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0172・第二オアシス到着




 ミクとの会話を終えた王女は元の位置へと戻り、再び風の音と砂の音をBGMに進んで行く。砂漠を渡るのは大変であるが、王女の護衛依頼を請けている以上は耐えるしかない。


 昨日は暴れるかも……などとレティーに言っていたミクも、昨夜ある程度喰った為に、そこまでストレスは感じていない。砂漠をゆっくり進むという苦痛も、美味しい食事というものの前には霞むようだ。


 まあ、暇なだけと言えばそれまでなので、そこまでミクもストレスを感じている訳ではない。何故ならいつも夜にしている事だからだ。しかも最近は、擬似的に寝られないかと本体が試している。


 どちらかというと瞑想に近いのだと思うが、何もせずにボーッとしている事が出来るようになれば、ストレスも緩和する筈だと考えたのだ。ずっと起きていられるが、ずっと起きていなければいけない訳でもない。


 瞑想という方法を入手できれば、大きくストレスも減る筈なのだ。なので、本体は何となくそれっぽいのを練習している。未だ形にはなっていないが、いずれ形になるだろう。



 (ダラダラと進んでいるけども、全く何もしていない訳じゃない。気配を探ったり、魔力を探ったり、生命力を探ったり。そんな事を分体でしているから、上手く瞑想が出来ないのかな?)



 そうやって雑念に囚われている事が瞑想できない理由でもあるのだが、本体は本体であり分体は分体なので、やってやれなくもない筈である。難しいであろうが……。


 そんな事を繰り返し続けながら暇を潰していると、昼になっていたのかアレッサが食事をしていた。ミクも適当に齧りながら食べ、止まった騎士達が簡易トイレを建てているのを見る。


 相変わらずの布だけだが、それでも目隠しが無いよりマシであろう。順番に用を足していき、最後にミクが終えたら砂をかけて埋める。そして外に出て始末が終わった事を言うと、撤去が始まった。


 それを見ながらフッタルに乗ろうとした時、後ろから結構な速さで迫ってくる生命力を感知。しかも複数である為、魔物である可能性は低い。日中はポリフェウスも砂の下で寝ている筈だからだ。



 「後ろから、それなりの数の奴等が来てる。多いから魔物じゃない、おそらくは人間種!」



 王女達にも騎士達にも声を掛け、ミクはフッタルをアレッサに預けて長巻を持つ。数が多いのと地面が砂地の為、斬撃の方が良いと判断した結果だ。


 ミクが長大な武器を取り出した事で、戦闘状態へと移行する王女達と騎士達。遮る物の無い砂漠だからこそ敵は見えており、騎士達は剣を抜き戦闘準備を終えて待つ。



 「敵はどうやら砂賊です。わざわざ足の速いラクダを使っているところを見るに、それなりの規模の砂賊でしょう。もっと大規模ならば大ラクダを使うのですが……」


 「とりあえず、そろそろ前に出る。取りこぼしたら騎士達に頼む事になるから、そのつもりで! それとアレッサ、最後の守りは任せるからブチ殺せ」


 「了解!」



 そう言うと、ミクは【陽炎の身体強化】で一気に飛び出し、一歩二歩とステップするように接近する。脇構えで跳ぶように進み、先頭の砂賊に接近するや即座に長巻を振り抜く。


 相手が高い位置なので斜めになったものの、見事に腰を両断した。乗っているラクダも胴体を切り裂かれ、体の前と後ろが離れて地面に落ちる。それを見た砂賊は驚くも、今さら止まれない。


 ミクは風のように舞いながら両断していき、結局後ろに逃がす事なく皆殺しにした。王女達と騎士達は驚いているが、アレッサだけは驚く事も無く周囲を警戒している。


 死屍累々の有様であり、殺した連中からは話を聞けないだろう。王女達の前でレティーの事をバラす訳にもいかず、仕方なくミク達は死体を砂に埋めて出発する。


 第二オアシスは近いとはいえ、ここにとどまっていても良い事など何も無い。時間の無駄をする訳にもいかないので進んで行く一行。ミクとアレッサも殿しんがりとして後ろにつく。



