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0181・昼食を食べに行ったら……




 2人は水ダンジョンの第2エリアを進んで行く。水で足をとられるのと階段に水が流れているという以外は、そこまで苦労するような地形でも何でもなかった。楽ではないが、大変でもない。それが適切な表現であろう。


 2人はボス部屋の扉前で休んでいるが、ここにも水が大量に流れており、腰を下ろすと濡れてしまう場所であった。



 「本当に嫌がらせが酷い場所よね。座ったら濡れるから立ったままで居るしかないし、そうすると体力が回復しないしさ。徹底的に疲労狙いと考えても間違い無いわよね? 何だか性格が悪い気がする、このダンジョン」


 「性格が悪いのか、困っているのを見て喜んでいるのか、それとも攻略させる気が無いのか。もしくは魔物が弱い代わりに地形で攻めてる? ……色々考えられるけど、何とも言えないかな」


 「まあ、私も適当に言っただけだから、特に何かを考えて言った訳じゃないわよ。ただねー、こんなダンジョン初めてだし、嫌がらせが過ぎると思う。この先の事を考えると、流石に……」


 「攻略できないようには作られてないけど、潜ったりしなきゃいけないかもね。アレッサが泳げるかどうかだけど……」


 「無理! 泳ぐなんて出来るわけないじゃない。何もなかったら大丈夫だよ? でも装備着けて泳ぐなんて無理に決まってる!」


 「仕方ない、その地形が本当に来たら本体空間に行っててもらおう。私一人なら簡単に突破できるし」


 「でしょうねー」



 適当な雑談で気分はマシになったのか、ボス部屋に突入する2人。ボス部屋の中は、膝ぐらいまで水が溜まった部屋だった。開いた際に流れ出たが、どうやらすぐに補充されたらしい。


 地面に魔法陣が輝き現れたのは、水色の蛇が10匹だった。どうやら水棲の蛇のようだが、面倒な事をしてくれるものである。水の中の蛇など倒し難くて仕方がない。そのうえ蛇達は長いが細いタイプだったのだ。



 「このダンジョン、とことんまで嫌がらせをしてくれるわね! こんな長細いヤツをいったいどうしろっていうのよ!!」


 「アレッサ、文句言わずに戦う。後、コイツ毒は持ってないから、【身体強化】で捕まえて引き千切れば勝てるよ。あくまでも捕まえ難くて、武器じゃ倒し辛いってだけ」


 「ああ、そういう事。それなら、って噛まれるじゃん!!」


 「そこは諦めたら? ワイバーン皮の服なんだから噛みつかれても平気でしょ。だから噛みついてる間に引き千切れば勝ち。文句言ってる暇があったら、さっさと殺す!」


 「はい!」



 アレッサは【陽炎の身体強化】を使い、水の中に手を突っ込んでは蛇を捕まえる。そして両手で持ったら引き千切り、後はポイ捨てするのであった。一旦覚悟をすれば、後は作業なボスでしかない。


 ミクが言った通り武器では戦い難いだけで、素手で捕まえればそこまで苦戦もせずに戦え、戦闘は楽なまま終了。水があるのでボスもそこまで強くはないらしく、結局あっさり勝利して魔法陣で脱出するのであった。



 ◆◆◆



 王都ブランに戻った2人は、昼食を食べる為の店を探してウロウロしていた。昨日もなかなか美味しかったので、今日は別の店で食べてみようとなったのだ。


 色々と探している最中に一軒の食堂を見つけたので、2人は中に入って注文。大銅貨6枚を支払って待つ。特に何の変哲も無い店だと思っていたのだが、何故か結構な悪意が飛んでくる。


 アレッサは少々居心地が悪そうにしているが、ミクは「ニヤニヤ」しており、何かを待っているようであった。


 注文した料理が運ばれてくるが、すぐにミクは運んできた店員を止める。理由は毒が入っているからだ。ミクは目に見えない速さで極細の触手を出しており、それは透明能力で見えないようにしている。


