6. スキルを試そう
6. スキルを試そう
昨日、
俺は別館にお引越ししてきた。
それから一日が経ち……
ようやく時間を持つことができた。
窓から外を見る。
そこには、地平線まで続いているような庭が広がっていた。
そう、
この別館には、緑に囲まれた広大な土地がある。
つまり……
俺のスキルを存分に試すことができるのだ。
部屋でやってもいいが……
俺は部屋を見る。
あいからわず、広い部屋だ。
研究室と使われていただけあるな。
だが、元研究室だから研究すればいい、
という簡単な話ではない。
スキル名から、
危険なスキルではなさそうだが、
俺の勝手でこの屋敷が大破しても怖い。
つまり、
広い敷地のあるこの別館ならば、
俺のスキルを試すことができるということだ。
庭に出る。
太陽が照りつける暑さ。
「実験日和だな」
俺は呟く。
そして、
まず試してみたいのは、《岩石刻印》だ。
その理由はもちろんのことだが、
二つのスキルがある中で、
一番石に関係しそうなものだったからだ。
使い方を試してみたい。
ヴァルネスに教えてもらったスキルの発動方法はいたって簡単だ。
スキルの名前を言う。
ただそれだけだ。
まぁ、熟練したら言わなくてもいけるらしいが……
俺にはまだ早い。
そして、これは、俺の予想だが、岩石に刻印することのできるスキルだ。
ならば、石が必要だ。
俺は手のひら大の石を手に持つ。
これは、別館の裏に落ちていた石だ。
別館の後ろには森が広がっている。
自然と隣り合わせだからか、
石を探したらすぐに見つかった。
「《岩石刻印》」
俺はスキル名を呟く。
すると、
スキルが発動したのか、魔法陣が現れる。
このスキルの場合、
具体的なイメージを持って使えばいいはずだ。
”刻印”だしね。
何刻もう。
考えてなかった。
まぁ、とりあえず丸でいいか。
丸、丸、丸……
丸は簡単にイメージができる。
だから、最初にふさわしい。
そろそろ、できたかな?
俺は恐る恐る目を開ける。
そして、目に写ったのは石に刻まれた円だった。
「すごっ……」
石に刻まれていた丸は真円に近いものだった。
石に丸を彫るにしても、
これほど真円に近づけるのはこの時間では難しいだろう……(やったことないけど……)
さて、次は《好きこそものの上手なれ》だ。
石系ではなさそうなので、
《岩石刻印》よりかは興味は惹かれなかったが、
なにか面白そうな効果が待っていそうな感じはする。
だから、少し楽しみだ。
「《好きこそものの上手なれ》」
俺は呟く。
だが……
広い庭が静寂に包まれる。
これは何を表すか。
それはもちろん。
何も変化がなかった
ということであった。
「あら、何も変化がない……」
俺は、少しではあるが、
何かしらでも変化があると思っていた。
だが、
特に何の変化も見られなかった。
「どゆこと?」
いやいや。
俺は首を振る。
分からなかったら整理する、だ。
スキルの発動条件を考えてみよう。
初めに名前から考える。
好きこそものの上手なれとは、
好きなことは上達が早い……みたいな感じの意味だった気がする。
だから、
たぶん好きなことをやってたら上手になる?
なら……
石好きの俺が《岩石刻印》を使えば?
まぁ、やってみないと始まらない。
単独発動で無理なら、
2つを掛け合わせる!
「《好きこそものの上手なれ》」
「《岩石刻印》」
「あっ」
スキルを発動させたものの、
石に何を刻むかを考えていなかった。
スキル効果が切れる前に決めよう。
今度は新しい石に何を刻もうか……
あっ。
俺はひらめく。
土の魔術、土壁だ。
落石の時も父上が使っていた。
ある意味万能な土魔術だ。
魔術陣にも丸は多用する。
もし、石に魔術を刻んだらどうなるのだろうか。
俺はそれが気になった。
気になることはとことん探求!
今日はそれを信条にしよう。
石には
美しい魔術陣が刻まれた。
すこし斜めの角度で刻まれた部分を見る。
「おっ」
俺は声を漏らす。
先程の石と比べてみる。
気づかないほどだが、丸がより美しく洗練されているように思える。
でも主観かもなぁ……
いや、やはり、好きこそものの上手なれは、
好きな事象に対してのバフらしい。
思うが勝ちだ。
そして……
ここからが始まりだ。
この石に魔力を流したらどうなるのか。
異世界ファンタジーには”魔道具”というものが登場する。
その”魔道具”は、魔力を流すだけで使うことができる……
らしい?
これ、ただの石だけど魔道具って言えるのか?
まぁ、やってみるか。
石を持っている右手に魔力を集中させ、
流すイメージで……
魔力を流した――
ゴゴゴゴゴゴッッ!!
地面が大きく震える。
足元から土がせり上がり、
みるみる巨大な壁を形作っていく。
「えっっ……!?」
俺は驚き、動揺する。
石に刻まれた魔術が発動し、土の壁が生成された。
だが、
俺が驚いたのはそこではない。
”規模”なのだ。
本来土壁は、
俺の身長二倍ほどの壁が出来上がる魔術だ。
しかし、
俺の前にある土の壁は、
明らかに二倍ではすまないような大きさだ。
五倍……
いや、六倍か?
俺の目測があっていれば、
本来の魔術の三倍の規模だ。
「待て待て待て……」
これ、土壁大きすぎないか?
そして、俺は土壁の周りを一周回る。
コンコン、と拳で叩く。
硬さも申し分ない。
というか、通常より硬いぐらいだ。
石に魔術を刻めば、魔力を注ぐだけで魔術を発動させることができる。
「……」
いや、規模はおかしいけれども……
もしかして……
これ、かなり便利なんじゃないか?
一から魔術陣を描かずに良いし、
長ったらしい詠唱をしなくてもよいのだ。
「……」
「まぁ、そんなわけないか!」
「父上が見抜けないくらいなんだ。」
「きっと、大したスキルじゃない」
俺はそう結論づけた。
……その考えが、とんでもない勘違いだと知るのは、まだ少し先の話である。
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