0166・たのしいじんもん
使用人を1人ずつ呼び、アレッサに【真偽判定】を始めさせた王女。1つ1つ質問していくも、途中でアレッサも質問を挟む。これが妙な程に的確で、容赦なく使用人の心を抉っていく。
「貴方が毒を入手した者ですか?」
「いいえ」
「青く光ってるけど、貴方は毒が盛られると知っていて黙ってましたね?」
「………」
「青く光ってますね。つまり毒が入れられると分かっていて止めもしないとは。毒を入手した者や混入させた者と全く変わりません、等しく同罪です。こういう者は私達王族にもやるでしょうからね」
「そのような事はありません! 我々が王族の方に毒を盛るなど、ある筈が無い!!」
「赤く光ってるけど? 王族だって気に入らなきゃ殺すとか、自分達は王族以上だと思ってるんだねー。高が使用人なのに。……っていうか、【真偽判定】中なのを忘れてない?」
「………」
「碌な者ではありませんね。騎士達、屋敷の中から縄などを探してきて、この者を縛っておきなさい。後で兵士の所に連れて行き、牢に入れておかねばなりません」
「「「「ハッ!」」」」
騎士のうち2人が離れ、屋敷内から縄などの縛れる物を探しに行く。ミクも手伝う為に行ったが、そこに関しては王女も何も言わなかった。少々手が足りないのは間違い無いのだ。
「さて、他にも犯罪がありそうだから聞いていくね。お釣りをちょろまかした。誰かに肉体関係を迫った事がある。書面を改竄した。他にも毒殺を知っている。物を盗んだ。裏組織や闇ギルドに関わりがある」
「青、青、赤、青、赤、赤。つまり、お釣りを懐に入れ、肉体関係を迫り、他の毒殺も知っている訳ですか。貴方の罪を1つずつ暴かなければいけませんね?」
「………」
ここまで暴かれるとは思わず、完全に肩を落としてガックリしている執事。ここは屋敷なので最高位は執事長であり、あくまでも屋敷の維持をしているに過ぎない。だからこそ目が届かないのをいい事に、好き勝手をやっていたのだろう。
今までの行動が返ってきただけなので完全に自業自得である。誰が悪いのかといえば、怪物に喧嘩を売った己が悪いのだ。唯それだけでしかない。
◆◆◆
多少の時間が掛かった後、ミクと騎士達が戻ってきたのだが、そのミクは執事長などを引き摺っていた。驚いてオルティマが聞くと、騎士が「逃亡しようとした為やむなく」と返事をする。
そう、縄で縛るという言葉を聞いた途端、メイドに案内させてその隙に逃亡しようとしたのだ。それを察知したミクが取り押さえ、その後に縄で縛って連れてきた。間違いなく何か知っているだろう。
「執事長。まさか貴方が主体などという事はありませんよね? 仮にそうであれば、王族への裏切りです。一族郎党がどうなるか、分かりますね?」
「………」
そこに居たのは先程までの王女ではなかった。視線も表情も冷え切っており、無価値な物を見るような、何の感情も湧いていない顔をしている。
事ここに至って、初めてこの王女が簡単な相手ではない事を理解した執事長。第三王女という事でどこか舐めていたのだと、小娘など簡単に言い包められると、そんな甘い考えで事を起こした己の失敗をようやく悟った。
「貴方が指示をしてミク殿とアレッサ殿を毒殺しようとした。毒の入手ルートは貴方が持っているルートである。裏組織や闇ギルドと関わっている。そもそも裏組織か闇ギルドの者だ」
「青、青、青、青。あーあー、最初からあっち側のヤツだったんだねー。だから毒も簡単に入手できた訳だ。王族の屋敷に裏組織か闇ギルドのヤツが入り込んでるって、この国は大丈夫なの?」
「流石にこれは……私も予想外でした。すり替わったのか、それとも入れ替わったのか、その辺りも明らかにしてしまいましょう。貴方は執事長にすり替わりましたね?」