 その為、店の中の他の客にも見えてないし、一番近くに居た店員にすら気付かれていない。



 「ちょっと待ちなよ。こんな料理食べられると思ってんの? ……おやおや、急に顔色が変わったね? まずはお前が食べてみせろ、倍の料金どころか5倍の料金を払ってやる。だからお前が食え」


 「………」


 「食えないよねえ、毒が入れられてるんだからさ。で、毒入りの料理を出してきたのはどういう事だ? 答えなければ、これを証拠として騎士に突き出すぞ?」


 「………」



 店員は答える事が出来ない。何故なら毒なんて無いといえば食えと言われる。かといって真実を話せば、間違いなく自分は殺される。どちらにしても死ぬしかないのだ。他に道が無い。


 ミクと店員は睨み合いをしていたが、他の店員が合図を出すと、客も含めて一斉に襲いかかってきた。が、ミクに勝てる筈などなく、あっと言う間に叩き潰された。当たり前すぎる結果であろう。



 「おい、黙って大人しくしてろ! さもなくばこのガキを殺すぞ!! もう一度だけ言ってやる。大人しくしろ、でないとこのガキを殺「いいよ」すぞ!」


 「いいよ、殺しちゃって。どうせ後で復活させれば済むからね。アレッサがお前みたいなマヌケに捕まるなんてあり得ないの。もし事実ならアレッサが何もしなかっただけ。手抜きで死んでも仕方ないじゃない?」


 「幾らなんでも酷くない? 確かにこんなヤツどうにでも出来るけどさー、まさか死んでも仕方ない発言をされるとは思わなかったわ。まあ、わたしがザコに殺されるなんてあり得ないんだけど」



 そのアレッサの言葉で怒ったのか、持っていたナイフでアレッサを突き刺そうとする男。しかしそれより早く、アレッサが男の腕を【身体強化】で握り潰す。


 男は左手でアレッサを抱え、右手のナイフで脅していたのだが、その左腕の手首近くを握り潰したのだ。


 その瞬間、男はアレッサを放してしまい、アレッサは素早く脛を蹴り飛ばして圧し折る。後は呻くだけの連中から話を聞くだけである。そう思っていると兵士達が乱入してきた。



 「ここで暴れている者が居ると情報があった! 大人しくせよ!!」



 何で兵士が来たのかは知らないが、あまりにもタイミングが良すぎる気はする。ミクがそう思っていると、先頭でニヤニヤしている兵士は”あのネックレス”をしていた。


 どうやら店も客も含めて調べる必要があるだろう。そう思ったミクは近づいてきた兵士を投げ飛ばし、素早くネックレスを外す。当然のように兵士はエルフの姿に変わる。いったい何処まで潜りこまれているのだろうか、この国は?。


 周りの兵士が慌ててミクを取り押さえようとするが、ミクは引き摺り上げて、エルフの姿を周りに見せながら声を出す。



 「このネックレスはエルフがブラウンエルフに変装する為の物だ。兵士の中にもエルフが紛れ込んでる。この店の中にも居るかもしれない、呻いている奴等を調べろ!」



 ミクが引き摺り上げた兵士がエルフの姿になったからだろう。他の兵士達も慌ててネックレス型の魔道具を探し始めた。すると店員と客の一部に魔道具のネックレスを着けている者がおり、エルフだと判明。


 これから取調べだろうが、ミクがボコボコにしたのは有耶無耶うやむやになったというか、すぐに終わった。理由は毒が盛られたからであり、食べてみろと言っても店員は口にしなかったからである。


 探索者として毒の事は知っていると言うと、兵士達に納得された。普通の探索者は毒など深く知らないが、兵士達はそんなものなのだろうと思って流したのだ。


 それよりエルフに行う尋問と拷問で頭がいっぱいだったとも言うが、それでもミク達がとがめを受ける事は無かったのだ。代わりに昼食は別の店に行く羽目になったが……。


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