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34. 凶暴ウサちゃん来たる

 ドドドドドドドドッ!!

 地鳴りが響く。

 村人たちは顔を青くしながら、急いで家の戸締まりをしていた。

「急げ!」

「柵を閉めろ!」

「子どもたちは家の中へ!」

 サウブ村全体が慌ただしく動き回る。

 一方で俺は、迫ってくる白い大群を見つめていた。

「……」

 確かにウサギだ。

 耳が長い。

 丸い尻尾。

 ふわふわした毛並み。

 見た目だけなら、ものすごく可愛い。

「可愛いなぁ」

 思わず呟く。

 しかし次の瞬間、

 ガリッ!!

 一番先頭の一匹が、村の木柵へ飛びついた。

 鋭い前歯で木をかじり始める。

 バキッ!

「えっ」

 太い丸太が、一瞬で噛み砕かれた。

「……可愛くない」

 前言撤回だった。



 村長が俺へ駆け寄ってくる。

「旅人さん!」

「頼む!」

「手を貸してくれ!」

「もちろんです」

 ここまで来たら断れない。

「俺にできることなら」

「ありがとう!」

 村長は深く頭を下げた。

 俺は収納から土壁の刻印石を取り出す。

「土壁!」

 ゴゴゴゴゴゴッ!!

 村の入口に巨大な土壁が出現する。

「おぉ!」

「壁が!」

 村人たちから歓声が上がる。

 その直後、

 ドガガガガガッ!!

 先頭のウサギたちが壁へ激突した。

「止まった!」

 ……と思ったのも束の間、

 ガリガリガリガリ。

「え?」

 ウサギたちは土壁までかじり始めた。

「土も食べるの!?」

 思わず叫ぶ。

「何でも食べるんじゃ!」

 村長が叫び返した。

「この魔物は食欲の塊なんじゃ!」

「なんて迷惑な」



 俺は次の刻印石を握る。

「収納」

 近くの大きな岩を収納へ入れる。

「よし」

 そして、

 岩を取り出す。

 ドスン!

 ウサギの前へ落とす。

 すると、

 数十匹のウサギが一斉に岩へ群がった。

 ガリガリガリガリ。

「……」

「石まで食べるのか」

 俺は呆れてしまった。

 しかし、

 そのおかげで村への突撃は少し止まった。

「なるほど」

「食べ物で気を逸らせるのか」

 だが、

 後ろからさらに大量のウサギが押し寄せる。

「きりがない!」

 村人たちも必死に応戦する。

 弓、槍、火魔法。

 それでも数が多すぎる。

「このままじゃ押し切られる」

 その時だった。

「バルトさん!」

 アーシャさんが駆け寄ってきた。

「あれ? 別の村だった気がするんですけど」

 俺はきょとんとする。

「それは、後で説明します」

「癒しなら任せてください!」

 淡い緑色の光が村人たちを包む。

「疲れが取れる……!」

「傷が治っていく!」

 《癒し》のスキルだ。

「助かります!」

 俺も笑顔で返す。

 だが、

 俺はすぐに違和感を覚えた。

「……待てよ」

 周囲では、村人たちが様々な魔法を使っている。

 火

 風

 水

 土

「これ」

「全部、刻印できるんじゃないか?」

 思わず目が輝いた。

 俺の悪い癖である。

 戦場なのに、新しい刻印石のことを考えてしまった。

「いやいや」

 今は戦いだ。

 あとでお願いしよう。

 そう心に決める。

 その瞬間、

 村の東側から、さらに大きな悲鳴が聞こえた。

「村長!」

「東門が破られました!」

「何っ!?」

 村長の顔色が変わる。

 俺も振り返る。

 そこには。

 これまでより一回り大きなウサギが立っていた。

 体長は犬ほど、

 真っ赤な目、鋭い牙。

「親玉……?」

 そのウサギは大きく跳び上がると、

 ドォン!!

 一撃で門を吹き飛ばした。

「……」

 俺は収納から新しい刻印石を取り出す。

「これは」

「ちょっと本気でいかないとな」

 石好きの冒険者は、小さく笑った。

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