0116・妖精というモノ
ミクは夕食後、さっさと部屋に戻って夜になるまで待つ。
辺りが暗くなり夜になると、ミクはアイテムバッグとレティーを転送し、蜘蛛の姿で窓から出る。その後、屋根の上に上ってピーバードの姿になると、一気に王都フィラー近くのダンジョンに移動していくのだった。
ミクが飛び立つ前、屋根の下では宿の従業員達が襲撃の準備をしていたが、気合い十分という感じだったので心配は必要ないと判断したミク。フラグは折れたのだろうか?。
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ここはフィグレイオ獣王国の王都、その近くにあるダンジョン。そこに一羽のピーバードが降り立つと、即座にその姿がオークに変わる。
(周囲に人間種の気配も魔力も生命力も感じないね。王都がどうなったかは興味ないし、さっさとワイバーン狩りを始めよう)
ミクは61階のショートカット魔法陣に乗り、ワイバーン目指して全力で移動していく。その余波で砂が巻き上げられて吹き飛んでいくが、その衝撃波を発生させている元凶は一切頓着していない。
そしてボス部屋前。休憩も何もせずに中へ入ったオークは、出現直後のワイバーンの首を肉塊にした右腕で貪り喰う。その一撃でボスは死亡し、出口の壁が開いた。
1分も経たずに勝利した怪物は、ワイバーンの死体を回収して脱出の魔法陣へ。そして2週目を即座に始める。
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……現在22戦目。出てきたワイバーンの首は鋭利な触手で刎ねられ、その一撃で死亡した。ミクが色々やってみた結果、コレが一番労力が少なくて早かったのだ。
徹底的なまでに効率化されたワイバーン戦。それはもはや戦闘とは呼べず、唯の屠殺でしかなかった。
22戦目の終了後、ミクは流石にもういいだろうという事で、ピーバードの姿になって帰路に付く。本体は1頭目の討伐時から<鮮烈の色>の武器などを作っており、既に完成している物もあった。
本体はそれらを確認しつつ、1本1本の持ち手に皮などを巻いていく。鞭に関してはなかなか良い物が出来たと自負している本体。尻尾の中にあった腱4頭分を束ねて鞭にしてあり、先端には毒針を付けてある。
毒針といっても外側に向かって大量の刃のような突起が生えており、それを受ければズタズタに引き裂かれるであろう凶悪な見た目をしている物だ。鞭とはいえ、取り扱いにはかなり気をつけなければいけない代物である。
これがあればツインヘッドフレイムに挑んでも十分勝てるだろう。そう本体も思うほど、満足な出来栄えであった。
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ゴールダームに帰ってきたミクは<妖精の洞>の屋根に着地するも、宿の中に人の気配が殆どしないことを不審に思い少し調べる。その結果、シャルやドンナの反応はあったので、まだ帰って来ていないのだと判断。部屋に戻った。
しかし帰ってきていない割には静かな事が気に掛かったミクは、生命力を調べイリュとカルティクを探す。すると、スラムのとある場所から反応があったので安心し、そのまま朝まで暇潰しを行うのだった。
……1時間ほどで朝日が出てきたものの、未だにイリュとカルティクは戻ってきていない。仕方なくミクは蜘蛛の姿になって、イリュとカルティクの下へと行く。
スラムの一角にある建物。その中を見ると、イリュとカルティクは捕らえられており、宿の従業員達も捕縛されていた。怪我はあまり負っていないように見えるが。いったい何があったのだろうか?。
「<鮮血の女王>を上手く捕縛できたのは良いが、この後はどうするんだ? 一応安全の為に<奴隷の首輪>を着けてはいるが、果たして本当に効いてるのかどうか……」
「分からん。本国のあの連中は効くから大丈夫だと言うが、ハッキリ言って信用できん。それに王も王だ。不老の秘密欲しさに、宝物庫の中にあった希少な魔道具の使用許可まで出すとは……」
「不老になって永遠に我らを支配したいんだろう、下らないとしか思わないがな。我らは崇高なエルフだと言いながら、奴等は醜い欲の塊にしか見えん。何であんな連中が上に居るんだか」
「そう考えると人間や獣人の方がマシか。少なくとも100年経たずに愚か者は寿命で死ぬのだ。どうせ不老など見果てぬ夢でしかない。<鮮血の女王>とて神から不老を賜ったというのだぞ? 我らがしている事は……」
「神に弓引く可能性がある、と言いたいのだろう? そんな事は最初から分かっている。しかし、神罰などいつまで経っても落ちてこん。不老の理由は神などではなか「神だよ」ろう……?」
「何者だ!?」
ミクが声を掛けると、周囲のエルフも慌てて動き出す。
中が壊されて柱しか見えていない建物の中で、ミクは蜘蛛から人型になりエルフの前に現れた。
「女……? その漆黒の髪。お前は<鮮血の女王>の宿に泊まっているヤツだな。名はミクとか言ったか。急に現れたところを見ると、お前も<鮮血の女王>と同じく妙な能力を持っているな?」
「魔力由来の妙な能力か。スキルとは違うようだが、我等が預かっている<魔導強絶機>を使えば敵ではない。お前ら離れろ! いくぞ!!」
そう言ったエルフがドーム型の魔道具の頂点にあるボタンを押すと、周囲に妙なフィールドが広がった。その瞬間、ミクは魔力が放出できない事に気付く。
「ほう、お前は気絶しなかったか。<鮮血の女王>も<影刃>も気絶したのだがな。どうやらお前は物質側の存在のようだ。魔力側の存在はこれだけで気を失うのだが……そうそう上手くはいかんか」
「成る程。イリュが不老である理由は、限りなく魔力側の存在であり集合体である事が理由だからね。カルティクもそこに含まれてるんだろうけど」
「……お前、まさか不老の理由を知っているのか!?」
「知ってるけど、お前達には無意味だよ? そもそも神どもにしか出来ないし、集合体の一部になるだけだ。分かる? 妖精というのは妖精というものの集合体なんだよ。だから死んでも元に戻り、再び生まれてくるのさ」
「「「「「「「「「「???」」」」」」」」」」
「分からない? 頭悪いなぁ……。簡単に言うと妖精という光の玉があるんだよ。それを使って妖精は生まれ、死ぬと光の玉に還るの。そしてまた妖精が生まれる。普通はそれぞれ違うけど、イリュぐらいになると同一の自分を生み出せる」
「何を訳の分からぬ事を!!」
「本当にエルフっていうのは頭が悪いな。つまり、イリュは不老じゃないんだよ。本当は半不滅が正しい。妖精という光の玉が失われない限り、永遠に生き続け、復活し続ける存在。それがイリュディナというモノ」
「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」
「永遠に己という存在が生まれてくる。そんな事は神どもでなくば不可能だ。お前達如きが何をしようと無意味。さて、話はもういいだろう。さっさとゴミどもを始末するか」
「「「「「「「「「「!!!」」」」」」」」」」
部屋の中に居たエルフ達が一斉に動き出すも、それよりも早くミクの体から”白い物”は発射され、エルフ達の両足を貫く。あっと言う間に行動不能になったエルフどもは、痛みに呻きながらもミクを見る。
そこには一切動く事もなく、静かに佇む美女が居た。エルフ達は困惑するも、裏組織の者らしく痛みに耐えて次の行動を起こす。
何かを投げようとしたのだろうが、それよりも早く、エルフ達の両腕を再び”白い物”が貫いた。
エルフ達はこの段になって、ようやく目の前の者が怪物であるという事を認識する。両腕両足を穿たれており、既に挽回する事は不可能だが。




