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0117・エルフという生物




 「ぐう……我ら裏でも上位の者が、こうして簡単に敗れるとは。お前はいったい何者だ、せめて死ぬ前に教えてくれないか?」


 「まだ何か考えているようだが、無駄だ人間種。私をイリュと同じ程度に考えているとは愚かに過ぎる。お前達程度にどうにかされるほど、私は脆弱ではないのだよ」



 そう言った瞬間、ミクは肉の塊に変貌し動けないエルフを貪り始めた。リーダー格の男が喋っていたのだが、あまりの異常事態に唖然としている。そしてその間にも貪り食われるエルフ。


 30人程は居たが、既に半分ほど喰われてしまっている。そのタイミングでようやく正気を取り戻したリーダー格は、慌ててイリュに命令を行う。



 「<鮮血の女王>! いや、イリュディナ、起きろ!! 起きてあのバケモノを殺せ!! カルティク、貴様も起きてバケモノを殺せぇ!!!」



 男がそう命じるとイリュとカルティクは起きたものの、何故かキョトンとしていた。目の前に居るのがミクだと分かっているうえ、特に動く様子も無い。



 「イリュディナ! カルティク! 早くそのバケモノを殺せ!!!」


 「貴方いったい誰に命令してるか理解してるの? っていうか私の名を呼ぶな、不愉快だ」


 「あれ? 私達は<選ばれし民>とかいう気持ち悪い奴等の拠点に来て………そしてどうなったんだっけ?」


 「こいつらは<魔導強絶機>とかいう、魔力を放出できなくなる魔道具を使ったらしい。その結果、2人は気絶してしまったようだな。どうも魔力側の存在である事が影響しているようだ」


 「成る程、魔力を………エルフ如きがやってくれるわね。それよりコイツは何故私達の名前を呼んでたの? しかも命令してきて不愉快なんだけど」


 「それはお前達2人の首に<奴隷の首輪>を着けているからだ。だからお前達2人を使って、私を何とかしようとしたのだよ。実に下らない事でしかないがな」


 「あらら~。それは怖ろしくマヌケね。私でさえ勝てない怪物相手に、私やカルティクをぶつけてもねえ……喰われて終わりでしょ? 本当にエルフというゴミは無様で哀れでしかないわ」



 既にリーダー格の男以外は喰われてしまい、この男しか残っていない。そしてミクも元の美女の姿に戻っている。……下着姿だが。


 嘆息しながら話すイリュディナに対し、怒り心頭に発したリーダー格の男は喚く。



 「くそぉ!! 何故だ!? イリュディナ、カルティク!! そのバケモノを殺せ!!!」


 「こいつもしかして、まだ私達が<奴隷の首輪>の支配下にあると思ってるの? 幾らなんでも状況を見れば分かるでしょうに」


 「私達しか縋るものが無いんでしょ? ミクの圧倒的なバケモノ姿を見たら、私達ならどうにか出来ると思って縋るのも仕方ないんでしょうね。無様で哀れでしかないけど」


 「くそっ!! 何故だ! 何故!!!」


 「そんなもの、私が2人を縛りつける擬似的な呪いを喰い荒らしたからに決まってるでしょ。私は<喰らうもの>。ありとあらゆる全てを喰らい尽くす者であり、神どもに創りだされた存在」


 「は? …………神、に?」


 「そうよ、お前達みたいなゴミを喰い荒らせと命じられた最強の怪物。それこそが、お前達を襲った者の正体。敵に回れば喰い尽くされるしかない。良かったわね、敵認定されたわよ?」


 「……バ、バカな………!」


 「バカはお前達だし、心配しなくていい。お前達に命じた侯爵も、その後ろに居る王も喰ってくるから。良かったね? 上に居るゴミどもが居なくなるよ。エルフだから寿命が長くて邪魔だったんでしょう?」


 「くそ!! うごけ! うごけ!! うごけぇ!!!!」


 「無駄でしょ。ミクに両腕両足を貫かれてるみたいだし、どうやってその腕と足を動かすの? お前は既に詰んでるって、お前自身でさえ分かってるでしょうに」


 「うぁぁぁぁぁーーーーー!!!!!」


 「叫んだらどうにかなるなら、誰も死なないし苦労しないのよ? 既に敵認定されている以上、取り返しはつかないのにねえ。普段は他の種族を見下してる癖に、本当に醜い生き物だこと」


