0114・鮮烈の色との雑談
「でも、そこまでして数を増やそうとしてるのに、彼の国では人口が増えすぎて困ったなんて聞かないのよ。あそこは森の恵みを受けて生きているんだけど、それにしてもおかしいわよね?」
「人間種一人が生きていくのにさえ結構な食料が必要だし、薬を使って数を増やしているのなら、いずれ足りなくなる筈。なのにそんな噂は聞こえてこない。いったいエルフィンで何が起きているのかしら」
「子供を売っているか、それとも薬を使っているのが高位貴族家だけなのか……。でもねー、イリュも言ってたけど、薬を使うのは国策なんだよ。だから少なくともエルフには使わせてる筈だ」
「薬を使っている以上は子供は増えている筈、でも食糧危機は聞こえてこない。大量に輸入してるとか? それなら分からなくもないけど……」
「そんなのは聞いた事が無いわ。他国からの輸入量が増えたなら、絶対に商人の口の端に上る。商人どもはそういう情報に敏感だからね。そしてそれはこっちにも入ってくる、んだけど……無いのよねえ」
「ま、考えたって仕方ないさ。案外、薬で生まれた子は長生き出来ないのかもね。早産になったりとかってありそうじゃないか。自然を歪めれば、どこかで返ってくるものさ。そんな事はよくある」
「確かにね。さて、そろそろ昼からのお仕事を始めましょうか」
イリュがそう言い、その場は解散となった。雑談としては面白かったのかもしれないが、エルフィン樹王国の内部に不穏なものがあるようだという認識で一致した4人。
ミクはそれらを棚上げし、イリュが言っていた<鮮烈の色>が泊まっている<拳骨亭>へと行く。場所は覚えている為さっさと移動し、カウンターに居る少年に話して<鮮烈の色>を呼んでもらう。
少し経ってリーダーのファニスが来たので、<鮮烈の色>が泊まっている部屋に移動。中へと入った。
部屋に入ったミクは、何故か<鮮烈の色>のメンバーからジロジロ見られている。
「なに?」
「ああ、いえ。改めて見ても、ここまで美しいのに作り物なんだと思うとね。……いえ、作り物だからこそ、ここまで美しいのかしら?」
「この姿は神どもが何度も何度も修正させて作った姿だからじゃない? 面倒臭かったけど、これが腐ったバカどもを惹きつけるのに都合が良いって言われたからね」
「「「「あ~……」」」」
<鮮烈の色>もミクの言い分を聞き、何故そこまで美しいのか納得したようである。
よくよく考えればイリュとあまり変わらないのに、不思議とミクには見惚れない。何故かと首を傾げたウェルドーザは、妖艶さが無いからだと一人納得した。
「それで、ワイバーン素材が欲しいって事だけど、素材だけで良いの? それとも完成品が欲しいの? どっちかによって変わるから聞いておきたい」
「うーん……それって、具体的にどんな違いがあるの?」
「牙だけなら今すぐ売れる。でも新しいレシピの完成品となると、今すぐは無理。魔石が無くなったし、他の素材も足りないから狩ってくるまでは作れない。今日の夜に行って狩ってくるから、出来上がりは明日の昼か夜かな?」
「えっと……ちょっと行って狩ってくる、っていう風に聞こえるんだけど?」
「そうだよ?」
「そ、そう……」
<鮮烈の色>のメンバー全員が聞きたいものの、聞くと色々マズそうなので「グッ」と堪えた。そして新しいレシピについて聞く。
「簡単に言うと、ワイバーンの骨、牙、爪、魔石を粉にして混ぜて、そこに私の粘液も混ぜて練る。そして形を整えて乾燥させ、焼いて固めた後に本体の牙で研げば完成。かなり強固で魔力の通りも良くなったの。それが新しいレシピ」
「つまり、牙とかを研いで整えて短剣にするよりも、そっちの方法で作った方が良い物になる?」
「そう。魔石も使ってるからか魔力の通りも良いし、何より好きな形に変えられる。今までなら牙の長さまでしか刃に出来なかったけど、新しいレシピならコレも作れた」
そう言って、ミクはウエストポーチ型のアイテムバッグから長巻を取り出す。それを見た<鮮烈の色>は驚き、近付いて確認し始めた。
