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0169・砂漠の悪夢




 「す、凄い!! 私はジャイアントワームを一人で倒せる人を初めて見ました!! あれ程の巨体を誇る、<砂漠の悪夢>と言われるジャイアントワームを倒すなんて!!」


 「本当に凄い……。前人未到の快挙と言っても過言ではありません! 何故ジャイアントワームが町の近くに出たのか分かりませんが、今までの歴史上、一人で討伐した者など居ないのです」


 「ええ。ジャイアントワームを討伐した記録は過去に一度だけ。それも500人以上の騎士で討伐した記録ですし、200人以上が犠牲になったと言われています。そのジャイアントワームをたった一人で……」



 あまりの驚きに言葉使いが普通に戻っているイヴィエルテ。そんな中、ミクはゆっくりと歩いてジャイアントワームに近寄り、アイテムバッグに死体を収納した。


 誰かに奪われるのも業腹なので入れたのだが、特に使い道は無かったりする。そもそも欲しければフィグレイオに行けば済むのだ。ワイバーンを殺すついでに手に入れられる程度の物でしかない。違うのは大きさだけだ。


 そんな事を考えつつミクは王女達に近寄り、フッタルに乗ると先を進む事を提案する。



 「そろそろ町に行こうか? ここで固まっていても始まらないし、無駄な時間を過ごす事にしかならないよ。私からすれば驚きすぎとしか思わないけどね。あれより多少小さいヤツなら、出てくるダンジョンがあるし」


 「「「「「「「えっ!?」」」」」」」


 「ミク、それってどこ?」


 「フィグレイオの王都近くのダンジョン。そこの61階から79階に登場するよ。さっきのよりは小さいけど、それでも十分な大きさだけどね。そいつらを何度も狩ってるから、多少大きくなったところで、ねえ……」


 「ミクなら大した違いは無いか。あんなに大きな魔物だと、圧し掛かられただけで確実に死ぬね。500人の騎士が居て、200人以上死んだっていうのも分かるよ。近付くだけでも大変だろうし」


 「そうなのですよ! それなのに、あっさりと事も無げに……! あれは<砂漠の悪夢>と言われる程にですね!!」


 「何で怒ってるのか知らないけど、さっさと町に行こうよ。こんな所で立ち止まってても何の得も無いんだけど?」


 「え、あ、ええ……参りましょう」


 「すみません。砂漠の者にとって、ジャイアントワームは本当に悪夢なのです。その悪夢をあっさりと倒してしまわれたので、姫は混乱してらっしゃるのでしょう」


 「ええ。ジャイアントワームは砂漠に生きる者にとって、理不尽の権化とも言える存在。その理不尽を叩き潰してしまわれた。その事を理不尽だと感じていらっしゃるのだろう」


 「そんな事を言われても知らないよ。もっと苦戦しておいた方が良かったって事? それって無駄でしかないと思うけどねー。わざわざ苦戦っぽい事をする必要性を感じない。演劇じゃないんだからさ」


 「まあ、ミクの言いたい事はよく分かる。演劇じゃないんだから、都合よく苦戦して、ギリギリで勝つなんてあり得ないしね。そんなのは想像の中だけで、大体は勝つなら勝つ、負けるなら負けるだよ」


 「そうそう。都合よく苦戦しつつ勝てなんて、そっちの方がよっぽど理不尽だね。それにあれだけの巨体なら、人数が居ても上手くいかないんじゃないの? 少数精鋭の方が上手く戦えそうだけどね」


 「相手が大きすぎて、味方が邪魔になるってパターンかな? あれだけ巨体だと逃げるのも難しいだろうけど、味方が邪魔で逃げられないって形で、200人も死んだのかもしれないし」


 「そこまでは分かりませんね。なにぶん古い時代の討伐記録ですから、騎士の人数と戦死者の数ぐらいしか詳細に書かれていないんです。どのように戦って倒したか明確には……」


