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0185・王からの依頼の始まり




 王城を出たものの既に薄暗くなってきており、2人は慌てて走って平民街へと向かう。もはや何処でもいいので入ろうと思い、適当な店に滑り込んだ。大銅貨6枚を払って注文し、待ちつつ安堵の息を吐く。



 「やれやれ、ようやく落ち着いて食事が出来るよ。食べなくても問題ないけど、食事の邪魔をされた事は許せない。<喰らうもの>たる私の食事の邪魔をするなど、万死に値する」


 「そこまで? と思うけど、喰う事そのものが神様に認められた行為なんだよねえ。それを邪魔したんだから、たとえ普通の食事でも許せないかー。ま、あの兵士はクソだったし、喰われても仕方ないね」


 「どこに居るかも分かってるけど、今日喰うと私が疑われるし、その事も腹立たしい理由だよ。いちいち邪魔してくれちゃってさー、この怒りを何処に向けるべきか……」



 腹立たしい気持ちは分かるが、その怒りは何とか自分で解消してほしいと思うアレッサであった。


 食事後、さっさと宿に戻った2人。ベッドに寝転んだアレッサを持ち上げて服を脱がし、【清潔】と【聖潔】を使うのはいつも通りである。その後はアレッサを寝かせてミクも目を瞑り、朝まで瞑想の特訓をして暇を潰す。


 いつもと変わらない終わり方で、今日も1日が終わるのであった。



 ◆◆◆



 夜。何者か分からないものの、誰かが宿に接近しており、中に入ってくるのを感知した。ミクは目を開いて起き上がり、蜘蛛の姿になると部屋を出た。そして自分達の部屋の前の天井にブラ下がると、透明になって獲物を待つ。


 外からでも明らかにミク達に向けて悪意を飛ばしていた為、敵だという事は既に分かっている。ミクがジッと待っていると、すぐに怪しいローブ集団が現れ、何かの道具を使い鍵を開けようとし始めた。


 ミクはいつも通り上から麻痺毒を散布して麻痺させ、本体空間に転送したら部屋の中へと戻る。レティーが脳を食って得た記憶を聞きつつ、残りを貪る本体。


 レティーが読み取った記憶と情報で、王都ブランの裏組織の連中だと判明。どうやらミク達の食事を台無しにした兵士と裏組織は繋がっていたらしく、そいつらに兵士が依頼したようだ。


 それが分かっただけで抹殺理由としては十分である。喰らう許可があれば喜んで喰うのが肉塊というモノ。窓から意気揚々と出かけていくと、凄い速度でスラムへと移動して行く。


 アジトへと到着したミクはそのまま侵入。次々と麻痺させては本体空間に送り、レティーに脳を食わせる。途中から情報を聞きつつも貪り続け、全滅させたらゴミを捨てて完了。


 アジトにあった貨幣を強奪して次へと進む。どうやら兵士の中にも入り込んでいるヤツが居るらしく、そいつも喰う為に兵士の宿舎へと移動。次々に本体空間へ。


 ジャンダルコでも同様に腐った者が多いらしく、ミクの食事は無くならないようだ。喰える肉に喜びつつ本体空間に送っていると、今度は闇ギルドと関わりがある奴が出てきた。


 兵士の宿舎が終わった後、今度は商店が並ぶ区画へ。闇ギルドが使っている商店から貨幣を奪いさり、さらには闇ギルドの連中を根こそぎ喰い荒らす。全て喰い終わった時にはそれなりの時間だったが、宿に戻る事にしたミク。


 当然ながら闇ギルドがアジトにしていた建物からも貨幣をゴッソリ頂いてきた。所詮は闇に紛れた金なのだから特に問題は無い。ついでに言うと、ここが本部の闇ギルドであった為に相当の量が溜めまれていた。


 どうやら支部からの上がりも全て保管していたらしく、地下室の樽の中に山ほど金貨が入っていた。これはちょっとマズいという事で、明日王城に行った際に渡す事に決めたミク。額が大きすぎるのだ。


