44. 疾風の刻印石
朝日を背に、俺はサウベリアの街を後にした。
目指すは西、
行政都市アウレリア。
地図によれば、
ここから数日歩けばサウベリア大森林へ辿り着くらしい。
街道は整備されていて歩きやすい。
道端には黄色や白の花が咲き、小鳥のさえずりが聞こえてくる。
「平和だなぁ……」
三日前までの騒ぎが嘘みたいだ。
俺は思わず空を見上げた。
青い。
どこまでも青い。
「よし」
収納の刻印石から水筒を取り出し、一口飲む。
冷たい。
井戸で汲んだままの冷たさだった。
「時間停止収納、最高だな」
旅をするなら、この刻印石は本当に便利だ。
腐らない。
冷たい。
荷物も重くならない。
……作って正解だった。
昼頃、
俺は、街道で一人の冒険者とすれ違った。
軽装だが、歩く速度がおかしい。
異様に速い。
「おっ?」
俺は思わず目で追った。
地面を蹴るたび、風が巻き起こる。
「《疾風》」
男がぼそりと呟く。
その瞬間、
身体が風に押されたように前へ飛び出した。
「速っ!」
ほんの数秒で姿が見えなくなる。
「……」
《疾風》
移動速度を上げるスキルか。
俺はしばらく立ち止まり、さっきのスキルを思い返した。
「風で身体を押す……」
「なら」
刻印できるかもしれない。
俺は近くの平らな岩へ腰掛ける。
袋から小さな翡翠を取り出した。
昨日買った石の中の一つだ。
「疾風」
記憶を辿る。
魔力の流れ。
風の向き。
身体へ流れる魔力。
「《刻印》」
淡い緑色の光が石を包み込む。
数秒後、
光は静かに消えた。
「できた……?」
俺は立ち上がり、走る姿勢を取る。
そして、
半信半疑で石を握る。
「疾風」
瞬間、
足元に風が集まった。
走ってみると……
「うおっ!」
俺はあまりの速さによろける。
思った以上の加速だ。
なれないとコケてしまいそうだ。
「だが……」
十歩ほど走っただけなのに、普段の二倍くらい進んでいる。
「すごっ!」
思わず笑ってしまう。
「これは便利だ!」
戦闘でも使える。
逃げる時も、
旅でも、
……何より。
「石一つでこんなことができるなんて」
やっぱり刻印は最高だ。
夕方、
太陽が西へ傾き始める。
「今日はこの辺でいいかな」
簡易結界石を設置する。
薄い膜が周囲を包み込んだ。
テントを張る。
鍋を取り出す。
保存していた肉と野菜を取り出し、簡単なスープを作る。
収納の刻印石のおかげで、どれも新鮮なままだ。
「いただきます」
一人で食べる夕食。
少し寂しい。
けれど、不思議と嫌ではなかった。
静かな夜、
虫の鳴き声に、満天の星空。
そして、すぐ隣には大切な石たち。
「明日はいよいよ」
サウベリア大森林。
未知の森、未知の鉱石、未知の出会い。
胸を躍らせながら、俺は静かに目を閉じた。
いやぁ、
最初の方は許可とかちゃんと聞いていたのに、もはや聞かずにですねぇ。
慣れたからかな?
でも、スキルなんてそんな簡単に模倣(この場合刻印ですけど)することはできないので、
ちょっと弱肉強食なところがあるこの世界では普通だと思います。
しっかりこの世界に順応してきてますね。(石に夢中ってのもあると思いますが)
―――
なんとなくですが、
この国の貨幣を記しておきます。
―――――――――――――――
小銅貨:1メルクル
大銅貨:10メルクル
小鉄貨:100メルクル
大鉄貨:1,000メルクル
小銀貨:10,000メルクル(1万)
大銀貨:100,000メルクル(10万)
小金貨:1,000,000メルクル(100万)
大金貨:10,000,000メルクル(1000万)
白金貨:100,000,000メルクル(1億)
魔銀貨:1,000,000,000メルクル(10億)
―――――――――――――――
って感じです。
一応もっと上があるのですが……
まだまだ出会うことはなさそうなので書かないでおきます。(後でのお楽しみ的な?)
今のところバルトくんが見たことがあるのは小金貨までですね。
ぜひとも、もっと格が上の貨幣も見てみたいです。