「赤か……。貴方は先代の執事長から正式に仕事を継ぎましたね。これが青って事は……先代の執事長も裏の人物ですね? はい、青ー」
「まさか先代の執事長から続いていた? 先々代の執事長も裏の者だった。………何も出ませんね?」
「何も出ないって事は、知らないって事だよ。つまり聞いた事が無いんだろうね。先々代は不明か……となると、先代と貴方は同じ組織の者? これは青なんだね」
「最初から同じ組織の者が執事長だ。………これも光りませんか。という事はいつ頃から執事長として潜り込んでいるかは分からないと。暗殺の為でしょうか?」
「いや……王族の屋敷に潜りこんで情報収集をしていた。……うん、だろうね。王族の屋敷の執事長って事は、情報収集してても咎められない立場だもん。色々な所に入り込めるし」
「裏組織か闇ギルドか知りませんが、上に御報告してキッチリと潰さねばなりませんね。王族の方を暗殺しようとしていた可能性もあるのです。それが分かった以上は見せしめが必要でしょう」
「ですね。王族の方に手を出そうとする者など、苛烈な報復をされると見せねばなりません。愚か者はそうやって見せられねば理解しないのです。で、ある以上は見せねばなりません。事は王族の方々のお命に関わります」
「陛下に申し上げておきますが、潰すのは確実でしょうね。何処を根城にしているかで変わりますが、これがエルフィンを根城にしている者どもであれば……」
「皆殺し以外はあり得ませんね。確実に処分しておかねば、また入り込んでくるかもしれません。羽虫の如く鬱陶しい連中ですので」
「貴方はエルフィンに関わりのある組織の者だ。貴方はエルフィンの高位貴族に雇われている。貴方はエルフである」
「全部青ですって!? お前は何故、私達と同じブラウンエルフの肌と髪の色をしているの! 答えなさい!!」
「塗料で塗っている。親がブラウンエルフ。偶然その色で産まれた。魔道具で変えてる。きた、魔道具で色を変えてるのが正解」
慌てて執事長の体を調べると、ネックレスを外した途端にエルフの肌と髪色になった。どうやら身に着けていると、肌や髪の色が変化する魔道具らしい。わざわざジャンダルコに潜入する為とはいえ、よく作るものである。
「こんな物で欺かれていたなんて……!」
「ははははは! お前達のような肌も汚い者は頭も悪いのだよ。我らエルフと違い醜い者どもなど、所詮その程度でしかないわ」
「ミクに取り押さえられて、わたしに暴かれてるマヌケが随分と偉そうね? しかもバレるまで必死に隠していた癖に。相変わらずゴミみたいな連中だこと」
「ふん! 下等な人間如きに何を言われても気にもならんな。所詮は頭の悪い猿が何かホザいておるだけよ」
「その頭の悪い猿に暴かれたのは何処の誰だっけ? その程度の事も理解できないって、頗る頭が悪いわね。流石はエルフ、長生きなだけのケダモノというのは正しいわ」
「何だと、キサマ!!」
「前に<鮮血の女王>と<影刃>を捕まえて、不老の秘密を暴こうとしたけど失敗。襲われた時に<鮮血の女王>がエルフの事をそう言ってて、その後に報復でエルフの王が殺されたんだけどね」
「「「「「「「「「「は?」」」」」」」」」」
「ん? <鮮血の女王>と<影刃>を襲ったんだよ、エルフの裏組織が。その時にマヌケなエルフに対し、長生きなだけのケダモノと言ってたの」
「いえ、その後なんですけど……」
「ああ、エルフの王が殺されたってトコね。怒った<鮮血の女王>と<影刃>が動いて暗殺されたんだけど、知らなかったの?」
「「「「「「「「「「えぇぇぇぇぇーーーーーっ!?!!?!」」」」」」」」」」
エルフの現国王が暗殺されたのだから驚きであろうが、「五月蝿いなぁ」としか思わないミクとアレッサであった。




