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0164・買い物




 案内された部屋で少しの間休んでいると、オルティマから呼ばれたので部屋を出てついていく。


 案内された部屋に居た王女と共に騎士達と一塊になって護衛するが、どうも屋敷の管理をしている連中からは良く思われていないらしい。睨んできているものの、王女の目線が向くと視線を逸らしている。情けない連中だ。



 「私が見ていなかったとでも思っているのですか? お2人は私が雇った方です、文句があるならば私に言いなさい」



 王女がそう言うと黙ったが、下を向いている者はあからさまに不満気な顔をしている。更に王女が口を開こうとしたが、それより先にミクが口を出す。



 「怒るのはもういいから昼食に行かない? 私達からすれば、王族の屋敷を管理している奴等はこの程度としか思わないからさ。王族の顔に泥を塗るより、自分達のチンケなプライドの方が大事なんでしょ? だったらそれでいいじゃない。そんなヤツはよく居るよ」


 「本当にね。王族よりも大事なんだから、さぞ凄いプライドなんでしょうね。わたしには全く理解できないけど。何で使用人のプライドの方が、王族よりも大事なのか……うん、何度考えても理解できないわ」


 「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」


 「「「「「「………」」」」」」



 睨んできていた使用人達は完全に沈黙し、騎士達からは厳しい視線が飛んでいる。ミクの言っている事は極々当たり前の事であり、王族の面目が最優先なのは常識でしかない。


 ミクやアレッサは国家に所属していないうえに、<鮮血の女王>や<影刃>の知り合いという事で許されていたりするが、探索者が当たり前のように意見を口にする事など普通は無い。


 だからこそミク達からは反論なぞ来ず、口だけのお叱りで終わると甘く考えていたのだ。だがミクは事実を指摘した、それは王族の顔に泥を塗る行為だと。それをハッキリ指摘された以上は、なあなあでは済ませられない。


 こうなると断然優位なのは探索者である。彼らはここで依頼が終わっても帰れば済むからだ。元々魔物を倒したりダンジョン攻略を生業なりわいとする以上、収入源が断たれる訳ではないのである。


 しかし使用人は違う。周囲から羨まれるような職場だったのに、王族の不興をかって解雇された日には、他の所で働く事すら難しい。誰だって王族の不興をかったような者など、雇いたくないのが本音だ。


 となると、遠い町まで行かないと仕事が見つからない可能性があり、彼らにとっては死活問題である。自分達の軽率な態度が招いた結果なので自業自得なのだが、こういう連中は反省などしない。


 ミクは自分に対して悪意が向いている事にほくそ笑んでおり、横に居るアレッサは「喰われるんだろうなー」と他人事であった。


 説教をしても無駄だと思った王女は、それ以上言うのを止めて町へと出ていく。ミクは表情を変える事はなかったが、心の中では拍手喝采である。早く夜にならないかと、今から待ち遠しいミクであった。



 ◆◆◆



 昼食後、ミク達は王女を護衛しつつ、色々な物を見て回って購入していく。特に多く買ったのは香辛料だ。荒地で育つ香辛料や、砂漠で育つ香辛料もあり、なかなかにバラエティ豊かな香辛料が多くあった。


 とある青い星の者が見たら驚くであろう、砂漠からしや砂漠わさび。更には荒地で育つ胡椒や砂糖などもあった。ミクには想像もつかなかったが、砂糖が採れる御蔭か、ジャンダルコでは菓子作りが盛んであったりする。


 小麦の多くは輸入であるものの、それを活かしたクッキーやケーキ、砂漠麦という大麦の一種を使った水飴なども店先にあった。それらも購入しており、全部で大銀貨4枚を支払っている。


 全て一括でミクが支払ったが、半分ほどはアレッサの欲しがった物であり、ホクホク顔をしながらアイテムバッグに入れていた。ちなみにその光景を見て騎士達は呆れていたし、王女達はちょっと嬉しそうにしている。



