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0165・たのしいゆうしょく




 ミク達が適当な雑談をしているとイヴィエルテがやってきて夕食だと言われた。ミクとアレッサはお互いに顔を見合わせて「ニンマリ」した後、イヴィエルテの後ろについていく。


 長机のある食堂に到着し、ミクとアレッサは騎士達の横の席で料理の到着を待つ。屋敷の使用人が持って来て配膳している最中、ミクは目にも留まらぬ速さで極小の触手を放つ。


 料理に少し触れて毒が無い事を確認したミクは、心の底からガッカリする。その態度を見たアレッサは毒が無い事を理解。食べても問題なさそうなので食べる事にした。


 王女が手を付けて多少食べてから騎士達が手をつける。それを確認した後、ミク達も食事を開始する。周りでミク達を見ていた使用人の中には、ミク達のマナーを見て舌打ちをしている者もいた。


 そう、ミクもアレッサもマナーは完璧なのだ。そもそも神からそういったものと共に力加減を習ったミクは、当たり前のようにマナーと所作を完璧に行えている。むしろ出来て当たり前でもあるのだ。


 そしてアレッサはロリコンヴァンパイアとその眷属から淑女教育を受けている。こちらもマナーと所作は完璧であり、文句の付けようなど何処にも無い。


 マナーなどの事で嘲笑ちょうしょうしようとしていたのかもしれないが、随分と愚かな事である。ミクもアレッサもその気配を感じており、使用人どもの頭の悪さに呆れていた。



 (さっさと毒入りの料理を出せばいいものを、何をやっているのか。さっさと毒入りを出せ! 私に喰われろ!)



 イライラしてきたミクも、その感情を態度には出さないし勘付かせもしない。関わりは極力薄めているので、アレッサの【悪意感知】も届かないのだ。わざわざ食事時にする事ではないと思うが。


 それぞれ料理が運ばれてくるも毒は入っておらず、ミクが夜中に喰おうかと考えていると、最後のデザードに毒が入っていた。リンゴのような梨のような物に何かが掛かっているが、それに毒が含まれていたのだ。


 しかも混入しても仕方がないと思える物ではなく、ポイズンスパイダーの毒なので意図的である事は確定だ。心の中で拍手喝采、「やれば出来るじゃないか」と喜んでいるミク。


 顔を近づけて臭いを嗅ぎ、さも臭いで分かりましたよー的に装う。それを見たアレッサは、「コレが毒ありか」と手を出すのを止めた。



 「どうしたんです、急に? 先ほどまで普通に食事をとっていたのに、デザートに何かあるんですか?」


 「うん。これね、ポイズンスパイダーの毒が含まれてる。ゴールダームの第3エリアではよく出てくるからね、私達にはある意味で馴染みの物なんだよ。毒が入ってるってどういう事かな?」



 ミクが「毒」と言った瞬間、王女は使用人達を睨む。王女が雇った人物を毒殺しようとしたなど、王家の面目に泥を塗る行為でしかない。それも毒殺など、あまりにもな醜聞である。


 王族の名を地に落とそうとする行為であり、世が世なら万死に値する行為であろう。まあ、この星の今の時代も然して変わらないので、現在進行形で万死に値する行為ではある。



 「そ、その女が勝手に言っている事でございます!」


 「そうでございます! 私達が毒を盛る筈など「なら食べてみなよ」ございません!!」


 「ほら、毒が無いなら食べられるでしょ? 早く食べてみなよ。食べて毒が無ければ謝罪でも何でもしてあげるからさ。………早く食べろ、口に突っ込むぞ」


 「「「「「「「………」」」」」」」


 「どうしたのです? 毒が入っていないなら、ミク殿が言う通り食べられるでしょう? 貴方達は毒が無いと言ったのですから食べなさい。………私が許します、早く食べなさい!」


 「「「「「「「………」」」」」」」



 使用人達は全く動かずに下を向いている。となると全員がグルだったと言っても差し支えないだろう。ここでミクは一つの爆弾を落とす事に決めた。タイミングとしてはバッチリだろう。



