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0178・酒飲み3人衆




 夕食後、宿に戻った2人は部屋に戻って休む。相変わらずベッドに寝転んですぐ寝ようとするアレッサ。そして触手で持ち上げて綺麗にするミク。毎回毎回、自分で綺麗にする気は無いらしい。


 そんなアレッサにミクはミードの事を話す。すると、飛び起きて要求するアレッサ。よほど飲んでみたかったらしい。そんなアレッサに呆れつつ、ミクは本体空間から樽を取り出す。



 「………なんかさ、やたらデカくない? まさかここまで大きな樽で出てくるとは思わなかった。もっと小さいヤツだと思ってたんだけど……」


 「その小さいヤツはイリュが寝ている隙に置いてきたから、これはその後に仕込んだヤツだよ。それなりに大きめのヤツで作った方が楽かと思ってね。でも……多かった?」


 「どう考えても多いでしょ? こんなに飲めないよ、わたし一人じゃ。むしろ小さいヤツがこっちで、大きなこの樽が向こう用でしょうよ。なんで逆にするかなぁ」


 「そんな事を言われても困るよ。そうだ、今日の夜に替えてこよう。そしたら丁度いいだろうし、無くなってたら詰め替えればいい。ナイスアイデアでしょ」


 「うん、まあ……ミクしか出来ないけど、ミクがするならナイスアイデアなんじゃないかなぁ……。とりあえず飲ませてもらうよ」



 何だか疲れた声を出しながら、アレッサが適当に予備のコップで掬って入れる。試しに一口飲んでみると……。



 「ゴッホ! ゴホ! ゴホ! なにこれ!? 異様な程に濃いんだけど!? なんかすっごくお酒が濃くて味がキツい。正直言って蒸留酒みたい!」


 「………うん。確かにアルコール分が濃いみたいだね。たった2日か3日しか置いてないのにコレかぁ……いったい何がどうなってるんだろう?」



 何となく、ミクは自分が知っている酒とはちょっと違う気がしていた。何故か神々が樽ごと持っていく妙なハチミツだと思っていたが、もしかしたら神々もこのハチミツで酒を作っているのかもしれない。


 そう思ったミクだが、それは間違っていない。神とは酒好きなものであり、ミクを通して手に入れたハチミツは、自分達が創造した物とは違う物である。当然ながら神々が作った酒は神の創造物なので、結果も既知の物なのだ。


 しかし天然物というのは神が創造した物ではない為、結果が不安定であり、それは出来るまでの楽しみというものも含む。神々はそれが欲しかったが為に、ミクの下からハチミツを運び出したのだ。自分の酒を作る為に。


 そうとは知らないミクは、おそらくという予想しか出来ない。それが当たっているのか外れているのかは分からず、最後には思考を放り投げた。



 「まあ、チビチビと飲んでるみたいだし、美味しかったのなら良かったよ。流石に飲むのが無理ってなったら、適当な酒場に売らなきゃいけないからさ」


 「流石に適当な酒場に売るのは勿体ないわよ、それなら飲んだ方がマシ。問題は腐ったり、お酢になるまでに飲みきれるかどうかなのよね。ミクは体が悪くなる事は無いって言ったけどさ」


 「ならないねえ。アルコール如きに負けるほど、私の血肉は柔じゃない。アレッサに与えたぐらいの血肉でも、アルコール程度なら相手にもならないよ。さっさと無害化して排出って感じだね」


 「そうなんだ。とはいえガバガバ飲めるようなお酒じゃないし、この大樽を減らすのは難しいかな? まあ、まだ飲めるから、飲める間は置いててよ。わたしがちょこちょこ飲むから」


 「了解、了解。置いとくぐらい問題ないし、キツいならドワーフの国に行った時に売っ払おうかなー。そしてドワーフの体を潰してやろう」


 「ああ。ドワーフって酒好きだからか、基本的に長生き出来ないわよね。本来なら300年ぐらい寿命ある癖に、どいつもこいつも半分の150年ぐらいで死ぬのよ。全部酒が悪いんだけど、あいつら絶対に認めないから面倒臭いしさ」


