0171・第一オアシス出発
ミクは素早く麻痺毒を散布して麻痺させると、さっさと全ての者を本体空間に移動させる。レティーに脳を喰わせて連中の記憶を聞いたミクは、素早くアジトを強襲し根こそぎ喰らった。
秘密裏にサデンに潜伏していた連中だからか、数は少なくすぐに終わる。ミクはレティーの読み取った記憶を聞くも、潜入しているエルフはこれ以上いないようなので、ピーバードの姿でオアシスに帰る事に。
再び20分も掛からずに戻ってきたミクは、宿の窓から部屋に入ったが、特に荒らされた形跡などは無かった。更に王女達の部屋も確認してみたが、気配や魔力に生命力もあるので問題なしと判断。朝まで待つ事にした。
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翌朝。日の出と共にアレッサが起きたので、朝の挨拶をする。ミクは一応アレッサに昨夜の事を確認する為、寝惚けているアレッサに話しかけた。
「昨夜、私が戻ってきた時には何も無かったようだったけど、私が居ない間に何かあった?」
「昨夜………? わたしは起きてないし、という事は何も無かったんじゃないかな? というかミクは居なかったんだ」
「昨夜はサデンの町の牢に入れた連中を喰ってきたからね。その間はこっちに居なかったのよ。執事長だけは牢を出てたけど、出した奴等も纏めて喰ってきた。エルフの工作員で間違い無いけど、下っ端でしかなかったからね。碌な情報が無かったよ」
「それはしょうがないんじゃない? 下っ端を派遣して切り捨てられるようにしておくのは当然でしょうし、そこまでエルフの連中も甘い訳じゃないと思う。王は喰われてるけど」
「そこの混乱がどう出るかは、ちょっと分からないね。案外下っ端の連中は、これ幸いと暴走を始めるかも。それが無いとは言えないのが、エルフどもの度し難さだよ」
『長生きだからか、欲に塗れて酷い連中でした。長く生きると達観するのかと思っていたら大間違いです。煮込んで煮込んで煮込み続けたような欲望を持っていますよ、エルフというのは。一部だけかもしれませんが』
「まあ、流石にそこまで欲を持つのはエルフの一部じゃないかな? 他種族への見下しや差別は殆どのエルフが持ってるだろうけどさ」
「それが既に論外な気がするけど「コンコン」……っと、開いてるよー」
「失礼します。そろそろ宿を出て食堂に行きましょう。そして朝食の後は準備を整えたら出発です」
「「了解」」
ミクとアレッサの準備は既に終わっていたので、そのまま部屋を出て王女の部屋へ。合流したミク達は護衛しながら食堂へと行き、朝食を済ませる。その後はトイレなどを済ませ、宿の者にお金を渡して精算。
ミクは全員のフッタルに対し【浄滅】を使っておく。周りの王女達や騎士達が驚くものの、説明するとすぐに納得していた。何故か近くの大ラクダの機嫌が急に良くなったが、ミクは敢えてスルーしてフッタルに乗る。
第一オアシスを出発して少し経った頃、ミクは【念送】でアレッサに説明を始めた。
『宿で説明しても良かったんだけど、この暇な時間で説明しておく。昨夜喰ったエルフどもの中に、王族の屋敷の厨房で料理をしてる者が居た。そいつがジャイアントワームを引き寄せる料理を作った張本人』
「………(コク)」
アレッサは口を開かないものの、ミクの方を向いて顔を上下に動かす。【念送】なので聞こえていないという事はあり得ない。でも、口は開きたくないようだ。それ程までに暑いのだろう。
『かなり迂遠な方法だからか、そこまで効果は期待していなかったみたい。でも襲われたから、運が良かったのか悪かったのかは微妙。昨夜はそれと犯罪者を喰っただけだね』
「………(コク)」
再び頷いたが、それ以降はミクも【念送】を使う事なく、関わりを薄めて暇潰しを行う。適当に過ごしていると暇になったのか、王女が離れて後ろのミク達に近付いてきた。