 「他国の方が喜んで買っていく物がある、というのはジャンダルコの者として嬉しいものですよ。商王国を名乗っていながら買う物が無いと思われるなど、恥でしかありませんから」


 「大銀貨4枚分というのはビックリですが、確かにジャンダルコでは香辛料が有名ですからね。買っていただけるのは助かります。まあ、私は馴染みがありませんでしたが……」


 「オルティマ殿は辺境伯家。やはり香辛料の本場からは少々遠いですから仕方ないかと。私など子供の頃は香辛料漬けのようなものでしたから、むしろ香辛料の無い料理の方が素朴で好きです」


 「それはそれで、どうなのでしょう? まあ、仕方がないのでしょうけど……」



 子供の頃に散々食べさせられた物は嫌いになるし、そういうものじゃない? と思うアレッサ。逆によく分からないミクはスルーして聞き流した。


 他にも様々な店を見てみるも、特に欲しいと思う物は無く、甕や瓶などを大銀貨1枚分買って終了。後は明日の移動の為にフッタルを借りに行く事に。


 乗り物屋に行くとフッタルとドーモスというのが居たが、フッタルは6本足の大きなロバ、ドーモスはトカゲだった。どちらも水を沢山体の中に溜め込む能力を持ち、それ故に砂漠で重宝される乗り物だ。


 ミク達は色々と聞きながら見ているが、王女と護衛が乗ると分かり一括で借りる事となった。お金は王女もちなので特に支払う事はなく、ミク達は屋敷へと戻る。


 戻った際には普通の態度だったものの、悪意はより強くなっており、その事にミクは嬉しくて仕方なかった。【悪意感知】を持つアレッサは「バカだなぁ」としか思っていない。


 そもそも2人はスキルなどを公表していないし、ミクに関しては無いのでする意味が無い。もちろん手動でスキルが使えるというか、同じ事ができてしまうのだが。


 ミクとアレッサはあてがわれた部屋に入り、適当に寝転がって夕食を待つ。



 「ミク、もし夕食に毒でも入れてきたらどうする? 流石に黙ってる訳にもいかないし、それをすると喰ったのがミクだってバレるわよ?」


 「む………流石にそれは面倒な事になるね。……どうしよう?」


 「毒を入れてきたら、わたしのスキルをバラすのはどう? 【真偽判定】用の紙も持ったままだし、牢屋にブチ込めるよ?」


 「そしたら食べられなくなるじゃない。却下」


 「いやいや、話は最後まで聞いてよ。牢屋にブチ込んだ後、夜に食べに行けば良いだけ。そうしたらミクは疑われないでしょ? 全て綺麗に食べれば、脱獄したように見せかける事も出来ると思うの」


 「成る程……………うん。それ採用! 犯人が捕まった後だから、私が疑われる事なんて無いしね」


 「そうそう。あの感じだと夕食の時に絶対に何かしてくるわよ。遅効性の毒なのか、それとも即効性の毒なのかは分からないけど、ミクなら毒物は分かるでしょ?」


 「人間種の目に見えない速さで触れればいいだけだし、僅かにでも触れれば分かる。私の解析能力は、毒が分からないほど低くはないよ」


 「なら問題ないわね。わたしはミクが手をつけるまで食事はしないって事で」


 「でも毒は効かないと思うよ? そもそも私の血肉を持った時点で殆どの毒は無効化される筈。多分だけど無害化するまで分解して、後は栄養として吸収されるだけじゃないかな?」


 「………毒を栄養として吸収するの? むしろ危険なんじゃ……」


 「いや? 本当に駄目な毒部分は排出されて出るよ。お尻から」


 「ああ、そういう事。つまり毒の根源部分だけ排出されて、問題ない部分は吸収されるって事ね。……うん、理解はしたけど意味は分からない」


 「それで良いんじゃない? 効かないって事だけ分かってれば」


 「まあ、そうね」



 最後は適当な言葉で納得したというか、放り投げる事に決めたアレッサ。考えても無駄な事は、考えても無駄である。


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