 宿の部屋には特に荒らされた形跡は無く、ミクはベッドに寝転がると目を瞑って再び瞑想の特訓を開始。朝まで暇潰しを行うのだった。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 翌日。朝日と共にアレッサが起きると、ミクも起き上がり挨拶をする。昨夜、裏組織と闇ギルドを潰してきた事を言うも、アレッサは特に驚く事も無く淡々と受け入れた。



 「まあ、いつもの事だし慣れたから、そこまで驚きは無いよ。それにしても、あの馬鹿な兵士の依頼なんて請けるからミクに殲滅されるのよ。当たり前の結果としか思えないわね」


 「そうなんだけど、そういう奴が居なくならないから私も食事が出来るのよ。それはともかく今の内に渡しておくね」



 ミクはそう言って、アレッサにエストックと大型ナイフを渡す。最初キョトンとしていたアレッサもすぐに理解したのか、感謝の言葉を言った後、剣帯を取り出して剣とナイフを着けていく。


 着け終わったら剣帯を身に着け、上手く抜けるかを何度か試す。何度も頷いているところを見るに、どうやら問題なかったようだ。


 ミクが今回作ったエストック、シンプルな菱型の断面を持つ細いタイプの物だ。切る事も考慮した少し厚めの物でも良かったのだが、アレッサは殆ど突きしかしなかったと言っていた。なので突きに重心を置いた物でも大丈夫だろう。


 そういった思いから作ったのだが、それで良かったようである。



 「そりゃね、十分な耐久力があるのなら軽い方が優秀だもの。切るなら重さも必要だけど、突くなら軽い方が良いのは当然よ。普通の片手剣で突いてたんだから、それに比べれば遥かに良いわ」


 「まあ、突きしかしないのに普通の剣を使ってもね? それなら普通に刺突剣で良いじゃない、ってなるのは当然でしょ。っていうか、何で刺突剣を持たないのよ」


 「そんな事はロリコンヴァンパイアに言って。あいつが剣でないと駄目だって言い張ってたんだし、私が望んだ訳じゃないわ。既に滅んでてこの世に居ないけど」



 この世に居ない奴には文句も言えないし、この事は考えてもしょうがないと切り捨てる2人。準備を終えていたので、宿を出て食堂に行くのだった。


 流石に昨日の酒場には行き辛いので、適当な食堂に入り大銅貨6枚を支払って朝食を待つ。特に昨日のような事は無く食事を終えた2人は、待っていてほしいと言われた貴族街への門の前で待つ。


 適当な雑談をしながらダラダラ待っていると、貴族街の門から第三王女達がやって来た。一通り挨拶をした後、ミク達は王城に向けて歩いていく。


 犯罪者を探すのは当然だが、一人一人調べていては時間が幾らあっても足りない。なのでアレッサに依頼された訳だ。今回は探索者ギルドで依頼を請けていないものの、王からの直接依頼なので問題はあるまい。


 あくまでも探索者ギルドでの契約は、探索者が不利な契約内容にされない為のものであり、王からの直接依頼を反故にする可能性は極めて低い。国家の恥になるからだ。



 「当たり前ですが、そんな事はあり得ません。何処かの<狂乱王>と呼ばれた者ならやるでしょうが、我が国の陛下がそのような事をされる事は無いと断言できます」


 「ま、それはともかく、王城の大ホールとやらに集められてるんだね?」


 「はい。第二王子殿下はアレですが、王太子殿下が陣頭指揮をとって、重要な役職の者を調べております。そちらは数が少ないのですが……」


 「使用人とか山のように居るだろうからね、こっちはわたしの【罪業看破】が必要でしょうよ。入り込むのもそういう所だろうし」


 「はい。それと申し訳ないのですが、最初に<白の壁面>を使わせて下さい。疑う者が出るでしょうから、先手で使います」


 「慌てて逃げる奴も居るかもしれないから、逃げられないようにしてからの方が良いよ。大ホールってヤツを閉めきるか、それとも騎士で塞ぐかだね」


 「私達もそう思い、既に準備は進めています」



 どうやら準備は既に出来ているようだ。面倒な仕事でもあるが、ジャンダルコが揺れるよりもマシなので請けた2人。


 気分が乗らないまま大ホールの中へ入っていき、一番奥の所で王女達と並ぶ。まずは挨拶と説明からだ。


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