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第四話 極秘の破産計画

翌朝。またしてもノックの音とともにろこが入ってきた。

なんと、ろこは正式に私の専属メイドになったらしい。


「これからよろしくね、ろこ」

「よろしくお願いいたします、リル様!」


そして昨日と同じように朝食へ向かったのだが――昨日と違う点があった。

席に着くなり、国王様、王妃様、ルキハが揃って胸の前で手を合わせたのだ。


「……皆様、何をしてらっしゃるのでしょうか?」

「リルばかりがこちらに合わせるのではなく、私達もリルの風習に合わせる努力をしようという話になったのだ」


(えー……ナニソレ。)


「皆様が私に合わせる必要はございません! 異端者である私が合わせるのは当たり前ですから!」

「いや! 僕たちも感謝の気持ちを持つのは良いことだと思い始めたんだよ!」


(……へぇ、そっか。としか思わんわ。ほんと嫌い)


朝食後、私は自分の部屋で状況の整理と今後の計画をまとめることにした。


「ろこ、紙とペンをくださる?」

「はい! ですが……何にお使いになるのかお聞きしても?」


ろこは私の専属メイドだが、一応は王宮の人間だ。見咎められるのは避けたい。


「この数日で一気に状況が変わったでしょう? だから少し頭を整理したくて。あと、一人になる時間も欲しいから、その間にお手伝いに行ってきてくださるかしら?」

「そうですか……ですが、私はリル様の専属メイドですので、他のお手伝いはできません。私が部屋を空けていると『仕事をしていない』あるいは『リル様がメイドを従えられていない』と捉えられる可能性がございます」


(確かに……! うちのメイド、私よりしっかりしてない??)


「そうですわね……では私のお使いをお願いできるかしら?」

「はい! なんなりと!」

「街で、大量の紙と、鍵のかかる箱、白紙の本……それと、私に似合う髪飾りを買ってきてほしいの」

「分かりました! 紙、鍵付きの箱、白紙の本、髪飾りですね。私、こう見えてセンスには自信がありますので、お任せください!」


私のメイド、可愛くない?

実際、ろこは紅茶のような綺麗な茶髪を一つにまとめていて、カーキ色の髪留めがよく似合っている。自分の魅力を分かっている子のセンスなら信頼できる。どんな髪飾りを買ってきてくれるか楽しみだ。


ろこが部屋を出て行った後、私はさっそく用意されたA4サイズの紙と羽ペン、インクを引っ張り出した。アニメでよく見たやつだ! 一度使ってみたかったのよね。


「さて……まずは状況の確認ね」


一枚目の紙に、現状を日本語で書き出していく。


・3年ほど前に日本で死んで、トニミスタ王国に転生した。

・名前は「リル」。顔が超絶美しい孤児。ヒロイン属性。

・その属性のせいで、第一王子「ルキハ」と婚約する羽目になった。

・王宮に連れてこられて現在に至る。


「よし。次はこれからの計画だわ」


ここの王族は、私に対して猛烈にメサイアコンプレックスを刺激されている。情報としてメモしておきたいけれど、メサイアコンプレックスって書くのは長いな。


「……『メサコン王子』っと」


略称決定。

で、肝心の計画は――【金を使えるだけ使わせ、最終的に離婚させて私が得して終わろう作戦】!!


うん、相変わらず私のネーミングセンスは絶望的だが問題ない。

とりあえずあの王子に散財させて焦らせ、価値観の違いを理由に離婚する。その後は買ってもらった高級服や宝飾品を売り払って資金を作り、また他の貴族に助けられながら孤児院で自由に暮らす。完璧だ!


(はぁ……それにしても、この体を手に入れたのが私で良かったのかしら? 性格的には完全に悪女向きよね……まぁ、自由に楽しく生きられれば何でもいいわ!)


あ、一つ問題点があった。私、この世界の文字の読み書きができないや。

今書いているのは全部日本語だから誰も読めない(これはセキュリティ上メリットだが)。知識として文字が読めない王族なんてあり得ないから、これから勉強しなきゃダメか……ハァ。


「これにて第一回、緊急作戦会議を終了する! なんちゃって」


一人で虚しくつぶやいていると、午後からはルキハと一緒に過ごさなければならないことをメイドが伝えに来てくれた。婚約者としての務めらしい。面倒くさい。


◇


王宮の一階、中庭が見渡せるテラスでお茶会が始まった。


「このお茶、とても美味しいですね。こんなに美味しいお茶、初めて飲みました」

「そうかそうか! それは良かった。あ、そうだ、言い忘れていたが昨日のドレスもとても似合っていた。僕の婚約者にピッタリ!」

「……それは良かったです」


(何よその上から目線。ムカつく。……あ、今のうちに集金のおねだりしとこ!)


私はあざとく、超絶上目遣いでルキハを見つめた。


「ルキハ様……私、自分の部屋を自分好みにしたいのですが……家具などを買っていただくことはできますか……?」

「ああ! いいぞ! 今度一緒に買いに行こう!」


(よしよし、引っかかった! めちゃくちゃ高い家具を買わせてやる!!)


お茶会を通して分かったことが3つある。

1.こいつ、私のことがめちゃくちゃ好き(面白いくらいに)。

2.こいつ、個人で相当な資産を持っている。

3.こいつ、ムカつくくらい顔がいい。私と並んでも負けないレベルの美形。マジで大嫌い!


お茶会が終わり、テラスを出ようとすると、従者のサスタが姿を現した。


「リル様、国王様がお呼びです」


(え、国王様が……? 婚約破棄……なわけないか。怖いんだけど)

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