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0184・思うところ




 第三王女についていく事になり、機嫌が治らないミク。ちなみにアレッサも機嫌が悪い。当たり前の事だが、2人は殆ど食事をとっていないのだ。つまり、お預けを喰らっているようなものである、機嫌など回復する筈が無い。


 それを分かっていない王女達は、とにかく城へと案内していく。ただ不機嫌を撒き散らしているので、王女達も焦っており考え付かなかったのだ。いつもならすぐに気付いたのだろうが、今回は仕方が無いだろう。彼女達にも王命がある。


 城へと着き、目的地へと歩いて進んで行くも、周囲を騎士が取り囲む。当然2人の機嫌が悪く、それにてられた騎士達が危険を感じた為である。流石に騎士達は職務としてやっているので、ミクとアレッサも何も思っていない。


 王の執務室へと案内されたミク達を見て、王と宰相が驚き顔をする。昨日会った2人とは明らかに雰囲気が違うからだ。流石にこれは聞かねばならぬと、王は第三王女に問いかけた。



 「お客人の機嫌が妙に悪いようだが、いったいどうしたのだ?」


 「は、はい。実は……酒場で食事をとられていた御二人を、兵士が強引に連れて行こうとしまして。それを承服しなかった御二人に対し、兵士がテーブル蹴り飛ばして倒してしまったのです」


 「何という事を……」


 「何だその愚か者は! 我が国を蛮族国家にする気か!? 騎士よ、その者を見つけ出し、厳しき処罰を与えておけ!! 我が国はエルフどものような野蛮な国ではない!!」


 「「「「「ハッ!!」」」」」



 近衛騎士の半数がすぐに執務室を出て、兵士達の下へと聞きこみに行く。王は憤懣ふんまんやる方ない様子だったが、溜息を吐いた後に謝罪しようとするも、ミクとアレッサはそれを止めた。



 「謝罪というのは本人がしなければ意味が無い。だから王女が謝った時にも、私はその謝罪を受けなかった。私達のテーブルを蹴り飛ばし、料理を床にブチ撒けた兵士が謝罪しなければ、本当の意味での謝罪にならない」


 「確かにそうでございますな。そもそも食事時ならば素直に待つのが礼儀というもの。兵士のした事は、陛下と国の名をおとしめる事にしかなりませぬ。にも関わらず、そんな事すら理解しておらぬとは……」


 「わたし達にやったって事は、今までにもやっていると考えた方がいいわね。どれくらいジャンダルコ商王国の名をけがしてきたのかしら? 兵士がバカだと大変ね」


 「それはともかく、私とアレッサが呼ばれた理由を知りたい。私達は殆ど食事をとってないの、時間が掛かるなら夕食が食べられない恐れがある」


 「ああ、すまぬ。手短に話そう。簡単に申せば明日の朝、城の中の者達から聞き取りをするので、アレッサにも手伝ってほしいのだ。特に【罪業看破】と【真偽判定】の組み合わせは非常に強力なのでな」


 「わたしは良いんだけど……ミク、どうする?」


 「私も構わないよ。とりあえず第3エリアは突破したから、次は石壁迷宮じゃないだろうしね。ここからは、いつも通りの攻略になる。そこまで難しくはないだろうし、やらなきゃいけない事を先にやっておこう」


 「では、すまぬが明日は頼む。十分な報酬を用意しておくので宜しく頼む。そういえば、あの【真偽判定】用の紙は売ってもらえぬだろうか? ワイバーンの魔石で出来ておる以上、高いし貴重だとは思うのだが……」


 「そういえばミクは実験するって言ってたけど……あれってどうなったの? 上手くいったとは聞いてないから、もしかして失敗した?」


 「いや? そもそも作ったはいいけど、実験をしてない。せっかくだから今すぐ実験しようか? えーっと……コレだ」



 ミクが紙を取り出し、それを使ってイヴィエルテで実験を行う。一瞬だけ顔をしかめたが、王の前なのですぐに表情を消して受け入れる。



 「貴女は近衛騎士ですね? 貴女は女性ですね? 貴女はエルフですね? 貴女はエルフを憎んでいますね? 貴女は剣を下賜される時に怪しいと思っていましたね? 貴女は第三王女に思うところがありますね?」


