0133・第5エリアで合流
夕食も終わり解散したので、ミクとアレッサは宿の部屋へと戻る。イリュが2人部屋にしないのかミクに聞くも、ミクは眠る必要がないので床でも構わないのだ。それを聞いたイリュは、それでも言い訳の為に2人部屋にしろと反論。
1人部屋を一月だと1100ゼムだが、2人部屋を一月だと2300ゼム掛かるらしい。面倒になったミクは、小金貨1枚を放り「2人部屋を泊まれるだけ」と言った。
「小金貨は10000ゼムだから、2人部屋だと4ヶ月ちょっとだけど?」
「だったら4ヶ月でいいよ。どのみち小金貨なんてマッスルベアーかスチールディアーを1頭狩ってくれば稼げるし」
「まあ、確かにそうだけど……気にしないでおくわ。ミクの言ってる事は事実だし、それに1流の探索者って大抵そういうお金の使い方だからね。それで儲けるのも普通の店だから、こっちが悪い訳でもないし」
「高々800ゼムでしょ? お金が無かった頃ならまだしも、今は十分あるからね。それぐらい失っても大した損じゃないよ。小金貨も後90枚くらいあるし、無くなれば狩りに行けばいいだけ」
「なら、もうちょっと良い物を食べてよ。いっつも大銅貨1枚の大麦粥じゃない。ま、あれでいいんでしょうけど」
「あれが安定してるし、体にも良い物だからねえ。小麦のパンを食べる気は無いから、保存食の大麦パンぐらいかな? 私が食べるパンは。イリュが言うのも分かるから、明日からは多めに注文するよ」
「お願いねー、それと部屋はこっち」
イリュが新しい2人部屋に案内するのでミクとアレッサはついていく。新しい部屋は2人部屋だからか広く、今までとは違い椅子があった。2脚しかないものの、後はベッドに座ればある程度の人数は入れるだろう。
アレッサは早速ベッドに寝転がり寝始めたので、ミクは無理矢理に持ち上げて服を脱がせ、【清潔】と【聖潔】を使う。体から生やした触手でしているので呆れるイリュ。
「貴女も少しは「自分でするから」とか言いなさいよ。何で為されるがままなのよ?」
「お腹いっぱいで眠い……」
「子供か!!」
一つツッコんで納得したのか、イリュは部屋を出て行った。何がしたかったのか分からないミクは気にするのを止め、アレッサを綺麗にしたら最後に部屋に対して【浄滅】を使う。これは複合魔法なので綺麗になる効果もある。
というより邪なものや瘴気、更には病原菌や汚れなどを滅ぼす。つまり限界まで細かく分解してしまう魔法なのだ。ここまでの効果があるなら最高ランクなのも当然である。
ちなみにだがこの魔法、元来は儀式魔法であり一人で発動させるような魔法ではない。通常の魔法使いならば20人以上必要な魔法である。そして<ノーライフキング>が使った、【獄炎嵐】、【風神の息吹】、【蒸球爆】も同じ規模の魔法だ。
それが本来ならば使えたのだから、<ノーライフキング>は十分に怖れられるべき伝説のアンデッドである。ただ、ひたすらに相手が悪かっただけなのだ。あまりにも相手が悪かった為に、出オチキャラとして終了してしまった。
悲しい存在ではあれど、誰も同情しなければ可哀想とも思わない。その程度のヤツである。
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明けて翌日。日が昇ると共に起きたアレッサ。そしてミクも起き上がり挨拶すると、食堂へと移動する。昨日の事を覚えていたので大銅貨6枚を支払い、ちょっと豪勢に食事をした。相変わらずメインは大麦粥だったが。
朝からの食事も終わりトイレも済ませ、イリュに武器を預けたミクとアレッサは出発する。中央区のダンジョンまで到着すると、すぐに第4エリアへのショートカット魔法陣に乗りダンジョンへ。
