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0122・黒の墓石




 夕食も話も終わったのでミクが部屋に戻ろうとすると、イリュがエルフィンまでの地図を渡してきた。ミクは感謝しつつ受け取ると、さっさと本体へと転送して部屋に戻る。


 部屋に戻ったミクは鍵を掛け、荷物とレティーを転送すると、いつの間にか降りだした雨の中へと飛び出す。蜘蛛の姿で屋根に上り、その後はピーバードの姿で一気に飛翔。東へと飛んでいった。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 途中の村や町を眼下に見つつ、ミクはエルフィン樹王国の王都ユグルに到着した。まずは連中の裏に居た侯爵の屋敷だが、それは喰った連中の脳の中に存在した為、すぐに屋敷の屋根に移動する。


 そこから蜘蛛になって侵入するのだが、体は透明トカゲの皮膚に変えており、周囲の風景に同化して見えない。ミクも本体空間で調べたが、見えないという一点だけでは相当に優秀であった。


 そんな見えない小さな蜘蛛になったミクは大胆に行動し、素早く侯爵家の家族全てを喰らい尽くした。レティーに脳を調べてもらった結果、やはり王の関与が確認できたので王城へ。


 樹王国と言い、森の中に王都がある癖に、城は石造りの要塞のように作ってある。人工物丸出しの城に侵入しつつ、エルフって本当に体面だけだなと呆れるミク。森感が欠片も無いのだから、呆れもするだろう。


 そんな石造りの普通の城の中を進み、おそらくは一番上の階の一番奥だろうと当たりをつける。そのまま進んで行き、一番奥の部屋の近くまで来たが、ミクはそこで奇妙な臭いを嗅ぐ。



 (兵士か騎士が部屋の前に立っているから、あそこが王の部屋なんだろうけど……あいつらからは生命力を感じないし、漂ってくるのは死臭だ。そして瘴気を感じるって事はアンデッドで間違い無い。まさか王の寝室を守るのがアンデッドとはね)



 流石にコレはどうなんだと思うが、常に起き続けていられるし命令には忠実だ。それは事実なのだが……こいつらは人間種の中でも狂ってるんだろうなー、と一応解釈したミク。それは正しい。


 そもそも寝室を守る為とはいえ、アンデッドに守らせるというのは普通の人間種の発想ではない。ミクは可能な限りギリギリの魔力量で、神からブチ込まれた【浄化魔法】の一つである【神聖葬】を発動。一瞬で塵に還した。


 魔力は感知されたかもしれないが、代わりに邪魔な連中は音も無く消えた。アンデッドの装備品は残って落ちる筈だが、ミクが触手で受け止めて転送しているので音はしていない。


 ミクは素早く自分が入れる隙間だけを開けて部屋に侵入。暢気に寝ている王と思われる人物を喰らった。後は逃走するだけなので一気に部屋の外に出ると、王城の中を移動していく。


 レティーに脳を食わせて発覚したが、先ほどベッドで寝ていたのは影武者で、本人は後宮の側室の所に居るのが判明した。まさか本人じゃないとは思わなかったが、今度は後宮に行けば済むだけである。


 ミクは脳から得られた情報通りの場所に行き、王と側室の両方を喰らった。そこで3男4女の子供が居る事が分かったものの、迷った挙句、喰うのを止めて脱出する事を選んだ。


 少し城内が慌ただしくなってきているのだが、おそらくミクの魔法の発動が気付かれたからだろう。これ以上色々喰っていると、流石に明るみに出てしまう恐れがある。それにエルフィンという国をパニックに陥れたい訳でもない。


 なので撤退する事になったのだが、王都の一角で急に瘴気が膨れ上がった。あからさま過ぎるので挑発か何かだろうが、ミクは構わず行ってみる事に。もしイリュの情報通りならリッチが居る筈である。



 (私に対抗するには足りないけど、こっちに喧嘩を売るように瘴気を撒いたからね。バカで低脳な奴に付き合ってやるとしようか)



 ミクは王都の中にある瘴気が膨れ上がった一角へと行く。すると、その建物はスラムと思われる場所にあり、周囲にゴロツキらしき連中が居た。ミクは散々迷った挙句、オークの姿で突入する事を決める。



