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0121・雑談とアンデッドの話




 「やっと、夕食が食べられるわ。………で、今日はどうだったの? 2人が何をしてたか知らないけど」


 「あたしは第4エリアで牛を狩ってたね。あそこミクと攻略してからあまり行ってなかったし、第5エリアの山と違って平原だから戦いやすいんだよ。御蔭でそれなりには稼げたね」


 「ふーん……第4エリアって確かランサーブルとか出てくるところよね? まあ、シャルならあっさり倒せるか。第5エリアのマッスルベアーやスチールディアーも倒せるんだし。それでミクは?」


 「私は第5エリアを攻略してきた」


 「「「ぶっ!!」」」



 3人はビックリして少し吹き出してまったが、ミクはスルー。自分には当たってないのでどうでもよかった。それよりも吹き出すような事かな? と思っている。



 「吹き出すような事でしょう! 今まで誰も突破出来なかった第5エリアを突破したのよ!! 快挙であり偉業……って、ミクだから突破できて当然かー」


 「……そういえばそうね。最強の怪物の邪魔を誰ができるって言うのかしら? そう考えれば障害なんてある訳が無いわ。むしろ第10エリアまで行くでしょうね、確実に」


 「まあ、それはともかくとして、誰も突破出来なかった50階のボスはどうだった? 強かったのか、それとも弱かったのか。もしかしたら厄介なタイプかい?」


 「厄介なタイプで当たりだね。目で見えないというか、皮が周囲の風景と同じ色になるトカゲみたいなヤツだったよ。目で見ようとしても無理で、【気配察知】や【魔力感知】を使わなきゃ特定は難しいね」


 「見えない……かー。そりゃ厄介だねえ。おそらく精神はあるだろうから、アタシの【精神感知】でも調べられるだろう。とはいえスキルが無ければ戦えないってのは辛いねえ」


 「解体所の親方であるウィルドンも言ってたけど、臭いとか音は消せない。だからそっちの方から探れるとは思うんだけど……50階のボスは出現してから1匹が殺されるまで、一切動かなかったのよ」


 「動かないって事は音も殆どしないわね。なら、残るのは臭いくらい? 本当にスキルが無いと厳しい相手ねえ」


 「長い舌を伸ばして攻撃してくるし、正確に心臓を狙ってくる。更には私が吹き飛ばされる程度の威力はあるよ。一応ラーディオンにはシャルとカルティク、そして<竜の牙>と<鮮烈の色>を推薦しておいた」


 「何してくれてんのさ!? もし攻略するとしたってミクと行くよ、あたしは!」


 「私だってそうよ! ミクが居ないと死亡確率が上がるじゃないの!」


 「あんた達ねー。情けないと思わないの、そのセリフ? 言いたい事も気持ちも分かるけど、それは言っちゃいけない一言でしょ。口閉じて黙ってなさい」


 「別に何の問題も無いね。そもそもここには気心の知れた者しか居ないんだよ? だったら言ったって問題ない筈さ。それに誰も突破できなかったボスなんだ、舐めていい相手でも軽く見ていい相手でもない」


 「そうよ。それに私は普通なの! <鮮血の女王>や<雪原の餓狼>と一緒にしないでほしいわ。あくまでもイリュディナのおまけで不老になっただけで、身体能力も何も変わってないの」


 「ああ。シャルは私やワイバーンの肉で変わったからね。何ならカルティクも変えてあげようか?」


 「心の底から遠慮するわ。怖すぎるもの」


 「いやいや<影刃>。あんたもこっちに来なよ。どうせ不老なんだし、変わらないからさ。ちょっと身体能力が跳ね上がって、体の使い方を一から学ばなきゃいけないくらいでしかない」


 「しかないって何よ、十分おかしいでしょ。体の使い方を一から学ぶって、子供じゃあるまい、し………本当に?」


 「本当に。足を出す動きを今まで通りにすると、大股開きで歩く事になるよ。力のセーブを身に付けなきゃ大変だけど、その辺りは割とすぐに慣れるかな? そこまで劇的に変わる訳じゃないしね」