隊列としては騎士達が前におり、その中央後ろに王女。そして王女の左右にオルティマとイヴィエルテ。そして後方にミクとアレッサという形になっている。なので少し後ろにズレてきただけだ。
「少し宜しいですか? 第二オアシスの事を話しておかねばと思いまして。実は第二オアシスは昼過ぎに到着できると思います。サデンから第一オアシスは遠いのですが、第一から第二はそこまで遠くありません」
「ふーん。なら楽で助かるけど、何故わざわざ説明を?」
「第二オアシスの先が王都ブランとなります。つまり王都ブランとは、第三オアシスであり王都でもあるのです。それゆえに私達を狙うのであれば……」
「確実に第二オアシスだね。でも確実を期すなら第一オアシスから狙うべきじゃない? 何で昨夜は全く狙われなかったんだろうね? チャンスという意味では昨夜も同じだろうと思うけど……」
「ええ。ですが兄上の手の者は私達に手を出してきていません。もしかしたら、兄上も呪いの剣と知らずに下賜したのではないかと、その可能性も考えています」
「エクスダート鋼の輸出依頼だよね? もちろんゴールダームとの外交もあるんだろうけど、その程度でわざわざ剣を下賜したりするかな? しかも第二王子がわざわざ」
「仰りたい事は分かります。ですが、ここまで襲撃が無いのと、サデンの屋敷の事を考えると……相当程度、入り込まれているのではないかと思うのです」
「その可能性は十分にあるだろうね。変装の魔道具の事を知らなかったくらいだし、もしかしたらジャンダルコでは知られていない可能性すらある。王女だけじゃなく、王ですら」
「はい。陛下ならば存じている、または近衛騎士団長も……そうあってほしいのですが、エルフどもの暗躍は相当根深いのやもしれません」
「<狂乱王>とかいうのも居たし、そいつは【死霊術】の研究をしてたって聞く。案外その副産物なのかもね、色々な魔道具は」
「<狂乱王>……! 今もまだ続く、我が国の因縁の相手です。決して許す事の無い、ジャンダルコ最大の敵。既に死亡しているでしょうが、それでも<狂乱王>の事がある限り、我々がエルフを認める事はありません」
「まあ、それでいいと思うよ。怨みや憎しみを忘れろって言ったところで、それができたら苦労しない訳だしね。更に多くの民が殺されたっていうなら許せないだろうしさ」
「はい。そもそも向こうから攻めて来たのです、こちらが許す必要などありません。それは言っても仕方ないので、これ以上は言いませんが……まずはエルフどもを探し出すのが先ですね」
「エルフィンは明らかにジャンダルコを狙ってるっぽいからね。言葉は悪いんだけど、この砂漠の国を何故狙うのか理解できない。単に領土の問題?」
「さて、それもあるのかもしれませんが、一番は香辛料だと言われています。エルフどもの森にもあるそうですが、ハッキリ言えば少ない。しかも過去に我が国を強引に攻めた所為で、今も取り引きは行っておりません」
「成る程ね。自分達は一番だと思っているのに、香辛料の少ない味気ない料理しか食べられない。その事に怨みを持ってると……唯の自業自得じゃん。<狂乱王>と攻めた馬鹿どもが悪いだけの話」
「そうです。にも関わらず、香辛料欲しさに我が国に手を出している。本当かどうかは分かりませんが、そう言われています」
「ふーん」
(既にあのリッチだかノーライフキングだかは滅ぼしたけど、エルフィンの腐った思想の連中は生きてるんだよねー。それも、どうしたもんか……)
ミクならば喰らえば済むのだが、おかしな思想の貴族かどうかを探るのが面倒なのだ。人間種だから食べたい、しかし調べるのは面倒。適当に喰うと神どもが出張ってくる。
そんな思考がループしており、どうにも困った状態なミクであった。




