0182・水ダンジョン・第3エリア
兵士達が店を調べたり、呻いている連中をしょっ引いたりしているので、ミク達は仕方なく昨日と同じ酒場に行く事に。大銅貨6枚を支払って食事をし、それが終わったら一度探索者ギルドへ。
中に入り色々と見ていると、ゴールダームと同じくダンジョンマップが貼り出されていた。しかし第3エリアまでしかないようだ。そして第3エリアは迷宮タイプだった。
狭い通路をウロウロと移動し続ける厄介な地形。そこに行く前に見に来たのは正解であろう。ミクは素早く地図を覚え、他に必要な情報は無さそうなので外へ出る。最後までジロジロと見られたが、それはいつもの事だ。
「なんか、やたらにジロジロと見てきたわね。よくある事と言えばそうだけど、それにしても鬱陶しいわー。ギルドに溜まってないで、ダンジョンか狩りにでも行けっていうのよ」
「まあ、ああいう奴等は何処にでも居るしね。今さら過ぎるくらいに今さらなんだけど、どうしてああも屯しているのかは不思議で仕方がない。情報収集もあるのは知ってるけど、入ってきた奴等をジロジロ見るのが本当に情報収集なの?」
「さあ? あんな所で溜まってる連中の事なんて分からないし、分かりたくもないしね。ギルドに居てダラダラ過ごしてるんじゃ意味なんて無いと思うけど、ああいう連中にはあるんでしょ、きっと」
2人とも心底理解できないという顔をしつつ、ダンジョンへと向かう。途中で魔物を狩っている者達を見かけたが、王都からそこまで遠くない場所にポリフェウスが居たらしい。囲んで倒している。
日中は砂の下で寝ていると聞くが、あの狼のような虎のような魔物が、どうやって砂の下で寝ているのだろうか? 不思議な生態をしていると疑問に思ったが、興味も湧かなかったので放り投げた。
ダンジョンに着き、第3エリアへのショートカット魔法陣に乗る。周囲の景色は想像通りの石壁であり、それが迷路のようになっている場所であった。ただし、足下が濡れている。
水溜り程度に濡れているのだが、その所為で足音を隠すのが難しい。ミクなら問題ないのだが、アレッサは出来ないようだった。とはいえ魔物がいたら殺せばいいだけなので、足音はそこまで気にしなくていいだろう。
「とりあえず道は覚えてるから、さっさと進んで行こう。こんな所に時間を掛けてても仕方ないし、鬱陶しいだけだから今日中に終わらせたい」
「そうね。早歩きぐらいでさっさと進みましょうか」
そう言って2人は第3エリアを進んで行く。出てくる魔物は主にアンデッド系で、スケルトンやゾンビにゴーストなどが出現。それ以外はソードラットやグレイバットなど、ハッキリ言えばお金にならない魔物が多い。
それでもこの石壁迷宮に来る探索者はそれなりに多いという。その理由はアンデッドであり、簡単な浄化魔法で倒せるので魔石が簡単に手に入る。それをやっているのは主にソロだが、十分に儲かるらしい。
ここではアンデッドが多く出現するので、浄化魔法さえ使えるなら一人でも稼ぐ事が出来る。そして仲間がいないという事は、当然儲けは全て自分の物だ。仲間が居ると少ない収入も、自分1人だけなら十分な収入となる。
そういう事もあり、1人で気ままに稼ぐ探索者がそれなりに居るのだ。怖いのはむしろソードラットやグレイバットらしく、ソードラットに噛み付かれると相当に肉を抉られ、グレイバットは群れでいる事が多い。
更には病原菌も多く持つ為、この2匹は蛇蝎の如く嫌われている。病原菌はゾンビも変わらないが、浄化魔法で近付かずとも倒せるので、他の2匹よりはマシなのだ。
「浄化魔法を使うだけで、本当にあっさりと死んで行くっていうか、消えていくね。魔石は【清潔】を使えば済むし、本当に楽な場所だよ。生きている2匹以外は……」
