0111・3人での狩り
朝食と武器の受け渡しを終えたミクは、宿を出てダンジョンへと移動する。シャルもカルティクも一緒だが、どうも2人も第5エリアでお金稼ぎをするらしい。ならば丁度いいかとミクはアイテムバッグを渡す事を考える。
「それはまあ、ありがたいけどね。とはいえ、私は一番小さいので良いわ。流石に神様が変化させたって事は、ある意味で神器な訳だしね。だから中型はシャルが持ってよ」
「何言ってんだい、私こそ御免被るよ。サラっと渡されたから持ってるけど、まさか神様が自らの手で変えた物だとか思わないだろ。不敬な事はしたくないんでね、<影刃>が持ちな」
「名前で呼びなさい、名前で。私、その二つ名あまり好きじゃないの。やってる事は背後からの攻撃よ? にも関わらず<影刃>ってなに? 内容と違いすぎるでしょ。妙な名前をつけるのは止めてほしいわ」
「それはあたしだってそうさ。国の為にやってきたのに、敵を執拗に追い込む姿から餓狼だよ? 国の為じゃなきゃそこまでやんないってのにさ。その名前もまた国の為になるから渋々受け入れたけども」
「貴女なら受け入れるどころか、積極的に利用したでしょうに。そうでなきゃ、各国で恐れられたりしないわよ」
「それは、まあ、そうなんだけどねえ……」
暢気に話しつつもダンジョン前。第5エリアへのショートカット魔法陣に乗り、ミク達は山のダンジョンへと飛ぶ。中に入って少し歩き、ミクは今まで使っていた中型のアイテムバッグから、大型のアイテムバッグに移し替える。
そして中型をカルティクに渡すと、カルティクは少し緊張気味に中に荷物を詰め始めた。
「唯のアイテムバッグなんだから気にしなくもいいのに。所詮、道具は道具だし、あの神どもが気にしたりなんてしないよ。むしろ恐れ多いとか言ってると、面倒臭いって思うんじゃない?」
「そんな……ミクじゃないんだから、それはないでしょ」
「いや、あいつら目的以外はどうでもいいってタイプばっかだし、シンプルなのを求めるよ? だからそれ以外を邪魔って思うし、余計な事をするなって言われるからね。あいつらは目的以外、心底どうでもいいんだよ。だから私みたいなのを創るんだしね」
「「???」」
「あのさ、腐った奴等をどうにかするなら、別に凄そうなのでも良いわけじゃない? 何か人間種を導く凄い存在っていう感じでも良かったんだよ。でも創ったのは私でしょ? ゴミを食い荒らすヤツでいいって。つまり神の威光とか興味無いのよ」
「ああ、そういう事かい。確かに神の威光を遍く示すなら、神の代行者って感じの凄そうな存在として創ればいい筈だ。でも、創られたのはミクであり<喰らうもの>。神の威光なんて欠片も考えてないね。むしろ神々にとっては邪魔な訳か」
「神の威光で世が変わっては駄目って事かしら? だから闇で喰らって処理する怪物を生み出された……」
「お堅いねえ。神様の事さ、人間種を屠る存在なんだから、この見た目で十分。もしくは、この見た目の者こそが正しい。そう思われたって事さ。腐った人間種を潰すには、それに相応しい姿があるんだよ。威光を示す姿なんて邪魔でしかない」
「ああ、成る程。そういう事ね。だからミクがシンプルって言ったのか。余計な装飾なんて要らない。……それは分かるんだけど、愚かな人間種としては何とも言えないかなぁ……」
下らない話も済み、ミク達はマッスルベアーが出る5階へと進んで行く。カルティクも【身体強化】は使えるので、それなりに体力は消耗するものの、ミク達についていく事が出来た。
5階では最初にミクが長巻の試験をすると言い、ウエストポーチ型のアイテムバッグから取り出す。その威容を見たシャルとカルティクは少々驚く。
