0180・水ダンジョン・第2エリアまで
王都ブランまで戻ってきたミクは宿の部屋に戻るも、特に荒らされた形跡などは無かった。誰かが入ってきたとしても、誰も居なかったのだから荒らす事は無いだろう。なので誰かが来たかどうかは分からない。
右腕を肉の塊にして寝ているアレッサを転送し、ミクも隣のベッドに寝転ぶ。一応【浄滅】を使ったら、瞑想の練習を始める。
それは朝まで続くのだった。
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翌日。朝日が昇った頃にアレッサが起きだし、ミクも起きて挨拶する。適当な雑談の後に宿を出たミク達は、食堂に行き朝食を注文、大銅貨6枚を支払う。
いつもの朝食を終えたら出発し、王都の近くにある水ダンジョンへ。歩いて行けるくらい近いのだが、暑い中を歩いていくのも大変だからだろう、早速アレッサが嫌がっている。
「このクソ暑い中を歩いていくとか、地獄のような苦行ね。っていうか、朝早いにも関わらず既に相当暑いんだけど? 近いからまだ喋ってられるけど、これが続くと口を開きたくなくなるのよね」
「旅の間は碌に口を開かなかったもんね。熱い空気が口に入るのもあるんだろうけど、口を開くのも面倒っていう感じだった。そこまでかと思うも、暑いものは暑いのかな? って思って放っておいたけど」
「暑いとね、何もかもが嫌になってくるというか、口を開く気力も無くなるのよ。王女達は慣れてて、ミクには全く通用しないんでしょうけどね。わたしには耐え難い苦行だったの」
「まあ、帰りは飛んで帰ればいいだけだから、すぐにゴールダームに着くよ。だから、っと、アレが水ダンジョンだね。あんまり人が多くないのは中に入ったからかな? 外に居ても暑いだけだろうし」
「そりゃね。こんな暑い中、ずっと外に居たら死んでしまうわよ。他のダンジョンとは違いすぎるでしょう……なんか出てきたわね? 馬車みたいなのが出てきて、大ラクダが牽いてるけど……」
「アレ、なんだろうね? ……私達には関係無いし、さっさと中に入ろうか」
「そうね」
ミクとアレッサは魔法陣の上に立ち、水ダンジョンと呼ばれるダンジョンに入る。ここはどんなダンジョンなのだろうか? そんな事を楽しみにしつつ、ミク達は転移されていった。
中に入ったミク達は、その地形にビックリしている。そこは川が流れる草原であり、砂は欠片も無かった。先ほどの馬車は車輪ではなくスキー板のような物だったが、それと同じ物を引っ張る大ラクダが見えている。
何をしているのかと思ったら、どうやら川で水を汲んでいるらしい。あの馬車の中身は水だったようだ。ついでに大ラクダも水を飲んでいるが、そんな平和な光景がそこら中で見られる。
そんな中をミク達は走って行き、階段を探す。この水ダンジョンは3キロ四方しかないらしく、ダンジョンの中では小さい方なのだ。なのでそこまで階段を探す苦労は無いし、何よりまだ最初だ。
2階になると途端に人の数が減ったが、水を汲んでいるのは1階だけらしい。なので1階では誰も狩りをしていなかった。ここでは疎らに散見できるが、それでも多くはない。皆、さっさと通り過ぎるのだろう。
そんな事を考えつつも、どんどんと進んで行く。ミクもアレッサも【身体強化】をしながら走っているので、速度は速く体力も十分だ。お腹は空くが、その度に色々と食べているし飲んでいる。
そんな事を繰り返して10階、ボス部屋前までやってきた。このダンジョンは10階ごとにボス戦で、魔法陣は6つある。中心が最初の魔法陣、そして下に2つに上に3つ。
五角形の頂点に1つずつあると考えると分かりやすいだろう。もちろん最初の魔法陣は五角形の中央にある。その事はイヴィエルテに聞いて知っていた2人。狭いからか階段も簡単に見つかったし、楽なダンジョンだなと思っている。