「それでも私の槍を貸してもらってるだけマシでしょ。ウォーアックスであんな小さなのと戦う?」
「絶対にお断り! そんな事するぐらいなら、ウォーアックスの先にナイフを取り付けて突く方がマシ。もしくはミクに何か作ってもらう……っていうか、それこそ剣を作ってもらえば良くない?」
「アレッサの身長なら短い剣になるし、余計に剣は止めた方がいいと思うよ? お勧めは槍かな、十字槍。どうしても剣がいいなら刺突剣だろうね。ただ、それじゃ長くはできないけど」
「ああ、剣だと持ち運びの事を考えたら長く出来ないのか。そのうえ、わたしが大きい剣を持ってたら不自然でもあるし、背中に背負うのも変だしね」
「そうそう。剣は不意の戦いにも使えるから、元来は護身用の物という位置付けが正しい。実際に町の人だって持ってるのは短剣ぐらいの長さだしね。長いと重いから携帯に不便だし、それならちゃんとした物の方が良い」
「斧とかメイスも重いから持ち運びに不便だけど、それは剣も変わらないしね。そうなると、やっぱり剣よりも耐久力の高い武器が基本かなぁ……」
「そうなんだよね。剣って割と簡単に駄目になるから、そこまで良い武器じゃない。技術があれば折れないって言うなら、そもそも折れ難い武器を選べば済むだろって思うしね。剣を使うのって、結局は拘りの類なんだよ」
「わたしは……敢えて刺突剣かな? 剣をあまり使わないミクに代わって、私が剣を使いましょう!」
「まあ、なんでもいいよ。それより作るならエストックだけど、アレッサの身長に合わせたら55センチで限界かなぁ……。短いけど仕方ないね。身長的にそこがギリギリだよ」
「了解、まあ短いのは仕方ないよ。代わりにミクの持ってる大型ナイフと同じのをちょうだい。あれで敵の攻撃を流すから」
「それはいいけど、<竜の牙>のジュードみたいな戦い方だね? もしかして元々そういう戦い方をしてた?」
「そうそう。右手は普通の剣だったけど、やってる事は突きばかりだったから、刺突剣で何の問題も無いよ。むしろ特化した分使いやすいかも」
「ま、とにかく本体が作り始めたから、今はどんどん進んで行こう。できれば夕方までには攻略したい。じゃないと夕食が食べられないかもしれないし」
「それは嫌だから、さっさと攻略しましょう。お昼みたいな事になっても面倒臭いし」
「あれは最悪だった。喰えるかと思ったら兵士が来た所為で食べられなかったし、これで牢屋から消えたらおかしな事になりかねないしさ。2、3日お預けだよ」
「それでも喰うのは諦めないのね」
「当然」
呆れた顔をしながらもアレッサはソードラットを槍で突き刺す。それなりの大きさなので刺しやすいが、グレイバットはどうにもならない。そちらはミクが【火弾】を放っている。
通路いっぱいに広がる【火弾】は、グレイバットを焼き尽くし、一撃で黒コゲにしていく。その光景を見て何とも言えなくなりつつも、壁を素通りしてくるゴーストを浄化するアレッサ。
当然ながら黒コゲになった物など素材としては使えないが、そもそもわざわざ持って帰る気も無い為、アレッサですら何も言わない。適当に突き刺したソードラットの血抜きをレティーに任せ、終わったら捨てるくらいだ。
このエリアで血を吸えるのは生きている2匹だけなのだが、両方とも美味しくないらしく、一度飲んだ後は2度と飲む事も無かった。
『栄養も普通ですし、一度飲んだ以上3日は大丈夫です。なら美味しくない物は要りません。生きるのに必要なら飲みますけど、それ以外では要らないです』
どうやらレティーがハッキリと言うくらいには飲みたくない物らしい。もしかしたら病原菌が美味しくない原因なんじゃ……。
そう思ったが、黙っておくアレッサであった。




