0113・イリュの標的
1人1頭ずつ討伐した後は適当にウロウロしつつ、魔物を討伐していく。何処に居てもミクが分かる為、帰る時には呼びに来ると思い安心して狩っていく2人。
カルティクは体が頑丈では無いので危険な気がするが、実際には今まで生き抜いてきた猛者であり、第5エリアでも問題なく戦えている。というより、武器が強いので非常に楽に狩れるらしい。
「そりゃそうでしょ。この槍も反則よ? あっさりとマッスルベアーの体を貫くし、スチールディアーの頭も貫く。正直に言って、武器が違うとここまで楽だとは思わなかったわ。流石はワイバーンとしか言えないけど」
「まあ、私の4割に耐えられる素材だしね。代わりに今日の夜、また狩りに行かなきゃいけないんだよ。魔石を始め、素材が無くなったからね」
「魔石まで使ってたの? どうりで魔力の通りが更に良くなってる筈。………っていうか、コレ間違いなく中金貨、下手をすると大金貨を支払わなきゃけない武器じゃない。本当にタダでいいの?」
「別に良いけど? そもそも私が適当に配ってるだけだし、ワイバーン狩りに飽きたら行かなくなるだろうしね。それまでの間だから問題ないよ。その頃には新しい素材で武器を作ってるかもしれないけど」
「ワイバーン以上ってなったら……ドラゴン? それぐらいしか思いつかないわねえ。他に何か凄い素材の魔物って居たかしら?」
「さあ? 私この惑星の魔物とか知らないし、亀の甲羅とか、蝶とか蛾の羽とか? 何となく鋭利な刃になったり、頑丈そうじゃない?」
「まあ、イメージでは分からなくもないけど、甲羅はともかく羽はすぐに壊れそうだけどね? 薄すぎて」
「ああ、確かにね。……さて、向こうの方に居るから狩りに行ってこようっと」
ミクはカルティクから離れて魔物を狩っていく。3人とも危な気なく狩りをしていき、昼に近くなってきたのでミクが回収。41階まで戻って脱出した。
探索者ギルドの解体所へ売り、嬉しい悲鳴を聞きながら木札を貰う。「ヒャッハー!」という感じの声だったので、間違いなく嬉しい悲鳴だろう。親方はジト目で見てきたが。
ギルドの建物に入り受付嬢に木札を見せると唖然とされ、常設依頼と言った後で小金貨24枚を受け取る。その結果、ランク10と書かれた木札を貰った。シャルも同様である。
「マッスルベアーやスチールディアーが乱獲できる人を、低ランクに置いておく事など出来ません。ゴールダーム王国としても、探索者ギルドとしても、上げざるを得ないというのが正直なところです」
「流石にカルティクのランクは上がらなかったね。表のランクは知らないけど」
「あれは警戒させない為の物で、ギルドマスターから支給されている物よ。依頼を熟すのであればミクも貰えるわ。というより、ラーディオンが渡してくるでしょうね」
「言い訳の為には必要なんだろうし、警戒されても仕方ないからねえ。それにしても、あっと言う間のランク10で、何の感慨も無いねえ」
「貴女の実力ならランク10なんて、むしろ当然でしょうに。私の目の前であっさりとスチールディアーの頭部を潰したじゃない。しかも一撃だったし」
「そうだけどねえ……。あんなに脆いとは思わなかったよ。その所為で血を浴びちまうし、手加減しなきゃ駄目だね」
「マッスルベアーやスチールディアー相手に手加減とか言い出すのは、貴女とミクだけでしょうね……」
受付を後にしたミク達は、さっさと<妖精の洞>へと戻る。後ろからつけてくる連中は少し居るものの、見つかっても問題無い。スラムに近いこの場所は、普通の探索者にとっても立ち入りたくない場所なのだ。
それを越えて襲ってきても返り討ちに遭うだけである。この3人だと、誰を選んでも相手が悪過ぎるのだ。
ミク達は食堂へと移動し各々好きに注文する。ミクは大銅貨1枚で大麦粥を注文した後、イリュが来たのでついでに大銅貨を2枚出す。
