第十五話 闇を切り裂く光
「……助けて……! ルキハ……っ!!」
目を強く瞑り、死を覚悟したその瞬間――。
ドスッ、という鈍い衝撃音とともに、私の目前に迫っていた男の体が一瞬で横へと吹き飛んだ。
「ぐはっ……!?」
何が起きたのか分からず、おそるおそる目を開ける。
そこに立っていたのは、いつもの穏やかな笑みを完全に消し去り、冷酷なまでに冷ややかな瞳をした第一王子――ルキハだった。
「……僕のリルに、汚い手で触れようとしたのは誰だ?」
氷点下まで凍りつくような冷徹な声が、静まり返った路地裏に低く響きわたる。
背後に控えていた近衛騎士たちが一瞬で男たちを取り押さえ、残されたならず者たちはルキハから放たれる圧倒的な威圧感に気圧され、恐怖で腰を抜かしていた。
ルキハは騎士たちに淡々と指示を出すと、一転して素早く私の元へと駆け寄ってきた。
「リル! 無事かい!?」
私を抱き寄せるルキハの手は、見たこともないほど激しく震えていた。
私を強く抱きしめるその腕には力がこもっており、彼の心臓が早鐘のように打っているのが胸越しに伝わってくる。
「……ごめんなさい、私……勝手に離れてしまって……」
恐怖と安心感が入り混じり、ぽろぽろと涙が溢れ出してきた。
ルキハは私の背中を優しく擦りながら、私の耳元で囁いた。
「よかった……本当に無事でよかった。君に何かあったら、僕は……」
その声には安堵とともに、どこか尋常ではない重い執着と狂気が滲んでいた。
ルキハの胸の中で抱かれながら、私は彼のメサイアコンプレックスの凄まじさと、助けられた安堵感の間で、静かに体を震わせるのだった。




