46. アルボルン山脈
サウベリア大森林を抜けた。
数日ぶりに視界が一気に開ける。
「……おぉ」
思わず声が漏れた。
目の前には、
空へ突き刺さるような巨大な山々。
アルボルン山脈。
雪をいただく峰。
灰色の岩肌。
ところどころに見える赤茶色の地層。
風が吹き抜けるたび、小さな砂粒が舞い上がる。
「でかい……」
さすが皇国最大の山脈だ。
地図で見ていた何倍も大きい。
この規模の山脈は他の大陸にもないんじゃないか?
登山道を歩く。
そしてそこには、
岩、岩、岩...
「……」
最高だった。
道端には石英。
花崗岩。
黒い玄武岩。
雲母の混じった岩石。
森も多かったが、
ここは別格だ。
俺は歩くたびに立ち止まる。
「これも」
収納。
「おっ」
収納。
「これは初めて見る」
収納。
石好きにとって、
ここはまさに楽園だった。
そして、
昼過ぎ、俺の足が止まる。
「……」
崖の途中。
太陽の光を受けて、
銀色に輝く筋が見えた。
「……あれ」
近付く。
間違いない。
鉱脈だ。
「魔銀……?」
まだ断言はできない。
でも、
あの輝きは普通じゃない。
もし本当に魔銀なら。
価値は計り知れない。
「……」
掘りたい。
ものすごく掘りたい。
”今すぐ”
”ここで”
”全力で”
これらの石好き三大鉄則がざわついていた。
でも……
地図を見る。
アウレリアまで、
あと少し。
ここで採掘を始めたら、
一日じゃ終わらない。
二日、三日⋯
いや。
一週間いても足りないかもしれない。
「……」
俺は岩に腰を下ろした。
悩む。
ひたすら悩む。
石か。
目的地か。
「いや」
「でもなぁ……」
石。
「……」
アウレリア。
「石」
「街」
「石」
「街」
「…………」
完全に思考が停止した。
結局、
今日は何もしなかった。
テントを張る。
夕飯を食べる。
星空を見る。
でも、
頭の中は、
「掘りたい」
その一言だけ。
寝袋へ入っても、
鉱脈のことばかり考えてしまう。
「……」
「一回だけ」
「いや」
「どうせなら全部」
「……」
気付けば夜中だった。
俺は寝返りを打つ。
「明日決めよう」
そう呟き、
ようやく目を閉じた。
後回しにしても同じことなのに…
このときの俺はあまりその事を考えてなかった。
魔銀って結構高い鉱石……
でも、もうちょっとで鉱石市場――
いや、アウレリアに着く…