「最初のボスだから大した事もないザコだろうし、簡単に終わるだろうけど、その後がちょっと分からないわね。水ダンジョンって言われるダンジョンが、まさか川が流れてるってだけじゃないでしょうし」
「だね。この後から厄介な地形とか、面倒な魔物とか出てくる気はするよ。流石に川があるだけじゃ、普通のダンジョンと殆ど変わらないからねえ」
「そうそう。それじゃあ、つまらないって言うしかないでしょ。まあ、ダンジョンに面白さなんて求めてないっていう人が殆どだろうけど、川だけなら川ダンジョンじゃないとおかしいのよ」
「うん。このダンジョンは水ダンジョンであって、川ダンジョンじゃない。この先も水の多い場所が続くっていうか、多分だけど水が増えていくんだろうね」
「想像するだけで嫌になってくるけど、それでも進まないと。とりあえずは行ける所まで行きましょうか」
アレッサの一言でボス部屋に入っていく2人。扉が閉まると出てきたのは、水色のトカゲが10匹。名前などは知らないが、即座に戦闘を開始した2人は蹂躙する。
ウォーハンマーで叩き潰し、ウォーアックスで叩き切る。そんな戦闘は2分ほどで終了し、敵を全滅させた2人は奥の魔法陣で脱出。次の魔法陣へと進む。
転移した先で見たのは湿地帯であり、足首まで浸かる水辺であった。アレッサはこの地形の厄介さを瞬時に理解、ガックリと肩を落としている。
「どんだけ厄介なのよ、このダンジョン。別に大して深くもないわよ? でも常に足に水が絡んで邪魔してくる。つまり足を上げるにも無駄に体力を使うじゃないのよ!」
「ああ、そういうトラップね。成る程、成る程。そこを考えるとなかなかに厄介なダンジョンだと言えるかな? そこまで面倒でもないけど」
そう言ったミクに対し、アレッサは溜息を1つ吐いた後に走り出す。ミクも走り出し、階段を探しながら確認して行く。ここもトカゲ系の魔物が多いが、中には魚の魔物も居た。
足に噛みつきに来たものの、ワイバーン皮のブーツを突破できる筈もなく、アレッサに槍で刺し殺される魚。ミクの槍はアレッサが使っており、当のミクは無造作に素手で捕まえると放り投げている。
そこまで強い魔物もおらず、戦闘は普通の人間種でも難しくないだろう。厄介なのは魚の魔物の噛みつきだけだ。それを排除しながら階段を下りて行くも、階段にも水が流れていて滑りやすくなっていた。
「おっと! ……本当に厄介っていうか、面倒ねえ。この水ダンジョンって思っていたよりも難易度が高いし、何といっても水が鬱陶しい。水ダンジョンの名の通り、色々な場所で邪魔してくる」
「階段にまで流れていて、微妙に邪魔してくるからね。水が流れてるって事は、流れの方向に力が掛かってるって事だから……まあ、滑りやすいとは思うし、微妙な嫌がらせって感じはしてる」
「確かに微妙な嫌がらせよねー、階段で座って休むとかも出来ないし。濡れる覚悟があれば座って休めるだろうけど、こんな浅い階じゃねえ。ま、ミクには体力も滑りやすさも関係ないんだろうけどねー」
「関係ないねー」
そもそも滑って何処かにぶつかっても問題ないのだ。であるならば何の問題も無い。それは当たり前の事である。後ろに居るレティーは大変かもしれないが、肉塊には何も問題は無い。
そのレティーも異常な耐久力をしているので、何も問題は無く、この中で一番問題があるのはアレッサである。そのアレッサも、ミクが居る限り幾らでも蘇生できてしまう。
結局、命の危険という意味では問題は全く無いのだが、滑って転ぶという恥ずかしい目に遭うのは嫌なアレッサであった。
尚、仮に滑って転んだとしても、肉塊に恥ずかしいという感情は無い。滑った、転んだ、ぶつけた、という事実で終わりである。