 ◆◆◆



 夕方前の明るい時間。ミク達は第二オアシスに到着し、今は宿の中にいる。まだ暑い時間なうえ、夕食には早いので休んでいるのだ。王女達とは離れているが、それでも近くなので異変があればすぐに分かる。



 「今日は特に移動する事もないから、万全の態勢で迎え撃てるよ。昨日はサデンに行かなきゃいけなかったから、ちょっとマズかったけどね。悩んだんだけど、流石に昨日の内に喰っとかないと処刑されかねないし」


 「まあ、喰うのなら確かに昨日しかなかったと思うよ。それにしてもジャンダルコの王都って、よくよく考えたらフィグレイオの王都より近いね。後は砂漠だから仕方ないんだろうけど」


 「ああ。王都より南西もずっと砂漠って言ってたね。オアシスが何処にあるかも分からないから、調べる訳にもいかないんでしょ? 調査隊は出てるって話だけど……」


 「簡単にオアシスが見つかったら誰も苦労しないか。だからこそ大変なんだろうけど、そもそもあるのかな? ……ミクなら簡単に調べられるんだろうけど、ねえ」


 「どうやってと聞かれたら鬱陶しいから、いちいち調べてやる気も無いよ。自分達が知りたいなら、自分達の力で探せばいい。国家の領土なんだから、それが当然でしょ」


 「まあね。……今日、来ると思う?」


 「確率は高いと思う。第三オアシスは王都だって王女が言ってたじゃない。となると、ここで手を出さないなら、後は王都への道で襲うしかなくなる。しかし、広い場所でわざわざ襲うかな?」


 「こっちより足の速い乗り物を使ったとしても、あれだけ広い砂漠だと色々出来ちゃうもんね。魔法なんかを使われる可能性を考えたら、ここでの暗殺が一番可能性として高いと思う」


 「私もそう思ってるけど、どっちも襲ってくる可能性もあるんじゃないかな。もしくは私達が出発してから後ろをついてきて、王都から出発したのと挟み撃ちとか?」


 「鳥系の配達を使えば手紙は届けられるだろうから、確かに王都から来る連中にも注意しなきゃいけないかー……」


 「それでもアレッサが居れば守れるだろうし、前は私が出て蹴散らせばいい。そうすれば守れると思う。騎士達とイヴィエルテは王女の守りを固めさせるべき、あいつらが役に立つとは思えないし」


 「私達の実力を基準に考えると難しいだろうけど、それでもある程度は使えると思うけどね? 肉の壁じゃなくて、きちんと使える程度の実力はあると思う」


 「そう? それならいいんだけど……どうにも、役に立ちそうな雰囲気が無い」


 「言いたい事は分かるけど、それでも訓練をしてきてる連中だし大丈夫でしょ。それに駄目でもわたし達の所為じゃないし。前に出てるわたし達にはどうにもならないんだから、後ろの騎士達の責任よ」


 「そうだね。私は前に出てるし、アレッサも言い訳ぐらいには前に出ておこうか。そうすれば私達の所為にはできないでしょ。もちろん守れるのが一番良いんだけどね」



 話をしているとオルティマが呼びに来たので王女の部屋へ行き、護衛しながら食堂へ。運ばれてきた料理を一瞬で調べるも、異常は無かったので胸を撫で下ろす。


 毒が入っていた場合、何故それが分かったのかの言い訳が面倒なのだ。胸を撫で下ろしたミクは、いつも通りの食事を終えて、王女達の食事の終わりを待つ。


 特に誰かが近付くという事もなく食事を終え、護衛しつつ宿へと戻る。強襲される事は無かったが、ますます夜に襲ってくる可能性が上がったと警戒を強めるミク。


 アレッサを綺麗にした後ベッドに寝かせ、ミクはベッドに寝転んで目を瞑ったまま感知を行う。後は獲物がやってくるのを待つだけだ。


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