第4エリアの攻略を開始するのだが、朝早い為に人は少ないので、今の内に【身体強化】を使い一気に走る。強化中は殆ど疲れもしないので進み、2時間かからずボス部屋前までやってきた。
2人は休憩もせずにボス部屋に突入、ツインヘッドフレイム5頭との戦闘を開始。
結果だけを言うと、2分掛からずボスは全滅し、惨劇の様相を呈している。
体が潰れている死体や、胴体が半裂きにされ臓物をブチ撒けている死体があり、そんな部屋の中で美女と美少女がつまらなさそうに佇む。それが今のボス部屋内の現状だ。
「相変わらず弱いねぇ。もうちょっとマシにはならないのかな、こいつらは?」
「それでも今までよりはマシなんでしょうね、普通は。わたしなら半裂きだし、ミクなら潰すし。どのみち相手にならなさ過ぎるわよ。ゴールダームのダンジョンは世界一難しいって言われてるけど、本当かな?」
「世界一広いから、難しさとしては世界一なんじゃないの? ボスが強いとは言ってないし」
「面倒臭いだけかー……」
何処かの怪物とヴァンパイアモドキが異常なだけである。この2人を基準にダンジョンを作ると、この2人とシャル以外は攻略不能になるだろう。少しは普通の探索者の事も考えてほしいものだ。
攻略の終わった2人は牙と爪だけ回収し、後は放置して脱出。そしてすぐに第5エリアへのショートカット魔法陣に乗り転移していく。
第5エリアに着いた2人は【身体強化】をして走っていき、一気に進んで行くも、シャル達を発見できなかった。地図自体はミクが覚えている為、5階以降はミクの案内に従って進んで行く。
「本体空間に運んで、後はピーバードの姿で飛んで行っても良いんだけどね。それをするとマッスルベアーとスチールディアーを完全に無視する事になるのよ」
「それが? ……お金持ってるんだし、別に無視して問題なくない?」
「いやいや、アレッサのランクの事もあるでしょうが。ある程度は狩りの獲物を売ってランクを上げておかないと、面倒な連中が絡んでくるかもしれないでしょ」
「ああ、そういう事。ここのマッスルベアーとスチールディアーは高値で売れて、ランクの査定も大きいんだっけ?」
「というより、常設依頼として出ている獲物だから、持って帰って売るだけで依頼を達成した事になる。多少のお金は貰えるけど、それより依頼達成回数に加算されるのが大きい」
「それで狩って行くって言った訳か。まあ、わたしが狩れば良いんでしょうし、熊と鹿じゃ相手にならないけどね!」
アレッサは魔物が見つかれば首を断ち切り、レティーが血抜きをしてミクのアイテムバッグに収納していく。それらを繰り返しつつ進み、8階においてシャル達一行に追いついた。
起伏の激しい山を登り下りしたからだろう、「ハァハァ」言っている連中が大半だ。言っていないのはシャルとカルティクぐらいである。
「私は第3エリアの巡回とかしてるからね。そこまで体力を使わない歩き方は出来るのよ。それと足音をなるべく減らす歩き方ね。これ自体は癖になっちゃってるから今さらだけど」
「そういうのは普通、癖になるまで反復して練習するもんさ。あたしだって似たような歩き方だしねえ。しっかし、その程度の基本も出来てないんじゃ、この先も大変だろうさ」
「まだ8階だものねえ。ボス部屋前まで行ったら大休止をとらないと、まともにボスと戦えないわ。ミクとアレッサの方はどうだったの?」
「楽しくなかった! ボス戦に掛かったのは2分くらい」
「2人なら、そんなもんだろうさ。どうせミクが潰して………あんたはどうしたんだい?」
「このウォーアックスで胴体を半裂きにしてやったわよ? 臓物ブチ撒けて死んだのが2頭で終わり。3頭めはミクに潰されてた」
「「「「「「「「「………」」」」」」」」」
ツインヘッドフレイムよ安らかに。<鮮烈の色>だけは彼らの冥福を祈った。




