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0108・闇ギルド・黄金の実




 多少の狩りをした後、41階へと戻り脱出。ミクとシャルはその足で探索者ギルドへと行き、解体所でマッスルベアーとスチールディアーを出す。ミクが4頭と6頭、シャルが6頭と5頭。


 木札を受け取ったらギルドの建物に行き、受付で常設依頼の事を言う。するとすぐに分かったのか、登録証を提出するように言われたので出す。受付嬢は木札の内容を確認し、ミクの登録証のランクを7にした。


 横の受付でシャルの登録証も一気に6になっていた。どうやらシャルのランクを試験無しで上げるのは通達されていたらしい。


 マッスルベアーもスチールディアーも、状態が良ければ小金貨1枚なので、ミクは小金貨10枚と小銀貨3枚を貰ってギルドを出る。シャルは小金貨11枚と小銀貨3枚を受け取っていたが、笑いが止まらないらしい。



 「信じられないよ、この売り上げ。男爵になるまでは探索者をやってたけどさ、それでも1回の売り上げがあそこまでっていうのは、笑いが止まらないねえ。ここまで出来る奴は、そりゃ探索者を辞めない筈さ」


 「自由で柵も無くて、お金は戦えば入ってくる。もちろん死の可能性はあるけど、一流は思っている以上に稼げる立場。そんな感じ?」


 「そうそう。あたしはそうなる前に辞めちまったからねえ。とはいえ、フィグレイオじゃそこまで儲からなかっただろうけどさ。それでも結構な稼ぎになってたのかと思うと、色々考える事はあるよ」


 「ふーん、そんなものなんだね」



 振り返るほどの過去も無いミクには、よく分からない心境であろう。過去があっても神にボコボコにされるか、教えられる事を反芻していた頃の記憶だ。思い出してもムカツクだけなのか、ミクは思い出すのを止めたようである。


 <妖精の洞>に戻り、食堂に移動したミクとシャルは、それぞれ注文してお金を支払う。ミクはいつも通りの大麦粥のみで大銅貨1枚、それとイリュが来たので大銅貨2枚を払って話を待つ。



 「ごめんねー、いつも支払ってもらって。それはともかく、お待ちどうさま。今日の夜、ミクに喰ってもらう連中が決まったわ。昼にも言ったトンネルを掘ってるっていう偽情報を流してる奴等。組織名は<黄金の実>で、闇ギルドよ。フィグレイオのね」


 「へえ、フィグレイオの闇ギルドが怯えて下らない事をね。情けない連中さ」


 「それがねー。調べてたんだけど、どうにも情報が錯綜してるっていうか、本国が大慌ての状況で連絡がとれてないっぽいのよ。誰かさんが死んだ事で、思っている以上に大荒れみたい。近衛が殺したって流布してる奴が居るらしいわ」


 「チッ! 余計な事を……! とはいえ宰相だろうが王だろうが、今までの方針とは違う事をやっちまったんだから、責任はとるしかない。それが国家ってもんだし、情報をバラした奴を恨んでも始まらないね」


 「貴族街の、それも伯爵家の屋敷。平民街からじゃ何が起きてるか分からない。十中八九どこかの貴族がお漏らししたんでしょうね、これで王の足を引っ張れると。ただ問題なのは、事を起こす前に気付ける事で、なぜ今になって慌てているのかって事よ」


 「それは分かるんだけど、その事って闇ギルドに関わりあるの?」


 「どうも本国の命令が来ない事をいい事に、好き勝手を始めたっぽいのよね。他の闇ギルドと連携をとるって今まで無かった事だし、こっちというか、私を敵に回すって事もしなかったのよ。今までは」


 「<鮮血の女王>を敵に回す、か。これほど怖ろしい事は無いんだけど、今の若い連中はその恐ろしさを知らないのかねえ。あたしからすれば、唯のバカだとしか思えないよ」


 「自分で経験しないと理解しない奴なんて、この星に掃いて捨てるほど居るよ。それよりも今までの秩序、その箍が緩んだって感じるんだけど?」


 「そうね、その捉え方が正しいと思うわ。良くも悪くも、<雪原の餓狼>が死んだ事が裏の界隈にまで飛び火してる。それを念頭に置いて、これからの事を考える必要があるでしょうね。ミクが悪人全てを喰らう、その可能性も無い訳じゃない」