 (流石にこの姿なら私の事を理解できる奴もいないでしょ。私の女性体さえ知られないなら何でもいいんだけど、ゴブリンだと体が小さくて戦い難いんだよね。それに力がある魔物じゃないし)



 力があるならオーガなんだけど、あいつは体が大き過ぎるからね。などと思いつつ、オークになったミクは<黒の墓石>のアジトらしき建物に走りこむ。


 手近なゴロツキをブン殴り、持っていた剣を拾ったら別のゴロツキに叩きつける。その際は技術など見せず、力任せに叩きつけるように使う。これならオークっぽいだろうとミクは思っているが、そもそも町中にオークが出るという不自然さは無視したようだ。



 「おい! オークが襲ってきたぞ! 何故か一体だけだが油断すんな! 既に2人殺らぐあっ!?」


 「クソッ! 何だこいつは!? そもそもスラムとはいえ、何で町中にオークが出てくるんだよ!?」


 「グヒヒヒヒ♪」



 ゴロツキが騒いでいる間にも次々と殺戮していき、建物の外の奴等を全員殺したら中へと入る。すると入り口の向こう側から、一斉に魔法が飛んできた。


 慌てて横っ飛びでかわしたものの、素早く移動しつつ建物の奥へと走って行くミク。流石に建物の中へと魔法は使えまい。そう思ったのだが、敵は気にする事もなくミクに魔法を放ってくる。



 (こいつら自分達のアジトなのに壊しても……って、ゾンビ!! こいつら魔法使いのゾンビなうえ、全部エルフのゾンビじゃない!)



 慌てて素早く接近し、頭をブン殴って潰していく。8体いたゾンビの頭を全て潰すと、ようやく魔法が止む。命令通りに魔法を撃つだけの固定砲台。まさにそういう存在であった。



 (こういうアンデッドの使い方である以上、リッチなのは確定だ。あいつらはヴァンパイアと違って、アンデッドを支配下に置く事を得意としている。ヴァンパイアはむしろ怪力と修復力、そして血を使う事に長けているアンデッドだからね)



 <黒の墓石>のトップをリッチだと見定めたミクは、建物の地下にある瘴気の反応に近付くため、魔力を地下に対して放つ。その結果、建物の一角に空洞を発見。その辺りを詳しく調べ、地下ヘの階段を発見した。


 階段を下りていき、真っ直ぐ進んだ先の扉を開けると、中から魔法が飛んできたので腕をクロスして防ぐ。皮膚が焼け爛れたものの、気にせず元凶を睨みつけるミク。



 「ほう。高がオークの分際で私の<豪炎球>で死なぬとは、やるではないか。褒めて……うん? こやつが気になるのか? クククククク、唯のバカな小娘よ。滅んだ己の主を復活させたかったらしいぞ? なあ?」


 「……え……し、て……る」


 「心臓をくり貫かれて奪われても、まだ生きているのか!? クソ蟲どものようなしつこさだぞ! 高位のヴァンパイアにあるまじき姿に、お前の主も草葉の陰で泣いておろうな。うはははははは!!」



 ミクは胸をくり貫かれて滅びかけているヴァンパイアの少女を、本体空間へと転送した。右腕を肉塊にしたのを見たリッチは、ミクを睨みつけて警戒する。



 「キサマ、オークではないな? 死にぞこないを何処にやったのかは知らぬが、まあいい。既にあんなものは用済みだ。あのヴァンパイアは実力は無いものの高位でな、その心臓を含めた血肉の御蔭で、私はついに至れたのだよ。<ノーライフキング>へと!!!」


 「ブフゥ………」



 これみよがしに溜息を吐きつつ、「やれやれ……」というポーズをとりながら、目の前の赤黒い骨を見下すミク。



 「キサマ……! 何者か知らぬが覚悟せよ!! アンデッドの頂点たる<ノーライフキング>の最初の生贄に選んでやる! 感涙に咽びながら死ね!!!」


 「グッグッグッグッグッ♪」



 あいつバカじゃね? という感じで、見下しながら<ノーライフキング>を笑うミク。


 それを見て完全にブチギレたのだろう。<ノーライフキング>は【火魔法】の最高クラスである【獄炎嵐】をミクに向かって放つのだった。


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