 「青、青、赤、紫、青、青。……ふむ、そなたはニムフィスに思うところがある訳か」


 「い、いえ! そんな事は決してありません!!」


 「赤。つまり思うところがある、で確定だねえ。まさか王女専属の近衛騎士が、王女に対して内心思うところがあるなんてさ」


 「だから無いと言っているでしょう!」


 「はいはい、赤だから黙る。王女の相手が面倒臭い。護衛をするのが嫌。自分を重用しないのが納得できない。自分を評価しない事に怒りがある。オルティマを重用しているのが許せない」


 「赤、赤、赤、赤、赤。あれー? 全部赤だけど、どういう事? おっかしいなあ………。王女の胸が大きいのが腹立たしい」


 「青……ですか。ま、まあ、それは甘んじて受け入れましょう。仕方がない事ですし、どうにもなりません」


 「………」



 ニムフィスの胸はおよそDであり、イヴィエルテは最大に良く言ってもBでしかない。なので嫉妬を向ける気持ちは分からなくもないのであろう、その後は誰もこの話題に触れる事は無かった。


 ちなみにオルティマはFだが、何故か嫉妬を向けられていない。理由は締め付けるサラシのような布を身につけており、表に出ないようにしているからだ。


 メイドとして動き難いのは困るのだろう。それに比べて第三王女はブラに似た物を身に着けており、胸をアピールしているから目立つのだ。といっても王族の女性は目立つのも仕事なので、当然の事なのだが。


 隠れたFより目立つDに嫉妬が向いただけとも言えるが、オルティマは若干ながら背中に冷や汗を掻いている。こういう嫉妬はバカにできないのだ、非常に面倒臭いこじれ方をする恐れがある。



 「とりあえず横においておくとしてだ、その紙には紫が出たので同じ物だと思うのだが、実験というのはどういう事なのだ?」


 「これはワイバーンの魔石じゃない物で作ってるんだけど、簡単に言えば魔石の濁りを取った物で作ったの。ゴブリンの魔石なんかは凄く濁ってるんだけど、あの濁りが悪い判定を出してるんじゃないかと思ってる」


 「ミクが言う悪い判定というのは、真偽官が誤魔化して犯人を無罪に持っていく判定の事ね。ずっと謎だと言われてたけど、曖昧な質問も含めて、そういうものを駆使して無罪にしてるんじゃないかって私達は考えているわけ」


 「昔からおかしな判定が出る為、犯人で間違い無い筈の者が無罪になったりしてますからな。ずっとおかしいと言われてきておるものの、尻尾は掴めておりませぬ。結局それは分かりませんが……」


 「分からぬまでも、おかしな判定はおかしいと示す【真偽判定】用の紙が手に入るか。して、その紙は売ってくれるのかな?」


 「売るのはコレじゃないね。売るとしたら正しい【聖潔】の魔法陣かな? イリュ、<鮮血の女王>とも話したけど、どうも【聖潔】の魔法陣が正しく残ってないみたい。だからそれを教える形になる」


 「何故、その魔法陣を教えてくださる形になるのですか?」


 「ミクの知っている【聖潔】の魔法陣が正しくて、残っている魔法陣は微妙に間違ってるの、発動はするんだけどね。でもその所為で魔石の濁りまでは解消できない。逆に言えば、正しい魔法陣なら魔石の濁りを除去出来るの」


 「それは凄いですが、宜しいのですかな?」


 「私としては、大事に持っていてもお金にならない魔法陣で儲かるなら、特に何の問題も無いよ。実際、知られても損しないしね」


 「まあ、ミクにとっては日常で使ってるものだもんねー」



 そんな話の後、王の執務室にある紙にサラサラっと本物の魔法陣を書いたミク。明日の仕事と一緒に報酬を貰う事にし、2人は王城を後にした。


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