0115・武器の決定と減った犯罪者
「雑談はそろそろ止めにして本格的に聞きたいんだけど、素材を売って終わり? それとも私が武器を作る? 私が新しいレシピで作るなら小金貨1枚ね。盾は大銀貨5枚。適当だけど、コレぐらいでしょ」
「「「「いやいやいやいや」」」」
「安いから! 思っていたよりも遥かに安いから! いえ、安すぎる!! 本来なら中金貨とか支払わなきゃいけないのよ? ワイバーンの牙って、それぐらい加工が難しいんだから!」
「私にとっては簡単すぎるし、そんな事を言われても、ってしか思わないね。別に対した労力も掛かってないし、一番掛かるのは時間かな? それに知り合いにしか売らないんだから、知り合い価格で良くない?」
「そうかもしれないけどさー、それでもこの金額は流石に……」
「まあ、いいじゃない。ここはご好意に甘えて、武器を決めよう。ミクもずっと居る訳にはいかないだろうし」
「……そうね、そうしましょうか」
女性は3人いれば姦しいというが、女性が4人だと簡単には決まらないようだ。やっと武器の事を決める気になったかとミクは思いつつ、<鮮烈の色>の質問に答えていく。
その結果、ファニスはバルディッシュ、ルッテは短めのエストック、ウェルドーザは毒抜きした尻尾の鞭、セティアンはワイバーン皮のカイトシールドに決まった。それと全員共用の解体ナイフだ。
「今は剣を使ってるけど、元々アタシは斧を使ってたんだよ。ただし立ち回りを良くする為に剣に変えたんだけど、これを機に戻そうかと思ってね」
「段々と重い斧にしないと大変になって、重量攻撃より的確に急所を突く戦い方に変えたの。それで今までやってきたけど、最初は大変だったよねー」
「攻撃力不足というか、急所を上手く狙えないから倒せなくて焦るしで、本当に苦労した。元々の戦法は私が盾で止めて、そこにファニスが叩きつける。これで1体ずつ確実に倒していくっていう堅実なものだったの」
「そうそう。今みたいにウロウロ動き回る戦い方じゃなくて、確実に一撃で倒していくっていう戦い方だったわね。でも他の魔物をルッテ1人で牽制しなきゃいけなかったの、それで私がラーディオンに言われて加入という形」
「久しぶりに戻すから感覚は変わってるだろうけど、すぐに合わせてみせるさ。第5エリアは山で戦い難そうだから、第4エリアで試しかな?」
「第5エリアで良いんじゃない? アイアンアントが出るし、あれの甲殻は品薄だとか解体所の親方は言ってたよ。だから狩るついでに試したら?」
「アイアンアントかー……背中の甲殻を綺麗に残る形で倒さなきゃいけない筈。とはいえ、それぐらいできなきゃ話にならないし、蟻の首を刈りつつ練習だね」
<鮮烈の色>は第5エリアでの狩りをした事が無いらしく、今から練習に行くというので解散。ミクはその足で第2エリアへと向かう。第3エリアへと行こうかと思っていたのだが、第2エリアが気になったのだ。
人間種を喰い難いとは言っても上手くやれば喰う事は可能であり、何よりも喰い難い場所に移動されても困るのだ。だからこそ第2エリアを喰い荒らし、第3エリアへと移動させようという作戦となる。
意気揚々と第2エリアに行き、1階から調べていく。なかなか見つからないが、そもそも犯罪者とて多く居るわけでは無いし、今まで大量に喰らってきているのだ。警戒もしているだろう。
何もしていない者を喰うわけにもいかないので、犯罪者かどうかを見極める必要がある。ウロウロとしつつ怪しい奴等に目星を付け、それとなく見張るミク。もちろん気配や魔力に生命力で監視している。
そして探索者を襲い始めた連中の所に一気に移動して叩く。今は槍を使っているが、これはウォーハンマーの威力が高すぎるからだ。それなら槍で突いた方が速いし、肉が飛び散ったりもしない。
首は飛ぶが、そんな事はよくある事なので考慮にも値しない事だ。もちろん肉塊にとっては、である。
「あ、あの、ありがとうございました……」