 「まあ、自分の寿命をどう生きようが勝手だとは思うけどね。150年でも技術の継承はキッチリやるらしいから、問題にはなってないみたいだし」


 「鍛冶と酒はドワーフの得意な物だけど、あいつら趣味に生きてんのかって思うぐらいに一辺倒なのよ。ドワーフの女は酒に合う料理しか作らないし」



 そんなドワーフ談義も、アレッサが眠たくなってベッドに横になった時点で終了。大きな樽をアイテムバッグに入れたミクは、窓から外に出てゴールダームへと飛んでいく。


 アレッサを放っていくのもはばかられたので、実はアレッサは本体空間に転送した。なので宿の部屋はもぬけの殻である。仮に侵入者が居たとしても、誰も居ない部屋に突撃するだけだ。


 ゴールダームの<妖精の洞>の屋根に降り立ったミクは、イリュの反応を探したのだが、何故かカルティクとシャルと一緒に居るらしい。


 訳が分からないものの3人が居る部屋に行くと、そこには酔っ払った3人組が居た。何をやっているのやらと思いつつも、下着姿に変化するミク。



 「おっ、ミクじゃないか、どうしたんだい?」


 「どうしたって言いたいのは、こっちの方だけどね。3人揃っていったい何してるのよ? 蝋燭ろうそくを灯してまでお酒飲んでるって、意味が分からないんだけど」


 「別に良いじゃないか。ミクも居ないからダンジョンの先に誰も進んだりしないし、適当に第6エリアの魔物を狩っては持ち込むぐらいだね。後はお金稼ぎ」


 「まだお金稼いでるんだ? いつまでやるのか知らないけど、あんまり大量に持ってても使えって言われるだけだと思うよ? 使わなきゃ減らないでしょうに」


 「まあ、あんまり貨幣を持ち続けるのは良くないけど、あたしはミクみたいに大量に持ってないよ。そもそも小金貨だけでどれだけ持ってるんだい」


 「今は130枚だね、大金貨は10枚。何故なら盗賊とか色々潰したから。私は獲物を売ってお金を稼いでるんじゃなくて、盗賊なんかを潰してそいつらのお金を外に出してるだけだし」


 「そう言えばそうだった。ミクの持ってるお金の多くは、今までなら闇から闇へと流れてたお金なのよ。それを表に出してるだけじゃ、貨幣不足になったりしないわね。今回はジャンダルコのだけど」


 「ジャンダルコで得たけど、他種族やエルフのだから別に良いんじゃない? っと、それよりこの甕……殆ど空じゃん。どれだけ飲んでるの? シャルは大丈夫だけど2人は知らないよ、病気になっても」


 「へーき、へーき。私もカルティクもそんなに弱い体はしてないし、最悪は自分で一度帰って、再び自分を創れば済むから」


 「あたしもミクから聞いたけど、妖精っていうのは本当に反則だよ。なんだい新しく自分が生まれてくるって、意味が分からない。神様がした事だから出来るんだろうけど、あたしみたいな普通のヤツには意味不明すぎる」


 「いやいや、今の貴女は普通じゃないでしょうが。いったい何を言ってるの? 肉体がワイバーンとか、私達以上に意味不明でしょうに。亜竜とはいえ竜よ? もちろん本物のドラゴンとは違うんだけど、それでも人間種からしたらメチャクチャでしょうが」


 「ほんと、ほんと。貴女そろそろブレスでも吐けるんじゃないの? 頑張ってみなさいよ、スキルになるかもしれないわ」


 「なる訳ないだろ! そもそもブレスは物質じゃなくて魔法だよ。ドラゴンというか、竜種のみが使うブレス魔法と呼ばれる物さ。あたしはそれを知らないんだから放てないし、仮に使えるようになっても意味無いよ」


 「なんで?」


 「口から放つ理由が無い。魔法として使った方が安定してるし速いんだ。あんなもの無駄行動でしかないのさ、2本足にとっては」



 教えたのはミクだが、その時のシャルは心底ガッカリしていたのを付け加えておこう。


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