0162・裏組織の壊滅と子爵の死亡
食事を終えたミク達はさっさと部屋へと移動して休む。王女とオルティマとイヴィエルテの部屋、そしてその部屋の左右が騎士の部屋であり、ミク達は騎士の部屋の隣の部屋を使う。
なるべく護衛が周りに居る方が良い。それは事実だろうが、ここまでしなければいけない程に狙われているかは少々疑問がある。
そもそも第二王子は本当に第三王女を狙ったのか。モストレイル伯爵家を狙ったのであって、第三王女を狙っていない可能性もあり、その辺りはよく分かっていない。背後関係などミクには分からないし、調べる気も無い。
なので向かってくる敵がいれば喰い、レティーが脳から情報を引き出すというスタンスで居る。自分が狙われている訳ではないので積極的に動けないというのもあるのだ。
「私が狙われてるなら動いても神どもは何も言ってこないだろうけど、今回は第三王女だから間接的なんだよね。だからこそ守る形でしか動けないんだよ」
「自分が狙われていても変わらないと思うけど? 元々から襲ってきた奴を喰って、記憶を引き摺り出して逆撃でしょ。別に違いなんて無いじゃない」
「………そうだね? ならいつも通りでいいか。自分が狙われてないから何か違和感があるというか、しっくり来ないんだよねー。自分の泊まっている部屋がターゲットじゃないからかな?」
「ああ。襲ってきた賊を倒すのに、いちいちドアを開けて戦わなきゃいけないもんね? ドアを開けた段階で気付かれるだろうし、守るのってかなり厄介かも」
「そう、それ! 何か引っかかってたんだけど、それだよ! 確かにドアを開けなきゃ戦えない、でも見つかったら間違いなく即逃げするだろうし……困ったな」
「最初から部屋を出て待っておく? 王女達の部屋の上で蜘蛛になって待つとか、もしくはドアの隙間から出られるほど小さい何かになるとか。それぐらいしか無いんじゃないかな?」
「小さくなる……ねえ。それなりと言うか狭くはあっても隙間は空いてるし、確かにこの隙間から出られるならドアを開ける必要は無いか。………どうするかな?」
蜘蛛の姿では少々大きいので、強引に小さくなれば通過は可能だろう。今の蜘蛛の姿は毒を撒いたりできるギリギリの大きさなので、体の大きさ自体は今よりも小さく出来る。
今まで行わなかったのは、それ以上小さくなるメリットが殆ど無かったからであり、一時的に変わる程度ならば問題は無い。小さすぎると何も出来ないというか、相手に何かしても効かなくなってしまう。
なので戦闘というか麻痺させる事を考えても、一定の大きさは必要なのだ。肉で包む事を考えても、それは変わらない。
「まあ、極々小さい蜘蛛から大量の肉が出てくるって不自然だしね」
「不自然っていうか、肉を展開するまで時間がかかるのよ。今の姿なら人間種を包む肉なんて一瞬で展開できるんだけど、蜘蛛の姿だと多少の時間が掛かる。これが更に小さくなると、一気に展開速度が遅くなるの。そこまでになれば逃げられる可能性が高い」
「あー、それは駄目ね。ミクが敵に逃げられるとか考えられないけど、小さくなると可能性が出てくる訳かー。狭い所を通過する時だけ小さくなって、後はギリギリの大きさの蜘蛛になって隠れておくしかないわね」
「透明トカゲの能力は得てるから、見られても気付かれなくする事は出来るよ。だから見られても問題は無いんだけど、賊が来なかったら無駄な時間を過ごす事になるから、大人しくこの部屋で待ってる事にしよう」
「そういえば襲ってくるかもって話なだけで、襲ってくるのが確定してる訳じゃないのよね。第二王子の派閥かどうかも分かんないみたいだし」
「眠たいなら、そろそろ寝た方がいいよ。別に無理に起きておく必要ないんだし」