「これ……かなり大変な武器だね。細長い刃は置いておくとしても、この長い柄は扱うのが難しい。槍のようには扱えないけど、上手く使えば相当の力が乗るはず。更に言えば、持ち手の場所でも使い方が変わる」
「短く持って体ごと回すか、端のギリギリを持って振り下ろすか。相手に悟らせずに微妙なリーチの長さを調節もできる。思っているよりも伸びてくる剣に対応するのは難しい」
「そうだね。でも私は好きじゃないかな、何だか突きがし辛そうだし」
「アンタは本当に変わらないね。何でそう、マジシャンの癖に剣で突くのが好きなのさ? 危ないヤツじゃないんだから、もっと普通に武器を使ってくれない?」
「そんなに突きが好きならエストックを使えばいいのに。もしくはスティレットを長くしても良いし」
「なにそれ? ……剣の名前?」
「そう。エストックというのは菱型の刃を持つ細長い剣。メイル、つまり鎖帷子の間を通して貫く為の剣だね。スティレットは短剣で、針のように円錐の形をした突き刺す専用の剣だよ」
「へー!!」
「ああ、駄目だ。妙な剣の事を聞いて、目がキラキラしてる。……しかし聞いた事もない剣だけど、それって使えるの?」
「どちらもだけど、そもそも戦場で敵を殺す為に使われた剣だよ。さっきも言ったけど、エストックは鎖帷子を貫く為、そしてスティレットはプレートアーマーの敵に止めを刺す為に使う武器」
「ああ、プレートアーマーの隙間から刺し込むのか。成る程ねえ、ハンマーや斧を使わないで戦うとは……なかなか考えられてる武器だ」
ミクが詳しく聞くと、どうもこの星では早々にプレートアーマーへの対策として、ハンマーや斧で叩き殺す形になったとの事であった。
おそらく【身体強化】の影響で、重量物をそこまで苦にしないからこそ、早々に叩き潰す形が定着したと思われる。鎖帷子に対しても同様だったらしく、そこから繋がっての全身鎧に対する重量攻撃のようだ。
「基本的にはスレッジハンマーか、ポールアックスだよね。盾を構えて突撃、そして号令と共に右手の武器を振り下ろすって感じ。もちろん整列しての一斉攻撃だけど、結局は茶番だよ」
「まあねえ。メインは魔法攻撃だし、それを如何にして盾で防ぐかよ。各国の職人もそこに頭を悩ませているわ。重量物の攻撃もある程度は防げて、更に魔法攻撃を防げる盾。それがないと勝つ事は難しいから」
「今は魔法防御偏重の盾よね。結局のところ近接攻撃より、魔法攻撃の方が死亡率が高いから仕方ないんだけど。そして、だからこそエクスダート鋼が取り合いになるのよ」
「戦争で活躍するからって事も人気の理由にあるんだ。通りで各国が求める筈、今納得したよ。それはともかく、私の盾なら戦場の魔法は防げると思う。……コレだけど」
そう言ってミクが取り出したのは、ワイバーン皮のカイトシールドだ。これにはセティアンが喰い付いた。
「これは……ワイバーンの皮が貼ってある? ……何て贅沢な盾って思うけど、これなら結構な魔法でも防げると思うし、近接武器も防げるよ。ビックリするほど贅沢だけど」
「それは武器も変わらないから何とも言えないけどね。仮にもしコレを作ってもらうとしたら、幾らぐらいになる? セティアンの目が釘付けだから聞いておきたいの」
「それ? 大銀貨5枚ぐらい? ワイバーンの胴体の皮を3重にして貼っただけだし、木材はトレントなだけだしね。元手はタダで、私が作ったっていう程度でしかないし」
「トレントとワイバーン皮の盾かー……」
遠い目をしている<鮮烈の色>と、それを不思議そうな顔で見るミク。彼女にとってはどちらもザコだが、一般的にはトレントも厄介なボスとして知られているのだ。
とはいえ、その事をミクが理解する事は今後もあるまい。
明日から通信環境が断絶する可能性があり、その場合一週間から二週間ほど復帰に時間が掛かります。
復帰次第まとめて流しますので、申し訳ありませんが御了承下さい。




