0163・砂漠の入り口・サデン
ミクとアレッサがちょうど準備を終えた頃、王女は起きてきた。それよりも前にオルティマは起きており、イヴィエルテも少し前に起きている。それでもアレッサよりは遅かったのだから、王女付きのメイドもゆっくりなのだなと思う。
まあ、早く起きすぎると王女を起こしてしまう可能性があるので、一緒の部屋の場合は難しいところかもしれない。そんな事を2人で話しているとノックがあり、許可するとイヴィエルテが入ってきた。
「暇様も起きましたので、もう少ししたら出発します……って問題なさそうですね。まずは朝食に行きますので」
「了解、了解。こっちの準備はとっくに終わってるから、ゆっくりでいいよ。どうせ王女は起きたトコなんでしょ? 急がせたって早くなる訳じゃないし、そっちのペースでいいよ」
「そうそう。旅の割には遅いと思うけど、気を使わなくていい宿だから良く眠れたのかもね」
イヴィエルテが戻った後も2人は適当な雑談をし、次にオルティマが来たタイミングで部屋を出た。王女の準備が終わったのでミク達も周りについて出ると、そのまま食堂へと行き朝食を食べる。
食事後は宿へと戻り馬車と馬に乗ると、一行は子爵領の町を出て出発。今日も移動の日だが、ここからは荒地を移動していく事になる。
整えられている街道はあるものの、それ以外の道は荒地そのものであり、とても馬車が通れるものではない。逆に言うと王都までの道が分かりやすいとは言えるが、王都は砂漠の中にある。どうやって馬車で行くのだろうか?。
「馬車は砂漠に入る前の町で置いて行く事になる。そもそも王族専用の幾つかの物は、その町で保管されているのだ。馬車もその一つだな。流石に砂漠を馬車で進む事はできない」
「砂漠はフッタルという生き物に乗って進むって聞いた事があるけど、それって本当なの?」
「ああ、事実だ。正しくはフッタルかドーモスに乗っていく事になる。ドーモスの方が安いが足が遅いので、私達はフッタルに乗っていく。砂漠に突入してからが本番だろうな、狙われやすい」
「オアシスっていう水場を越えていくって聞いたけど、オアシスの周りは砂漠だから逃げ場が無いんだったかな? 後、砂漠って夜は凄く寒いらしいし」
「よく知っているな、その通りだ。砂漠は風の所為で夜は一気に冷える。初めての者は体調を崩しやすいので注意してくれ。寒いなと思ったら重ね着するのがいい」
「まあ、向こうに行ってみてからだろうね。初めてだし、どうなるかは分からないからさ」
荒地の中を順調に進んで行く一行。幾ら荒地といえども水が無い訳ではないので、そういった水がある所では農業をしているのか畑が見える。
「むしろ水がある所に村が作られているといったところだ。我が国では水が貴重な事に変わりはないし、商人が通るルートの事も考えねばならん。それ故になかなか村や町を増やせないのだ」
「水がある所に沿って村を作っていく必要があるけど、そうすると商人達が物を運ぶのが大変になる。ちょうどいい場所に水が流れている訳でもないから、今の形のまま変えるのは難しいと」
「そうだ。村を増やして商人の行き来を活発にしたいとは聞くが、水が無ければそもそもの生活が成り立たん。仕方がない事ではあるが、我ら人間種にはどうにも出来ない問題だ」
その後は話す事も無く進んでいき、途中の村で昼食を食べつつ、更に移動をしていった。一直線に王都へと進んでいるからか、明日の昼には砂漠の手前の町に着くらしい。
今日の宿泊場所である村に着いたが、宿が一つしかなく客が居なかったので貸切にする。この程度のお金は使って歩いた方が良いらしく、特に無駄金という訳でもないようだ。
王族ともなれば周囲に見せる為の散財も必要なので、必要経費となっているのだろう。節約は分かるがケチだと思われるのはマイナスでしかない。王族というのも大変である。
村の食堂で夕食を食べた後、宿に戻って部屋で休む。既にアレッサは寝ており、ミクも目を瞑って寝転がっている。田舎の村で襲ってくる事は無いだろう。
そう思いながらも、気配と魔力に生命力を感知し続けているミク。更には音も臭いも調べているので、これ以上の監視方法は無かったりする。
このミクを欺く事は殆ど不可能だと言ってよく、最も強力な護衛を雇っている事を王女達は理解していない。ミク達も話す気は無いので、知られていないのも当たり前ではあるのだが。
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明けて翌日。朝食を食べた一行は村を出発し、順調に進んでいく。そして昼前になり、砂漠の手前の町であるサデンに到着。既に向こう側に砂漠が見えているので、これ以上は道が無い。
ここで馬車や馬を預けるのがよく分かる。そんな砂漠を見つつサデンに入ると真っ直ぐ進んでいき、大きな屋敷に辿り着く。どうやら王族用の屋敷であり、今日はここに泊まるようだ。
ミクとシャルがどうしようか相談していると、何故かここでもミク達に同じ屋敷で泊まるようにと言われたのだ。
「もしかして、王族専用の屋敷でまで何かしてくる可能性があるの? 流石にそれって大きな問題じゃない?」
「たとえそうであっても、刺客が来る可能性はゼロではないのだ。我が国にも血腥い事はあってな、王族の方が命を狙われた事もある。あの最低なエルフィンの連中にな」
「流石にエルフが居たら目立つから、エルフィンが雇った刺客かな? それなら分からなくもないけど……どうやら違うみたいだね」
「エルフが直接刺客となって王族を襲った事もある。何処の国でもそうだが、そういった事をやらされるのは下っ端で首の回らん連中だ。我が国は元々エルフに隔意があるが、それでも居るだけでは叩き出せん。癪だがな」
「まあ、国の成り立ちからして別れて作ったんだし、更にはその後の揉め事を知ってるとねえ……。むしろ他の種族に対してよりも強い憎しみを持ってるでしょうよ」
「そうなの?」
「自分達エルフから分かれた者達は、元々自分達の奴隷だった。だからジャンダルコは属国であり隷属国だ、なんてトチ狂った事を言っていた時代があったのよ。というか、それが<狂乱王>の時代なの」
「ああ……で、それが今でも続いている?」
「正しくは<狂乱王>が言った事に対して、熱狂して鵜呑みにした奴等が高位貴族に多いのよ。結果、今でもその時代の事がキッカケで対立したままってこと」
「碌な事をしないヤツだね。そのうえ古い時代のバカの言い分を未だに持ち出すとか、狂った連中も多いもんだ」
「今は本気で思ってるというより、ジャンダルコを攻める口実に使ってるんじゃない? 元々エルフって気位の高いヤツ多いしさ」
「それはそうだったね。前にイリュを狙ってきた奴は上層部に不満を持ってたけど、他種族を見下すヤツだったし。色々喚いていたけど、実力も無いのにプライドだけ高いって感じかな?」
「まあ、そういう連中だとは思うけど、ミクと比べたら実力の足りないヤツしか居ないわよ」
王女達について行きつつも、最後尾で暢気に話している2人。イヴィエルテもちょこちょこ混ざってくるが、王女からお咎めは無いようだ。
昼前に着いたとはいえ、先触れを出していた訳ではないので昼食は町でとる事に。今は昼までの休憩で、午後からは明日の旅の準備だそうだ。ミク達も外に出て色々と見回ってきていいらしい。
それを聞いたアレッサが喜んでいるが、道中の村や町では暇だったのだろう。移動を優先せざるを得なかったのもある。
馬車に缶詰状態だった王女も笑顔だが、果たして王女が外を出回っても良いのであろうか?。




