42. 石好きの目的地
祭りから一日、
街は、いつもの日常を取り戻し始めていた。
冒険者たちは依頼へ向かい、
商人たちは商売を再開し、
子どもたちは何事もなかったかのように街を走り回っている。
あれだけの戦いがあったとは思えないほどだった。
俺は宿の机に地図を広げていた。
「さて……」
次の目的地。
それを決めるためだ。
地図の上で、指を西へ滑らせる。
そこにあるのは――
サウベリア大森林
そして、その先に
”アルボルン山脈”
さらに越えた場所に、アルボルの森
その南に、行政都市アウレリアがある。
「アウレリアか……」
名前だけ聞いても、大きな街だということは分かる。
だが、俺が興味を持った理由は別にある。
地図の端に、小さく書かれていた文字。
鉱石市場
その四文字だった。
「……」
俺の目は輝いている。
「鉱石市場」
なんて魅惑的な響きだろう。
前世でも鉱物展や鉱石ショップを見つけると、時間を忘れて眺めていた。
未知の石。
知らない鉱物。
まだ見たことのない輝き。
それが大量に集まっている場所。
「行くしかない」
即決だった。
しかし、
一つ問題がある。
「遠い」
地図を見る限り、数日では到着しない。
途中には大森林。
さらに巨大な山脈。
普通なら簡単な旅ではない。
「でも」
俺は窓の外を見る。
広がる空、自由な風。
「それでも行きたい」
追放されたからこそ得た自由。
それを無駄にしたくなかった。
翌日、
冒険者ギルドへ向かう。
受付嬢さんへ声をかけた。
「西方面へ行こうと思うんですが」
「西……ですか?」
受付嬢の表情が少し変わる。
「サウベリア大森林方面ですね」
「はい」
「目的は?」
少し迷う。
正直に言っていいのだろうか。
でも、
「石です」
答えはそれしかなかった。
「……」
受付嬢は数秒沈黙した。
そして、
「バルトさんらしいですね」
笑った。
「ただ、注意してください」
「サウベリア大森林は危険区域です」
「魔物も多いですし、道に迷う冒険者も少なくありません」
「分かっています」
俺は頷く。
「準備はします」
ギルドを出た後、
俺は昼食を食べた。
そして、
俺は今から街の店を回る。
まずは……
旅道具だ。
「いらっしゃいませ!」
店に入ると、
店長らしき男性が笑顔で迎えてくれた。
ちょうど客はいない。
「えっと……」
「旅道具が欲しいんですが」
「旅かい?
それなら一通り揃ってるよ」
店主は慣れた手つきで商品を並べていく。
テント。
寝袋。
毛布。
調理器具一式。
簡易結界石。
ランタン。
ロープ。
方位磁針。
水筒。
短剣。
「これだけあれば、長旅でも困らないよ」
「全部ください」
「……全部?」
店主が目を丸くする。
「はい」
「豪快なお客さんだねぇ」
会計を済ませると、
旅道具は収納の刻印石へ。
便利だ。
荷物はほとんど増えない。
次は食料店。
パン
肉
野菜
果物
穀物
調味料
をそれぞれ一か月分。
ちなみに、収納をあれこれ試していたときに
水を一週間入れていたが腐らなかった。
おそらく、収納の中で時間が停止しているのだろう。
腐る心配はない。
まとめ買いした方が楽だった。
そして――
「石を入れる袋」
これが重要だった。
「……」
気付く。
普通の旅人なら、
食料や武器を優先する。
俺の場合、
石を入れる場所を最初に考えている。
「まあ……俺だし」
いや、
収納の刻印石があるからいらないか……
俺は手に取った袋を、
そっと元の場所へ戻した。
水も収納の刻印石に大量に入れておけば問題ない。
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