知】に【罪業看破】、そして【真偽判定】となるわ。知ってる者も居るかもしれないけど、【罪業看破】は見ただけで犯罪者かどうかが分かる。そのスキルでこれから貴方達を調べていくわ」



 そのアレッサの言葉に、これから何をされるか分かったのだろう。大きなブーイングが起き、一気に騒がしくなる。第三王女が「静かにしなさい」と叫ぶも使用人達は治まらない。


 ミクはそんな中でも面倒臭そうに立っていたが、一部の連中がアレッサに詰め寄ろうとした瞬間、【陽炎の身体強化】で強烈な圧を出した。その瞬間に大ホールは静まり返り、ミクは一歩出て口を開く。



 「第三王女が静まれと言ったのだから、さっさと静まれマヌケども。それと、アレッサを害するというのなら、それは殺してくれと言っていると認識する。次に同じ事をしようとすれば殺す。理解しておけ」


 「……………な、何が殺すだ!! われ」



 ドパァン!! という音と共に、声を荒げた男の首から上が弾け飛んだ。ミクが裏拳を振り抜いたからだが、最初、大ホールの者達は「キョトン」としていて全く理解していなかった。


 その後ゆっくりと理解が広がり、大騒ぎになるかと思われた瞬間、再び【陽炎の身体強化】で圧を受ける部屋の全員。先ほどから王女達も受けているが、それは仕方ないだろう。



 「騒ぐな、静かにしていろ。先ほど第三王女が言っていた通り、魔道具を使ってブラウンエルフの見た目になっている奴がいる。それを調べる為に集められている訳だ。それを拒否する者は全てエルフと見做す……当然だろう?」


 「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」


 「どうやら殺される理由を理解したようだな。お前達は全員が疑われている、それを理解して粛々と調査を受けろ。気に入らんというヤツが居れば言え、即刻エルフと見做して殺してやる」


 「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」


 「理解したようだな。なら第三王女殿下、まずは<白の壁面>から始めましょうか」


 「え……あっ、はい! <白の壁面>をアレッサ殿に!」


 「こちらでございます」



 オルティマがアレッサに<白の壁面>を渡し、アレッサが触れるとスキルが表示された。そこには【悪意感知】【罪業看破】【真偽判定】の3つが出ており、間違いない事が分かる。



 「さて、この通りアレッサ殿は【罪業看破】に【真偽判定】を持ちます。【罪業看破】は見ただけで犯罪者かどうかが分かるスキル。それ故にまずは犯罪を犯した事があるかどうかでふるい分けを行います」


 「こ、これは!!!」



 騎士が驚くのでそちらを見ると、先ほど殺した男の肌が白くなっていた。つまり、おそらくだがエルフだったのだろう。まさかの偶然ではあるが、エルフが紛れ込んでいる事が事実となった。


 先ほどまでミクに悪意を向けていた者達も、今はパニックになったように周囲を見渡し、誰がエルフなのかと疑心暗鬼になっている。


 そんな中をアレッサは歩き回り、犯罪者とそれ以外に選別していく。エルフであれば機密を誰かに渡している可能性が高いのと、見た目を欺いていること自体が犯罪である可能性が高い事が上げられる。


 犯罪者とそうでない者に分けられ、犯罪を犯していない者は仕事に戻るようにと解放された。逆に残った者はエルフかそうでないかは別にして、犯罪を犯しているという事である。


 この時点で、大ホールに残った者達の心象は極めて悪い。もはや種族に関わり無く、犯罪者である事は確定しているのだ。そんな連中に対し、ミクが出した【真偽判定】用の紙で調べていくアレッサ。



 「貴方はブラウンエルフだ。貴方は犯罪を犯しました。貴方は金銭的な犯罪を犯している。貴方はお釣りをちょろまかした。お釣りをちょろまかす以外の犯罪は行っていない。よし、次」



 こうやってある程度の簡略化された質問を行っていかないと、残った者の人数である54人を今日中に捌く事など無理だろう。それでも見逃さないように質問をしていき3人目。



 「貴方はブラウンエルフだ。おっとー、遂に現れたかな? 貴方はエルフだ。はい、アウトー! って早速か……」



 ドゴォ!! という音がして、椅子に座らされていた男が吹っ飛ぶ。ミクが殴ったからだが、理由は立ち上がろうとしたからだ。アレッサをどうにかしようとしたのか、それとも逃げようとしたのかは分からない。


 ただ足や腰に力を入れて立ち上がろうとした瞬間、ミクのストレートが顎を直撃し、派手に吹っ飛んだという訳だ。慌てて周りの騎士が取り押さえようとするが、殴られた男は気絶していたので縄で縛る騎士。


 次の男は緊張しながらも、素直に【真偽判定】を受けるのだった。



 ◆◆◆



 昼食をはさんでも続けられており、今は49人目となっている。既にエルフは11人捕まっており、想定していた通り相当入り込まれている事が確定した。使用人の中にこれだけ居たとなると、筒抜けだったと言っても過言ではあるまい。


 つまり第三王女はゴールダームに着くまでに殺されていた可能性が極めて高いのだ。その事に思い至ったのだろう、第三王女の顔色が物凄く悪い。


 見つけたエルフから聞きだしたところ、どうもエルフィン本国から指示が出ていたらしく、かなり力を入れていた事がうかがえる。


 次期国王に利用しやすい第二王子を据える為、まずは第三王女から亡き者に。ゴールダームの付近に居る、エルフの裏部隊にその任務が与えられていたらしい。


 そして、それはゴールダームの近くに盗賊団という形で潜んでいた。つまり第三王女を救ったのは、完全に当時のミクなのだ。それとは知らずに助けており、分かった今も黙っている。ミクにとっては、どうでもいい事らしい。



 「それにしても助けてもらえなければ、私はあの時に死んでいたのですね。本当に助かりました」


 「まあ、車軸は意図的に切られていたからね。たまたま私が通りかかったから良かったけど、確かに死んでた可能性は高い。そういえば、あの時に言ってた侯爵はどうなったの? そんなに私を殺したいのか、って言ってたじゃない」


 「それが……あの後で本国に手紙を出し、騎士を派遣して頂いたのです。その騎士達が来る前に手紙が届きまして、そこには侯爵一族が領地から逃亡したと書かれていました」


 「って事は、侯爵ってエルフだった?」


 「今思えば、その可能性が高いかと……」


 「どこかの時点で侯爵家を乗っ取ったのかな? その可能性が高いと私は思う」


 「私も今はそう思います」



 何が繋がっているのかは分からないが、色々なものが複雑に絡み合っているようである。


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