 「………んー、やっぱり遠慮するわ。死にかけてもいないし、ミクを怒らせた訳でもないのに、体が変わるのはねえ……」


 「まあ、そうだろうさ。死にかけたら遠慮なく言うだろうけど、死にかけでもしない限りは………バカ以外は言わないよ。どっかの国の不老を求めるバカども以外はさ?」


 「居るわねえ。そいつらなら喜んで肉体を変えてくれとか言いそう。<隷属の紋章>を使われるとも知らず」


 「ああいうバカはいつの時代にも居るし、今に始まった事じゃないでしょ。歴史書にだって書かれている事よ。不老になる為にマンドラゴラを求めて引き抜いたとか、ドラゴンの糞を煎じて飲んだとか」


 「ドラゴンの糞って効くの?」


 「効くわけないでしょ! 唯のウ○コよ、ウ○コ!!」


 「<鮮血の女王>が下品な言葉を連呼するのも、ある意味では驚きの光景だね? 昔のあたしに言ったって信じないだろうさ」


 「あらやだ、ごめんなさい」


 「まあ、不老っていうのは見果てぬ夢な訳よ、人間種にとっては。でもねー、記録に残ってるのは短命種の記録ばかりなの。まさか長命種のエルフが不老を求めるとは……」


 「でも、あの国は古くからキナ臭い噂が絶えないから、何かがあるのかもしれないよ? 昔はアンデッドの研究をしてるなんて噂があったくらいさ。それも不老の為の研究だったのなら、事実かもしれないねえ」


 「アンデッドはアンデッド、決して生者ではないんだけど……。狂った連中には分からないのかしら? あれらは自分の体を維持する為に、生者を喰らうだけの存在。中位アンデッドなら自我も残ってるでしょうけど……」


 「高位アンデッドなら自我もあるし、自分で考えて動ける。でも、あいつらも結局は生者を喰わないと体が崩壊する事に変わりはない。リッチとかヴァンパイア・ロードがそこに分類されるけど、滅多に居ないねえ」


 「あれらは表に出てきたりしないもの。もしかしたら闇ギルドを率いている可能性もあるわね。食い物を手に入れるには便利な立場だもの、何処かの国はアンデッドの研究をしていたみたいだし」


 「……もしかして、イリュは何か知ってんのかい?」


 「まあ、多少の噂話はね。どのみちミクがどうするかであって、私がどうこうとは言えないわ。それを前提として聞いてほしいんだけど、エルフィンには<黒の墓石>という闇ギルドがあって、そこのボスが黒いローブを常に被っている人物だとは聞いてるの」


 「常に黒いローブねえ。怪しい人物を演じてんのか、体を表に出せないのか……」


 「近付いた事のあるヤツは、死臭がするとも言っていたそうよ。それだけじゃヴァンパイアかリッチか分からないんだけど、妙に足音が軽いそうだという話も合わせると……」


 「ヴァンパイアじゃないわね、あれらは肉を持ってるもの。なら消去法でリッチという事になるけど……アンデッドならって事でしょ?」


 「まあね。とはいえ、<黒の墓石>の情報は変わってないのよ。あくまでも向こうの闇ギルドだし、ゴールダームには進出してきていない。私が居るからかもしれないけど」


 「そりゃ<鮮血の女王>が居たら来ないだろうさ。本気でやりあったら絶対に勝つだろうに。あたしがリッチでも喧嘩は売らないね」


 「ミクがどうするかは知らないけど………何故か殺る気満々ね?」


 「そいつらがアンデッドなら、文句なく私が処分していい相手だからね。少しは歯応えがあると良いんだけど」


 「「「………」」」



 歯応え………無いんだろうなー、と思う3人。そして、どうせ期待するだけ無駄だろうと思うミク。


 ヴァンパイアかリッチ。どちらにしたところで、肉塊の相手には足りなさ過ぎると言わねばならない。その程度の存在である。


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