 「あの、申し訳ございません。少々混乱していたようです。助けていただいて、ありがとうございました。ミク殿が居てくれなければ今ごろ……」


 「それ以前に、私は走れ、逃げろって言ったのにね? 誰も聞かずにボケーっとしてるだけだし、まずはアレを何とかしてほしいよ」


 「そういえば、そうでしたね。すっかり忘れていましたが、その事も申し訳ございません。後ろを向いても何も無かったので、何を言っているのか理解出来ませんでした」


 「ミク殿は【気配察知】や【魔力感知】を持っているのですか? それならば分かるのですが……」


 「持ってないよ。そもそも私はスキルを何1つとして持ってない。代わりにスキルと同じ事が自前で出来るけどね。再現できないスキルはあるけど、多くのスキルは再現できる。もちろん【気配察知】や【魔力感知】も」


 「「「「「「「………」」」」」」」


 「まあ、気持ちは分かるんだけど、これが冗談じゃないのよ。【真偽判定】まで自前で出来る以上、ミクの言っている事は嘘じゃないの。イリュやカルティクにシャルだって呆れてたけど、それが現実。世の中にはメチャクチャを体現する理不尽な人も居るのよ」


 「「「「「「「………」」」」」」」



 一度目は訝しがっていた王女達と騎士達も、アレッサの言葉を聞いてからは呆れた表情に変わった。



 「ジャイアントワームを理不尽の権化って言ってたけど、私からすれば、ミクの方がよっぽど理不尽の権化なんだよね。あのジャイアントワームだってあっさり倒すし、魔法は尋常じゃないし、スキルは再現するし。メチャクチャにすぎる」


 「……そろそろ町だけど、思ってた以上に遠かったね? 予想よりも時間が掛かった気がするけど、こんなもの?」


 「砂漠では遮る物が殆どないので遠くまで見えますが、代わりに見え始めた物は遠くにあるんです。遠近感も掴みにくいですし、<近くに見えて遠きもの>という言葉もあるくらい、見えてるものは当てにならないんですよ」


 「へー……そうなんだね。<近くに見えて遠きもの>かー、思っているよりも厄介な事は覚えとこう」



 町には門番などおらず、素通りするように入れた。まあ、この暑い中で門番をするなど、自殺行為でしかない。誰もやらないのは当たり前だとも言える。


 町に入った一行は、宿に移動してフッタルを預けた。砂漠には大ラクダと呼ばれる生き物も居るが、こちらは商人が使う乗り物だ。


 水を大量に保持する事が出来て体が大きく、その体の大きさに比例してパワーもあり、荷車などを運ぶ事が出来る生き物である。商人達はこの大ラクダで砂漠を渡り、商売をして歩く。


 そんな大ラクダが厩舎に入っていて、何故かミクをジッと見てくる。フッタルは大ラクダに興味も持たず、適当に寝転がった。大ラクダが居ても、緊張も怯えも無いらしい。


 ミクも大ラクダを気にせず宿の建物に入り、案内された部屋に入ってベッドに寝転がる。夕食までには時間があり、それまで適当に雑談でもして過ごすつもりのようだ。



 「それにしてもデカいミミズだったわねー。まさか、あんな大きなヤツがいきなり現れるとは思ってもみなかったけど、ミクは先に気付いてたんでしょ? もっと早くに伝えられなかったの?」


 「別に言ってもよかったんだけど、何か変だったんだよね。何故か地中でフラフラしてたし、あっちに行ったり、こっちに行ったり。私も近付いてきてるなーとは思ってたんだけど、動きがおかしすぎてどう考えていいか困ってたの」


 「そんなにフラフラしてたんだ。………それも何か変ね? あんな大きなものが日中フラフラするって、不思議な感じ。移動したり食事したりするなら夜じゃない?」


 「私もそう思うんだけどね……」



 どうやらミクは何かが引っ掛かっているらしい。


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