 「こいつは上の連中の事を醜いって言ってたけど、エルフ全体が醜いとは理解してなかったみたいだねえ。たとえ<星の神>がやった事とはいえ、不老という神の業の一端を盗もうなんてマヌケもいいところ。そのことすら理解していない」


 「ああ、ミクの事で慌ててるけど、そもそもの目的はそれだった訳ね。通りで私達を捕まえる筈。敵対なら殺してないとおかしいのに、それはしてないから変だと思ったのよ。不老の秘密を探るだなんて、バカ丸出しじゃない」


 「本当にね。あまりにもマヌケすぎて、なんと言えばいいのかすら分からないわ。寿命の短い人間や獣人ならまだしも、特別寿命の長いエルフがやるなんてね。長く生きる分だけ、欲塗れなのかしら?」


 「くそぉっ! 貴様らぁ!! 貴様ら如きが我らエルフを見下すな!!」


 「結局エルフってコレなのよね。長生きなだけで他種族を見下す野蛮な生き物。まるで自分達が賢者や知恵者かのように誤解している無様で哀れな野蛮人。いえ、野蛮すぎるからケダモノが正しいわね」


 「うがぁぁぁぁ!!!!」


 「あら、まともな言葉も話せなくなってるじゃない。やーねー、これだから野蛮なケダモノは嫌だわー」


 「容赦ないわね、イリュディナ。それよりミク、私達は何もしてないから放ってるけど、何でコイツを生かしてるの? 食べれば良いと思うんだけど、何か狙いでもあったりする?」


 「いや、イリュとカルティクの首に<奴隷の首輪>が着いてるじゃない? それ、イリュとカルティクとの繋がりを喰っただけで、普通に使えるのよ。だからそれ着けて話を聞いたら良いんじゃないかと思ってね。後で情報のすり合わせをすればいいし」


 「ああ、成る程。ミクが喰った奴等は脳から知識を引きずり出してるし、後はコイツ………だけど、コイツも喰えばいいのに。置いておく必要があるの?」


 「こいつに放った杭だけ小さくて細いの。だから死ぬような傷じゃないし、単に動けなくしただけ。情報を吸い上げたら王都守備兵に渡すべきじゃない? 表に出した方がダメージ大きそうだし」


 「うーん………それは止めた方が良いわね。こいつから尋問はするけど、その後はミクに食べてもらって終わり。それが一番良いわ。ミクはエルフィンに行って喰うんでしょ? となるとゴールダーム王国としては寝耳に水の方が良いと思うの」


 「確かにそうね。捕まってる奴で交渉しようとしたら、王が暗殺された。その状況だと、ゴールダームが一番怪しいという事になってしまうわ。本当に知らないなら、エルフィンに残された連中も理解するでしょう。私達か、その近くからの報復だと」


 「私を敵に回したのだから、殺される覚悟があったのでしょう? という事になるからね。今回は派手に失敗しちゃったけど、そういう風に取り戻せるから私にとってもありがたい作戦よ」


 「なら、そうしようか。宿の従業員も全員無事みたいだけど、私の本質に固まってたから、後はお願い」


 「心配しなくても、ウチの従業員に裏切る者は居ないし、ましてや最強無敵の怪物の敵に回りたい者なんて居ないわよ。ねえ?」


 「「「「「「「「「「………(コクコク)」」」」」」」」」」



 顔を上下させる機械のようになっているが、よほど怖ろしくおぞましかったのだろう。全員の股座が濡れているうえ、一部には吐瀉物が落ちている。吐いてしまったらしいが、スラムの廃屋だから問題はあるまい。


 全員が縄を外された後、廃屋から出て宿へと戻る。既にミクはいつもの姿であり、アイテムバッグの上にレティーも居る。実はコッソリと<魔導強絶機>を回収しており、今は本体が解析中だ。


 その解析が終わるのを楽しみにしつつ、既に朝日が昇ってしまっている中、帰路に着く。


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