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0119・第5エリア突破




 ミクはこの階に誰も人間種が居ない事を確認すると、荷物とレティーを転送してピーバードに姿を変えて飛び上がる。本体が地図を描いている為、気にせず飛び回り上から見下ろして調べていく。


 すぐに下への階段を発見したが、そこは5階への階段の南にあり、随分と下った場所にあった。本体は簡易的な地図と同時に詳細な地図も描き、それを描き終わったら分体は階段を下る。


 6階に着いたら再び同じように空を飛び、全体を俯瞰して地図を描いていく。次は北東の高い場所にあった。相当登らねばならず、体力の消耗は大きいだろうと思われる。


 ある程度を飛び回り2種類の地図を描いたら7階へ。そうやって進んでいき50階。ボス部屋前で美女の姿に戻り服を着ていくミク。レティーも既に転送していた。



 『もうボス部屋前ですか。地図を描いていたのに早いですね。やはり飛んでいたからこそ、簡単に分かるのでしょうか?』


 「まあね。上から見下ろす形だったからさ、相当簡単に分かったよ。色んな意味で、地図を作る際はピーバードの姿が良いね。今日の夜はエルフの国を強襲するし、鳥の姿は便利だよ」


 『そういえばエルフの国の王の殺害ですけど、結構な混乱が予想されますが……本当に良いのですか? 話に聞く<根源の神>という方々はお怒りにならないでしょうが、<星の神>という方々は……』


 「文句言ったり出張ってきたら私が喰えばいいだけだよ。そもそも私を創った神ども、つまり<根源の神>は認めてる。<星の神>すら喰らう事をね。私とすれば、むしろ喰われに来いって感じだねえ」


 『神を喰う。何だか大丈夫かな? と心配になりますが。相手は普通の存在ではない訳ですし、神という存在を果たして本当に喰えるのか、喰って平気なのかは分かっていないみたいですし……』


 「ま、大丈夫、大丈夫。駄目なら<根源の神>どもが創った私は、その程度の存在でしかないって事だよ。それで終わる話だし、特にどうこうは無いかなぁ……」


 『………』


 「さて、そろそろ行こう。50階のボスがどんなのか知らないけど、私の敵じゃないんだろうなー。せめて多少は戦えると……無理か。期待するだけ無駄だね」



 そう呟きながらミクがボス部屋に入ると、目の前には森が見える。木々で視界は防がれ、見通しが非常に悪い中、大きな魔法陣が輝いて何かが出現した。


 ミクが気配や魔力に生命力を感知すると、何かの生き物が10匹ほど召喚されたのが分かった。森の中から出てくる気配が無い為、仕方なくミクは武器を構えて突入する。


 右手にククリナイフ、左手に大型のナイフを持ち、森の中の最も近い反応へと一気に近づいていく。


 ミクの感知では目の前5メートルの所に居る筈が、ミクの視覚では認識できなかった。「何かが居る筈なんだけど?」。そう思っていると、突然心臓の位置に攻撃を受けて吹き飛ばされる。


 ワイバーン皮の鎧なので貫かれる事は無かったが、いきなりの攻撃で慌てるミク。更に空気の動く音がして、立ち上がろうとしたミクは吹き飛ばされた。


 いったい何の攻撃を受けているのか分からないが、ミクは木の後ろに退避して様子を見る。2度目も心臓狙いで攻撃された以上、向こうは正確に人間種の弱点を認識していると考えていい筈だ。



 「いったい何処から攻撃を受けた? 何も見えていないにも関わらず反応だけは今もある。正しくは反応が動いていない。10の反応が全て動かないというのもおかしな話」


 『主が見えないぐらいです、動かない事も何か関係しているのかもしれません』


 「成る程。動かない間だけ見えないという特殊能力持ち、その可能性は無い訳じゃない。となると……」



 ミクは木々の間をすり抜けつつ、先ほどの反応に近付いていく。そして木を盾にして右手を出し、白い骨杭を発射した。ちなみにエルフの時に発射したのもコレで、既に杭の全ては回収してある。


