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0174・王都前の襲撃




 砂と風のBGMを聞きながら、一行は最後の旅路を進んで行く。フッタルでゆっくりと進んで行くも、今までの砂漠の旅路と変わらず、もう慣れたものである。それでも気配や魔力に生命力の感知は切らしていない。


 そんな中、ミクは後ろからつけてきている者達が居る事に気付いていた。ミク達が町を出て少しした後、まるで追いかけるように町を出た連中。こちらに悪意を向けているのは明らかなので、警戒を絶やす事は無い。


 王女達に教えると動きが変わるかもしれないし、騎士達も怪しいと気付いているかもしれないが、今のまま引っ張る方が良いかとミクは無視している。


 後ろの連中を先に行かせようとしても、おそらく適当な理由をつけて止まるだろう。その隙にこちらが早く進んでも、向こうが追いついてくるのは間違い無い。何故なら後ろの連中はラクダに乗っているからだ。


 フッタルでは逃げられない為、今の状況を無理に動かす必要は無い。一応、ミクはアレッサをチラリと見るが、アレッサはミクの方を見て「コクリ」と頷いた。つまりアレッサも気付いている。



 (アレッサは【悪意感知】を持っているから、気付くのは当たり前の話。だけど暑さで頭がやられてたら分からない。まあ、私の血肉を融合してるんだから体は頑強だし、おそらく精神的にやられてるんだろうね。暑さに)



 流石にどれだけ体が頑強であっても、それだけで平気かと言ったらそんな事はない。暑さのダメージは体だけでなく精神にも来るものであり、それ故にアレッサは口を開かないのだ。


 ミクはそもそも分体であり、更に分体は肉の塊の一部でしかない。そこが熱くなっても問題ないのに、暑さ如きで精神的に参るほど柔ではないのだ。


 そもそも1000度や2000度でも問題ない肉塊である。砂漠の暑さ如きはダメージにすらならない。そんな肉塊は、現在色々なものを感知しつつ警戒する対象を増やしたり減らしたりしている。



 (上空に飛んでいる鳥の中に、1羽だけすっとぐるぐる回ってる奴が居る。明らかに怪しいんだけど、私達の位置を確認してる? それとも唯の監視?)



 様々な可能性を考えて監視対象にしたり外したり。せわしなくも様々な事を行っているミク。ついこらえられなくなったのか、王女が後ろに下がって聞きに来る。



 「ミク殿。もしかしたら後ろの者達は、私達を尾行しているのではありませんか? 横を向いて確認したりしていたのですが、何故かラクダに乗っているにも関わらず、私達との距離が変わりません」


 「それ以前なんだけど、私もアレッサも悪意を感知しているから、間違いなく後ろの連中は刺客だよ。暗殺者かどうかは分からないけど、こっちを殺す気満々。だよね、アレッサ?」


 「………(コクコク)」



 相変わらず暑いからか喋らないが、アレッサが頷いた事で悪意が事実だと理解する王女。流石にマズいと思ったのかミクの方を見るが、ミクは首を左右に振る。



 「今の段階で指摘しても逃げるだろうし、追い詰めるには【真偽判定】をする必要がある。だけど砂漠でそんな事できないし時間の無駄。だから相手の罠に乗る」


 「相手の罠?」


 「昨夜アレッサと話してたんだけど、おそらく王都から来る連中との挟み撃ちにするんじゃないかと思うんだよね。だから私が後ろの連中を殲滅している間に、アレッサと協力して敵を防いでよ」


 「敵を防ぐ……ですか」


 「そう。後ろの奴等を皆殺しにしたら私も前に出るから、それまで耐えてくれれば良いよ。そうすれば、後は暴れれば終わる話でしかない。とりあえず余計な事はせず、敵の攻撃を避ける事に専念して」


 「敵の攻撃を避ける……」


 「相手にとって一番厄介なのは、王女である貴女が死なない事。奴等は目的を達成するまで逃げられない、または逃げる事が難しい。失敗した時の事を考えるとね、最悪は破滅もあり得るんだ。裏の連中も流石にそれは避けたいだろう」