 「アレッサ、犯罪者は?」


 「この場に居る使用人は全員アウト。毒を入れた事を知っていて黙ってたからだろうね。見事に犯罪者となってる。何なら【真偽判定】をしてもいいよ」


 「「「「「「【真偽判定】!?」」」」」」


 「そう。わざと黙ってたんだけどね、アレッサは【悪意感知】【罪業看破】【真偽判定】のトリプルなの。犯罪者は見ただけで分かるんだよ、そういうスキルだから」


 「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」



 流石に驚いている騎士達と使用人。それだけのレアスキルなのだから当然だが、その犯罪者の天敵とも言えるラインナップにも素直に驚いていたりする。


 トリプルというのは相当珍しく、出会えたら奇跡と言っても良いくらいだ。出会う確率でさえそれほど低いのだが、その3つが犯罪者を暴く為のスキルなのだから、驚きも大きくて当然である。



 「まあ、探索者の方が自身のスキルを秘匿するのは普通の事ですから、私達も言いませんでしたが……。それにしても【罪業看破】に【真偽判定】なんですよね……」


 「犯罪者を見つけ、真実を明らかにする。あまりにも危険で、いつ狙われてもおかしくないスキルを持っていますから。言えませんよ」


 「流石に私達もそう簡単には口にできません、特に【罪業看破】は。……ここでバラしたのは毒が入っていたからでしょうが、良かったのですか?」


 「仕方がないかな、とは思ってる。わたしだって毒を入れられて腹が立ってるし、悪意を向けて来てたのは知ってたからね。ミクとも話してたのよ、こいつら何かやってくるって」


 「「「「「「「………」」」」」」」


 「最初から疑われていた訳ですか。とはいえ【悪意感知】も持っているのですから、警戒して当たり前ですね。騎士達、そこの使用人達を逃がさないように。アレッサ殿に【真偽判定】を使っていただきます」


 「「「「「ハッ!」」」」」



 騎士達は椅子から立ち上がると、素早く使用人達が逃げられないように囲む。退路を断たれた使用人達はガックリと項垂うなだれたが、これで終わる筈など無い。こいつらは随分と甘いなと思いつつ、ミクは【真偽判定】用の紙を出す。


 アレッサも余興として楽しむ気満々であり、これがデザートの代わりとすら思っていた。それもどうかと思うも、食べ物の怨みは大きいという事だろう。



 「さて、これから【真偽判定】を始めるんだけど、嘘が明らかになるだけじゃ済まないわよ? わたしやミクの食事に毒を入れた事を、死ぬほど後悔させてあげる」


 「それはいったいどういう事でしょう? 流石に拷問は姫様も許可されないと思いますよ?」


 「そうじゃない。この【真偽判定】用の紙、ワイバーンの魔石で作ってあるの。で、これを使うとね、普通の【真偽判定】の紙と違って非常に細かく出るんだよ。今までなら誤魔化せたものも……」


 「誤魔化せない、と? ……ワイバーンの魔石というのが驚きですが、まさかそんな物があるなんて……」


 「ま、実際に見てみたら分かる。これは紫色の判定すら出るの、どっちつかずの質問をするとね。前にも話したんだけど、そういう質問を真偽官は悪用してるんだと思う。普通の【真偽判定】用の紙じゃ出ないから」


 「要するに、この紙は曖昧な答えは許さないという事ですね?」


 「そう。それじゃあ、楽しい【真偽判定】を始めましょうか? 貴方達はどんな罪を隠しているのかしら。わたし達に毒を盛ったくらいだし、今回が初めてって事は無いわよねぇ? 毒が用意できてるんだもの」


 「言われてみれば、確かに。毒の入手ルートなど、普段から持っていなければ、すぐに手に入れたりなど出来ない。それに、毒も新鮮でなければ効き目が薄くなると聞く。という事は……」



 イヴィエルテの一言で更に厳しい目を向ける王女。王族の屋敷で働く者が毒の入手ルートと繋がっているなど、言語道断である。


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