0175・王都到着
一瞬の最中、様々な事を超高速で思考したものの、面倒臭くなったミクは【浄滅】を使用。オルティマの体内の毒は一瞬で分解、無害化された。
しかし無害化されたかどうかの判断が出来ないミクは、それ以上オルティマに出来る事は無いと判断。まだ残っている敵を掃討する為、動き出す。
右手用にウォーハンマーを取り出して一気に接近、右手で叩き潰し、左手で貫く。そんな攻撃を3度行うと、敵は全滅した。ミクはウォーハンマーと槍を収納し、大ラクダから長巻を抜いてアイテムバッグへ。
全て終えたらオルティマの下へ向かうも、既にポーションを飲んで復帰していた。毒の時とは違い血色が良いので、ミクも毒が無害化できていると判断。話しかけながら近寄る。
「どうやら無事に毒は無害化できたみたいだね。【浄滅】を使ったから多分大丈夫だと思ってたけど、実際に調べる方法は無かったから気掛かりだったんだ。助かって良かったよ」
「ありがとうございます。短剣で切られた傷は浅かったのですが、突然呼吸がし辛くなっていき……このまま死ぬのだと分かりました。あの時の感情は何と言いますか、言葉に出来ません」
「無理に言葉にしなくてもいいんじゃない? それよりゴメンねー、【身体強化】の事をスッカリ忘れてた。ミクに言われるまで頭から飛んでてさ、思い出せなかったの。ついでに上手いヤツだったから焦ってた」
「騎士達も必死でしたから仕方ありません。思っている以上に強い者達でしたが……このネックレスはまさか!?」
イヴィエルテが死体からネックレスを取ると、刺客の姿がエルフに変わる。どうやらまたもやエルフが絡んでいるらしい。今回の護衛依頼、王女が言っていた通りに根深いもののようだ。
ミクもアレッサもそう判断したのか、少し考え込む表情をしている。これ……城までついていった方がいいんじゃないかと。
「それは……私としては助かりますが、しかし本当に良いのですか?」
「私達としてはどっちでも。ただし、私達が王都の町中に居る時に何かあった場合は、助ける事は不可能だよ? ここまで執拗に王女を狙ってるとなると、城の中にまで入り込んでるんじゃないかって思ってる」
「ブラウンエルフの姿になれるんだし、エルフなら元同族だから耳とかは問題ない。違う特徴って肌色と髪の色だけだからね。そこを誤魔化せるなら見ただけでは違いが分からないし、そうなると誰がエルフか疑心暗鬼になりそう」
「それは……ネックレスを外させれば分かるのでは? いえ、今までの物がネックレスだっただけで、それだけしか無いかと言われると……」
「男性も女性も裸に引ん剥いて調べるしかないんじゃない? 流石にその状態なら姿を偽る事は無理でしょ」
「それはそうですけど、裸は流石に……。ですが、それぐらいしなければ見つけられないかも」
裸にしたら……という言葉を聞いてミクを見るアレッサ。「ミクはいつでも姿を偽れるでしょ」と思っているが、ミクはスルーしている。そもそも普通の人間種と肉塊を一緒にしてはいけない。
落ち着いた王女達はフッタルに乗り、王都への道を進む事にした。ミク達の乗っていたフッタルは無事であり、欠けたものは全くいない。
目の前で殺し合いが行われていたにも関わらず逃げなかったフッタル。勇気があるのか根性があるのか、もしくはふてぶてしいのか。そこの判断に困る生き物だが、逃げないというのは、それだけで優秀である。
どれだけ速く体力のある乗り物でも、戦いになると逃げ出すのでは使えない。そもそも魔物の多い星で、戦闘に耐えられないというのは致命的である。
まだまだ暑い気温の中、ミク達は襲ってきた連中の死体を放置してきた。流石に死体の数と、大ラクダやラクダの数が多すぎたのだ。あれでは砂の下に埋めるのに時間が掛かってしまい、王都に辿り着けなくなる。
流石にそれはマズいという事で、全員一致で先を急ぐ事にしたのだ。放っておけば魔物が喰うだろうし、律儀に死体の処理をする者も多くない。実際に砂賊などの死体は放置されているのが常だそうだ。
◆◆◆
大ラクダなどの襲撃もあったが、ようやく王都である第三オアシスに辿り着いた。どうもこのオアシスが砂漠最大のオアシスらしく、それでここを王都にしているらしい。
まず間違いなく、他国はここまで攻められないだろう。砂漠という天然の地形が猛威を振るうこの場所では、軍というものが力を発揮し辛い。エルフィンが破壊工作などをしているのもそれが理由だろう。
かつては攻め上ろうとして砂漠まで届かなかったらしい。なので負けた後に調べて、砂漠というものが簡単ではないと理解。その結果、工作活動にシフトしたと考えた方が自然だ。
「それで間違ってはいないと思います。エルフィンやエルフは我々の敵ですが、<狂乱王>の時代以降、戦争になった事はありません。一度も無い以上は、向こうも砂漠の恐ろしさを理解したのだと思います」
「砂漠というものを正しく理解していれば、王都に攻め上るなど、夢のまた夢だと理解できますからね。ラクダを使って魔法で牽制し、相手の乗り物を潰せば……」
「日中は暑さで苦しみ、夜は魔物の襲撃で苦しむ。どう考えても多くの兵士を無駄死にさせるだけだし、それをしたら究極のマヌケとして歴史書に残るわよ?」
「私もそう思います。………手続きが終わりました、お二人も一緒に来て下さい。少なくともネックレスの事はすぐに報告せねばなりません」
「ええ。少々無理をしてでも陛下には御報告せねば、知らないままでは好き放題にされてしまいます」
「私も近衛騎士団長に報告をしておきます。城内が慌ただしくなるかもしれませんが、これに関しては知らない方が危険ですから」
それぞれが町のメインストリートを進みつつ、周囲を警戒しながら進んでいく。フッタルに乗っているものの、王女だからか色々な人が見ているようだ。好意的に見る者もいれば、悪意を向けてくる者もいる。
それは当然の事であるものの、今は悪意を向けてくる者が鬱陶しい。悪意といっても様々あり、妬みなのか嫉みなのか僻みなのか、それとも害意なのかは分からない。全て纏めて悪意なのだ。
なので、悪意だけでは警戒する対象にしかならない。ただ、王族に悪意を向ける者は多いのだ。良い悪いは別にして、それが王族というものでもある為、仕方がない事ではある。あるのだが……。
「この状況での悪意は、ひたすらに鬱陶しいね。判断が付かないのに悪意だけが大量にある。どいつが襲ってくるのかが分からない」
「私も。【悪意感知】じゃ纏めて悪意だから、物凄くアバウトなのよねー。【精神感知】と【精神看破】は? あれならミクは真似できるんじゃないの?」
「シャルのスキル? 残念ながら【精神看破】でも無理。何となく害意は分かるけど、周りの連中全部の精神を1つずつ調べる事になる。だから人が多過ぎると使い難いスキルなんだよ」
「ああ、そんな弱点があったんだ。流石にそれじゃ駄目だね、王都だからか数が物凄く多い。この中から害意だけ探せっていうのもね……」
「更に言えば、誰かの後ろに居るヤツの精神は重なるから、調べるのが非常に面倒っていうか分かり難いの。そういう部分も使い難いと言えるかな?」
スキルというものが、必ずしも優秀とは限っていない理由の1つである。あくまでも道具、使える事と使い熟すのは別なのだ。
なので現状は厄介な状況なのだが、一行は人が減る貴族街の門まで辿り着いた。どうやら町中での襲撃は無さそうだ。