 「だから私が逃げれば逃げるほど、連中は不利になっていくと。そういう事ですね?」


 「そう。王女を殺すなんていう仕事を請けたんだ。で、ある以上は自分達の破滅も予想できている筈。驚くほどの金額で請けたんだろうけど、奴等とて暗殺を成功させないといけない。つまり逃げ場が無いの」


 「ミク、だからこそ相手は死にもの狂いで殺しにくる。その必死さは舐めない方がいい、足を掬われるかもしれない」


 「アレッサが喋るとは思わなかったけど、分かってる。流石に敵を舐めたりなんてしないよ」



 そのミクの言葉で会話は終わり、王女は前へと戻っていった。再び無言の時間が来たが、それも昼食の時間が来た事で変わる。


 アレッサもフッタルの上で食べつつ、水を飲んだりしており、ミクも食事を適当に行う。そういった食事が終わったら、いつも通りに簡易トイレを設置する騎士達。


 少し後ろを確認すると、向こうも簡易トイレを設置して用を足している。布が掛かっているので、フリなのか本当に用を足しているのかは分からない。しかし予想通りに近付いてくる気は無いようだ。


 全員が終わったら砂を掛けて埋め、騎士達が撤去したら出発する。後ろの連中は慌てて撤去を始めたが、ミク達は急ぐ事もなくペースを守る。無理をしたところでフッタルに負担を掛けるだけでしかない。


 再びつかず離れずの距離を保ちながら進んで行くと、前から大ラクダと複数のラクダの集団がやってきた。いきなりの大ラクダに面喰らったが、それを見た後ろの者達が急に迫ってくる。



 「後ろの奴等が来た! あの大ラクダが本命だ!! 敵が攻めて来るぞ! 王女を守れ!!」


 「「「「おおっ!!」」」」



 アレッサは声を上げなかったが、別に理由は無い。そういう習慣というか、慣れていないだけである。ミクはすぐにフッタルから下り、後ろの敵に突撃して行く。アレッサもフッタルを下りると、前へと走って行った。


 騎士達は剣を抜いて臨戦態勢。イヴィエルテとオルティマは王女の左右、その少し前に出る。最悪は王女の盾になる為だ。


 ミクは素早く長巻を取り出すと、ギリギリの力で振り抜いていく。それは暗殺者や裏組織の連中程度ではどうにもならない速さであった。振り抜く速度が速すぎて回避不能どころか、まともに反応が出来ない。


 それほどの速さで振り抜かれる長巻は、竜巻の如く暴れ続け、15人ほど居た者達をあっと言う間に全滅させた。死体を放置したまま素早く王女達の方を向くと、ちょうど王女に対し大ラクダで突撃しようとしているのが視界に入る。


 ミクは素早く長巻を投げつけ、それは高速回転しながら飛び、大ラクダの胴体に突き刺さった。その一撃で動きを止めた大ラクダは、倒れないもののヨロヨロとしており、体に力が入らないらしい。


 ひとまずは助かったものの、まだまだ敵は残っている。アレッサは前に出ているが、そのアレッサは敵の馬車に乗っていた者達との戦闘が終わっていない。意外と言えばいいか、盾を使って粘られている。


 アレッサ自身が焦っているのも原因なのだが、その所為で【身体強化】を忘れているらしい。ここは無理にでも使い、さっさと敵を倒してしまうべきであろう。しかし焦っているアレッサは気付かない。



 「アレッサ! 【身体強化】!!」


 「!? 忘れてた!」



 ようやく思い出したのか、アレッサは【陽炎の身体強化】を使い、盾ごと敵を輪切りに切り捨てる。盾を使うのが上手い者だったが、圧倒的なパワーには勝てなかったようだ。



 「キャーーーー!!!」



 ミクが近付くよりも早く王女は襲われ、体を張って助けたオルティマは短剣を受ける。あくまでも切りつけられただけだが、何だか様子がおかしい。


 素早く敵の頭を槍で貫いたミクは、オルティマに近付いて理解する。唇が紫色に変色し、呼吸が非常に浅い。どうやら危機的状況らしい。


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