 「私としては喰えるなら何でもいいんだけど、神どもが文句を言ってくるまで喰う事は無いよ。警告のうちに止めておかないと、本気で滅ぼされかねないからさ」


 「そこまでしろとは言わないし、悪人だけなら神々もお許しくださる筈。それはともかくとして、まずは<黄金の実>の始末をお願い。フィグレイオに関しては情報収集をするしかないわね」


 「その情報、お金を払うからあたしにもくれないかい?」


 「別にタダでいいわよ。そこまで重要な情報は入ってこないから」


 「そっちのルートじゃなくて、もっと深いルートを持ってるだろう? あたしだってその程度の事は知ってるんだよ?」


 「そっちの情報? 別にいいけど、今は無理よ。向こうも混乱してるし、そういう時には妙な行動は目立つもの。迂闊な事をしてくれとも頼めないしね。今はガタついている国を立て直す為に必死でしょうし」


 「そこまでガタついているのかい……。そもそも何であたしを排除しようとしたのかねえ。もちろんミクに喰ってもらってたのは事実さ、でも証拠も無しにあたしを殺しにきてる。これが分からない」


 「考えても仕方ないわよ。それよりも、お願いね」


 「了解、了解。喰うのは問題ないよ。さっさと終わらせておく」



 そう言って食事と会話を終えたミクは、いつもの部屋へと戻る。時間が来るまでは本体空間に意識を移し、物作りに励むのだった。並行して5つの武器を作るのは、肉塊ならではであろうが……。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 深夜。ミクは起き上がり、荷物とレティーを本体空間に送ると、蜘蛛の姿になって窓から出る。<黄金の実>のアジトは既に分かっており、南東の壁際の住宅に近付く。


 誰も居ないように見えて複数の生命反応を感知したミクは、まず屋根の上で見張っている奴の殺害を決める。屋根の上で寝そべっていたので、殺しても周囲に気づかれ難い。


 そう判断したミクは素早く近付き、背中に張り付くと心臓に触手を突き刺して殺害。そのまま触手を切り離して蓋をする。こうする事によって、死んでいるにも関わらず血が漏れ難くなるのだ。


 他の屋根の上に居る奴等も同じ手法で殺し、全て殺害したら死体を回収、レティーに脳を食わせる。その間に分体は<黄金の実>のアジトの中へ。


 先ほど屋根の上に居た連中は<黄金の実>の構成員で間違いないが、下っ端であった為、碌な情報を持っていなかった。更に言えば、定期連絡も決められていなかったのだ。


 殺されたとしても発覚し辛いのだが、何故こんなにも杜撰なのだろうか? 本当にこいつらは罠を仕掛けている側なのか? 不思議で仕方がないミク。


 そんな疑問とは裏腹に、2階の窓からスルスルと入って行き、中の連中を喰らって転送する。


 そうやって殺害していると、下から慌てて上がって来た者達が居た。ミクは元々関わりを薄めていたが、どうやら居なくなっていくのがバレたらしい。


 部屋の外に居る6人は声でタイミングを合わせ、一斉にミクが居る部屋に突入してきた。ミクは部屋の入り口の扉の上に居るのだが、男達は部屋の中しか見ていない。



 「おかしい。敵が居ないってどういう事だ? さっきまでここに仲間の反応があったんだ、だけど今は消えてるし居ない。他の部屋も探してくれ、仲間が消ぅぇ!?」



 部屋に入ってきた男達の首筋に触手を突き刺し、レッドアイスネークの毒を注入する。


 6人の男は麻痺して動けなくなったが、先ほど喋っていた男だけが少し動けている。どうやら多少の耐性を持っているようだ。



 「う……く、な……い……ど………る」



 それでも殆ど喋れない程に効いている為、さっさとミクは男達を転送した。気配を調べる事が出来ても、それだけでは強いとは言えない。


 ミクにとっては面倒臭いヤツというだけである。


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