「そう? じゃあ、寝る。おやすみー」
アレッサは眠たそうな顔をしながら会話をしていたのだが、限界だったらしく、ベッドに寝転がるとすぐに寝息を立て始めた。
綺麗にするのを忘れていたミクは、触手でそっと持ち上げて服を脱がせると、【清潔】と【聖潔】を使ってから服を着せて寝かせる。後は部屋全体に【浄滅】を使っておけば問題なし。
ミクもベッドに寝転がって目を閉じ、本体空間で物作りなどをして暇を潰すのだった。
◆◆◆
深夜。宿の外から何者かが侵入したのを感知したミクは、すぐに小さな蜘蛛の姿になり隙間から部屋の外に出る。そしていつもの蜘蛛の大きさになると、王女の部屋のドアの上で待機。
透明迷彩の状態になって待っていると、黒ずくめの集団が声を出す事もなく王女の部屋の前で止まる。なにやらハンドサインで会話をしているが、ミクは5人全員の首に触手を打ち込み麻痺毒を注入する。
痺れて身動きが出来なくなった者達を本体空間に転送し、先に送っておいたレティーに脳を食わせる。そこから判明したのは、門番と結託していた裏組織の情報だった。どうも子爵と関わりがあるらしい。
ミクは素早く部屋に戻ると、窓から外に出て裏組織のアジトへ。この町の娼館裏にある建物に入ると、一直線に一番奥の部屋に入り、中に居た3人を麻痺させる。その後は本体空間に送ってレティーに任せた。
裏組織の女ボスは子爵と関わりがあり、どうやら上納する事で危ない事も見逃されてきたようだ。完全にアウトなので裏組織の連中を喰うと、ミクは外に出てピーバードの姿で飛ぶ。
子爵の領都の情報はあるので屋敷の屋根に降り立ち、子爵の屋敷の2階の窓から侵入する。どうやら息子の部屋のようなのでスルーし、別の部屋の窓へ。
3つ目で当たりを引き、子爵とその妻を肉で包んで送る。レティーに調べさせた結果、王女暗殺の指示は間違いないとの事。どうも第二王子を産んだ側室の実家である、伯爵家からの命令らしい。
これで、狙われたのが第三王女である事が確定した。辺境伯家と伯爵家も敵に回しているが、第二王子の後ろ盾は理解しているのだろうか? それとも他にも後ろ盾は多い?。
子爵の息子は13歳と若いが、若いだけに犯罪を犯した訳でもないので、ミクは喰わずに帰る事にする。屋根の上でピーバードの姿になると、宿泊している町へと戻るのだった。
そこまで時間も掛からずに帰ってきたミクは、窓から部屋の中へと入るとベッドの上に寝転ぶ。目を閉じると再び朝まで暇潰しを行うのだった。
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朝日が昇る時間になったが、未だアレッサが起きないのでゆっくりしているミク。昨夜は子爵を喰ったので混乱している筈であり、子爵領でこれ以上襲われる事はないだろう。
問題の根本は解決していないが、そこは言っても始まらない。そもそも他国に嫁ぐか自国の貴族に嫁ぐかは知らないが、王城を出ていく第三王女を何故殺そうとするのか不明なのだ。
何度考えても分からないミクは思考を止めて、分体で適当に生命力などを感知して警戒するのだった。
「おはよう。……あれ? もう日が昇ってる!? もしかして寝坊した!?」
「おはよう。別に遅くはないから寝坊ではないね。まだ王女達は寝てるし、騎士達も起き始めたくらいだよ。まだまだ朝だからゆっくりしてて大丈夫。私達だけで出発を決められる訳じゃないし」
「そうだけど一応起きておく。今さら寝たって2度寝だし、今度は起こされちゃうからね。それなら起きてる方がよっぽどマシだよ」
他人に起こされて機嫌の良い者などいないのだから当然であろう。とりあえずミクは【浄滅】を使い、すっきり綺麗にするのだった。