「ありがと。午前中に<鮮烈の色>がウチに来たわよ? ワイバーンの武器の事で話したかったみたい。今日は休みらしいから、後で<拳骨亭>へ行ってあげなさい」
「了解。午前中で十分お金は稼げたし、午後からは第3エリアに行こうかと思ってたから、その前に寄っていくよ」
「そういえば昨日の夜に潰してきた、フィグレイオの闇ギルド。それと組もうとしていた連中はどうなったんだい? イリュを狙ってたんだろ?」
「私を狙ってたのは確かだけど、大きな動きは無いわね。むしろ<黄金の実>を私達に潰させる為に、敢えて組むフリをしていたって感じかしら? <黄金の実>だけが恐怖から前のめりになってたという訳ね」
「何だいそりゃ、バカバカしい。闇ギルドだから潰れて当然だけど、フィグレイオが間抜けみたいに見えるのは……何か、こう、モヤモヤするよ」
「気持ちは分かるけど、結局は闇ギルドの事よ。それよりもイリュディナ、他の連中はどうするつもり? お優しく放置してあげるの?」
「そんな事があるわけ無いじゃないの。この私を利用して敵を潰そうなんて、随分と舐めた真似をしてくれるんだもの、それは潰してくれって事よね?」
「あーらら。久しぶりに<鮮血の女王>が降臨するのかい? とはいえ、バカどもに示すには丁度良いんだろうさ。話だけ聞いても理解しないだろうし、そんなバカでも見りゃ分かる。目の前に居るのが、どれだけのバケモノなのかは」
「見たら生き残ってないけど、そいつらは生かす価値が無いって事だから、気にする必要もないわ。また裏の界隈に恐怖と共に語り継がれるだけよ。で、何処にするの?」
「調子に乗ってるクズどもの穴蔵があってね、そろそろ潰さないといけないと思ってたのよ。………<選ばれし民>とか名乗ってるクズどもがスラムに居て、かなり目障りなの」
「ああ、あのエルフィンの中でも特級のバカどもか。エルフィンの一部に居る、自分達は選ばれし者であるとか言ってる連中、そいつらがゴールダームのスラムで好き勝手し始めた。ここ最近の話だけど、既に問題を起こしている」
「あのゴミどもが問題を起こさない筈がないだろ。しかも厄介な事に、古くからある高位貴族家どもがソレだからね。エルフはあたしの種族とも同じで500年ほど生きる。子供が出来にくい筈が、何故か連中は多いんだよ」
「あいつら相当の薬を使って、子供を作ってるわよ? 国の中でも奨励してて、特に高位貴族の子供は薬漬けの種から生まれてくるの。まったくもって自然に反した連中だし、よくも選ばれし者とか言えるわよね」
「薬に選ばれし民ではあるけどね。無理に薬を使って子供を作り、そうやって代を重ねていくと、薬が無ければ子供を作れなくなるかもしれない。代を重ねるってそういう事だし」
「へー、そうなのかい?」
「自然界でも虫だったりがやってる事だよ。あいつら同じに見えて同じじゃないの。人間種とは比較にならないほど早く代を重ねるから、いつの間にか強力な耐性を獲得してたりする」
「ああ、数年で死んでは代替わりの繰り返しだから、どんどん変わっていく訳か。という事は寿命の長い種族って、もしかして……」
「そう、変化に耐えられる資質を獲得し辛い。だからこそ、生き残るという事に関しては長寿の方が不利。寿命が短い方が代替わりが早く、生き残る力を獲得しやすい」
「長寿の奴等が薬で沢山産ませてるから、薬を使わなきゃ子供を作れない体になっていってる?」
「シャル、正解。エルフィンの高位貴族の子供は、”薬を使って子供を作るのが当たり前”の環境に適応していってるかもしれないわけ」
「「「あー……」」」
「もちろん可能性自体は低いんだけど、こういうのは大丈夫と思ってたら最悪の結果になったりするんだよねー」
「あるある。大丈夫と思っている時ほど、不思議と駄目なのよ」
人間種が生きている以上、何処の星も変わらないようである。