 ミクが使う骨杭は強度が高すぎるので、迂闊に捨てる訳にもいかないのだ。強力な暗殺武器として使用されかねない。


 ミクが射出した骨杭は見えない何かに直撃し、その生き物の悲鳴を轟かせた。



 「ギィィィィィ!!!」



 相当の痛みなのだろう、暴れているのが極僅かに見えた。景色の見え方がおかしく、どうやら何かは風景に溶け込んでいるらしい事が分かる。それさえ分かれば簡単であり、ミクはその生物の首と思わしき箇所にククリナイフを一閃した。


 その一撃は狙いを過たずに切り裂いたらしく、首が落ちると共に姿が現れた。トカゲのような生物だが、舌が異様に長いのが見て取れる。とある惑星の者ならば、カメレオンというだろう。



 「このトカゲっぽいのがボスなんだろうけど、動かないと視認できないのは厄介だね。動いても生きている間は見え辛いし、更にはこの舌で攻撃してきたんだろうけど、なかなかの威力だったよ」


 『主が吹き飛ばされましたからね。私もアイテムバッグにしがみ付いてましたけど、驚きました』


 「1匹殺られたからって慌てて動き出したみたい。既にどういう戦い方をするか、その手口はバレてるんだけどね。後はマヌケな連中を処理するだけだし、さっさと殺ってしまおうか」



 ミクは最初の1匹を喰い荒らした。なぜかと言えば<見えない能力>を解析したかったからだ。そして本体が喰らい即座に解析。同じ能力を持つ事を可能にした。


 今日の夜はエルフィン樹王国に暗殺に行くが、幸先の良い事である。


 一度手品のタネが割れれば後は簡単で、ミクは槍に切り替えてから木を盾にして戦い始めた。舌の威力は木を圧し折るほどに高いが、当たらなければどうという事は無い。


 相手の攻撃を木で防ぎ、あるいは石をぶつける事で怯ませ、その隙に槍を差し込んで殺害。気配か魔力が探れれば胴体の位置は分かるので、後はそこに攻撃すればいい。


 もしくはミクのように攻撃の開始地点から口の場所を割り出し、首を貫いて殺しても良いだろう。攻略法さえ分かれば、そこまで難しくないボスだ。突破だけなら魔法を使えば勝てる。


 ミクも【風弾】の魔法を当ててみたが、隠れる能力が高いだけで魔法に対する抵抗力は低かった。なので魔法で十分なダメージを与えられる。更には皮の防御力も低く、総じて隠れる能力だけのボスだと言えるだろう。


 気をつけなければいけないのは、地味に威力の高い舌攻撃だけだ。しかも貫通ではなく打撃系なので厄介ではあるが、それ以外に気をつけなければいけない攻撃が無い。


 結局はその程度としか言えないボスであった。



 『血の栄養も量も普通でしかありませんし、大したボスではなかったようです。見えない能力は凄いですが、終わってみればそれだけですね』


 「そうだけど、死んでも使えるか……。死体に魔力を流すと消えてるから、消える能力は皮と魔力みたいだね。もしかしたら他にも理由があるのかもしれないけど、これで体を包むと隠れられるかも」


 『裏組織や闇ギルドが喜びそうな素材ですね。解体所に出す前にギルドマスターに相談した方が良いのでは?』


 「だね。ラーディオンなら流石にマズいのは分かるだろうし、解体所の親方も口は堅そうだから大丈夫かな? 他は……止めた方が良いね。なるべく情報を持つ人数は少ない方がいい」


 『ですね。っと、壁が開いた音がしましたよ』


 「そうだね。血抜きと収納もそろそろ終わるし、それが終わったらさっさと出よう。わざわざ長居する必要も無いし、何も無さそうだしね。……あっ、そうだ。ワイバーンの骨以外の全ての骨は捨てておこう。邪魔だし」


 『射出武器としてもワイバーンの骨が一番良いですし、主は回収しますから減りませんしね』



 ミクは右腕を肉塊にし、大量の骨を捨ててからダンジョンを出るのだった。不法投棄の気もするが、どうせダンジョンに吸収されるだけである。


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