代表して少年がミクにお礼を言うが、他のメンバーも含めて酷く震えていた。どうやら人の首が飛ぶのを初めて見たらしいが、ミクはそんな事には頓着せずに御礼を受け取ると、犯罪者の死体を処理していく。
途中で犯罪者の死体と魔物の死体を取り替えているが、一瞬の早業なので誰も気付いていない。ついでに【聖炎】の白い炎で死体を囲っている為、中の死体がどうなっているかは見えないのだ。
そうやって死体を喰らっているものの、これが本日最初の犯罪者であり、既に6階である。どうやら第2エリアに出没していた犯罪者も移動したようだ。
ミクは死体を処理した後で更に下へと下りて行くが、結局この日はこれ以上の犯罪者を見つける事は出来なかった。
犯罪者自体が減っているなら別の国のダンジョンへ行くべきかな? などと本気で考えているミク。いったい何処へ行く気なのであろうか、この肉塊は。
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第2エリアのボスであるオーク10体を喰い荒らして脱出したミクは、夕方前の町中を<妖精の洞>に向かって歩いている。
今日はイリュが闇ギルドを襲撃するのだが、その情報が水面下で出回っているのか、妙に町中が浮ついているようであった。
そんな今まで感じた事のない雰囲気の中、<妖精の洞>に戻り食堂へ。
大麦粥を注文して大銅貨1枚を支払うと、イリュが来たので大銅貨2枚を追加する。ミクの前に座ったイリュは、ミクに頼み事をしてきた。
「ちょっとお願いというか、頼み事があるんだけど良いかしら?」
「なに? 内容にもよるから、聞いてみないと分からないよ」
「ミクの持っているナイフ2本を貸してほしいのよ。もう使う事もなくなってたから、碌な手入れもしてなかったの。その所為で使えなくなっててね。久しぶりだし、折角だから派手にいきたいの」
「それぐらいなら何の問題もないけど、私のは装飾とか何も付いてないよ? シャルやカルティクにも、装飾が欲しければ専門家に頼むように言ってあるし」
「裏の界隈に余計な装飾なんて要らないわよ。必要なのは切れ味と耐久力だけ。それを考えれば、ミクの持ってるワイバーン製以上は無いのよねえ。ウォーハンマーみたいな重い物、私には使えないし」
「1本はククリナイフだけど良い? 基本としては大型のナイフを左、ククリナイフを右で使ってるけど、そこはイリュの好きにして」
「もちろん好きにさせてもらうけど………これ本当に凄いわねえ。私も何か作ってもらおうか悩む代物よ。金属と違って錆びないし、手入れが楽そう。……この持ち手の皮、妙に滑らないわね。これなに?」
「フィグレイオの王都フィラー近くのダンジョン、その61階から出てくる仮称サンドワームの皮。なんか伸び縮みするけど水は弾くところがゴムっぽいから巻いてる。ビックリするほど滑らないでしょ?」
「驚くほど滑らないわねー……本当に滑らないわ。力が篭めやすくて良いけど、代わりに持ち手をズラしたい時には苦労しそう。まあ、短剣でそんな事なんて滅多にしないから問題ないわね」
「イリュが出陣するっていう話をワザと撒いたんだろうけど、町全体が浮ついてる感じだったよ? 南西区画だけだろうけど」
「中央区画や兵士達は介入してこないわ。彼らは基本、スラムの抗争には介入しないから。逆に言うと、だからスラム内で収めろって事なのよ。そこから周囲に広げると出張ってくるから、裏の連中もスラムでしか争わない」
「スラムが暗黙の了解で争って良い場所になってるって訳ね。で、エルフィンの連中はそこに忍び込んだか、占拠した」
「占拠したが正しいわね。スラムは実力があれば他者を押し退けられるから。とはいえ、それにも限度がある。奴等は色々やり過ぎたのよ」
「何となくイリュを誘き出す為のようにも思えるから、注意しなよ? 私は今日の夜、ワイバーンを乱獲しにフィグレイオに行くから、何かあっても助けられないし」
「まだまだ小僧どもに負けるほど耄碌してないわよ」
これが神どもの言っていた「フラグ」ってヤツにならなきゃいいけど……。そう思うミクであった。