剣のような刃を持ちながら、その細長い刃は折れてしまいそうに思え、しかも柄が1メートル50センチもある。この惑星では【身体強化】がある為に驚かれるだけで済むが、それでもこれを使おうと思う者は早々いないだろう。
「これまた随分大きな剣だねえ。聞いてはいたけど、実物を見ると本当に大きい。これでもまだ剣身は1メートルだって言うんだから驚くよ。グレートソードでも普通か短いぐらいだよ? 1メートルって」
「柄が長いから異様に巨大に見えるけど、刃の長さは1メートルか。そこまで長い物じゃないけど、その柄で振り回すのは……」
「思っているよりも難しいだろうね。そもそもミクは叩きつけるでも突くでもなく、切るって言ってた。つまり、あれを自在に振り回すっていうか、正しく切り裂く気なんだよ。これはこれで技術が要るだろうさ」
「でもミクが知ってるって事は、この世の何処かにはコレを使う国があるって事よね? コレが戦場に出てくるって……どんな怖ろしい場所なのよ。コレが使えるって事でしょ?」
「ああ、確かに言われてみればそうだ。それもそれで、どう考えていいのやら……」
「多分だけど、この星には無いんじゃないかなぁ、この武器を使う国。もしかしたら似た武器はあるかもしれないけど、多分コレじゃないと思う。もうちょっと短い代わりに分厚い刃を持つ筈」
「そうなのかい?」
「そう。薙刀の発祥は知らないけど、同じような物であるグレイブは、元々長い柄に鉈を取り付けた武器が始まりって聞いたし、長い柄に短剣を取り付けたのが発祥の槍もあるらしいから」
「成る程。少しでも有利に戦う為に、長柄の先に武器を取り付けたんだ。作られ方としては分からなくもないわね。やがて専用の物が作られるようになって、それが普通の武器になったと」
「袋槍っていう名前の槍は、普段は杖として柄を持ち歩いて、戦闘になると穂先を被せて目釘で止めれば槍になる。そういう武器だよ。穂先は袋に入れて目立たずに持ち歩くんだってさ」
「それはそれで、町中での暗殺に使われそうな槍だねえ。まあ、護衛が持ってる分には悪くないと思うけど、構造が簡単だと真似されるだろうし、難しいところかな。っと、熊さんが出てきたよ」
「可愛い風に言わないでよ。あれマッスルベアーでしょうが」
そのマッスルベアーに対し、長巻の鍔元近くを持ったミクは八双に構える。それを見たマッスルベアーは近付いてきた後、長巻が届くか届かないかの所で立ち上がり威嚇を始めた。
「Guoooooo!!!!」
マッスルベアーなりに安全圏で行っているのだろうが、あまりに甘すぎる。
ミクは刃を後ろに寝かせると、前に踏み出しつつ握りを甘くしてズラしていき、柄頭の近くに持ち手を変える。そしてそこから水平に一閃。四つ足に移行しようとしていたマッスルベアーの首を一瞬で刎ねた。
「わざわざ近付いて咆哮するなんてバカだね。そういう愚か者から死んでいくっていうのに」
「いや、あれは獣に分かれって言っても無理だろう。意図的に短く持って構え、振る前に目一杯長く持って振る。実際ミクが振った時なんて、柄の末端近くを持ってたじゃないか。あれでよく振り抜けるよ」
「本当にね。流石にマッスルベアーに同情するわ。しかもあんなに綺麗にバッサリ切られてるし。というかアイテムバッグがあるなら、私もブラッドスライム買おうかな? 今までは高く売れる部位だけ持って帰ってたけど」
「おーおー、そうしな。そしてミクにブラッドスライムを変化させてもらえばいいよ。いや、進化かな?」
『しんかー』
『変化でも進化でも、どちらでもいいと言いますか、どちらも正解の気がしますけどね』
「ふぇっ! なに!?」
いきなりドンナが念を送った為、驚いて飛び上がるカルティク。それに苦笑いするシャル。ドンナは自由だが、どうにも言う事を聞いて無さそうである。




