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33/50

33. 行き着く先はサウブ村

「待ってぇぇぇぇぇ!!」

「ギャアアアアッ!!」

 鳥たちの大合唱が森中に響く。

 その後ろでは、

「グオオオオッ!!」

 熊まで全力で走っていた。

「なんで熊まで追いかけてくるんだよ!」

 思わずツッコミを入れる。

 いや、よく考えれば熊も鳥に追われているだけなのだが、

 結果的に、俺たちは全員同じ方向へ逃げていた。

「バルトさん!」

 女性が息を切らしながら叫ぶ。

「こっちです!」

「分かりました!」

 道なんて気にしている余裕はない。

 木を避け、岩を飛び越え、小川を渡る。

 とにかく走る。



 数十分後、

「……あれ?」

 ふと気付く。

 鳥の鳴き声が聞こえない。

 振り返る。

「いない」

 鳥も、熊も、誰もいなかった。

「助かったぁ……」

 その場へ座り込む。

 女性も同じように座った。

「はぁ……」

「死ぬかと思いました」

「俺もです」

 二人で苦笑する。

 しばらく休憩してから立ち上がる。

「さて」

「街へ戻りましょうか」

 俺は周囲を見渡した。

「……」

 見たことのない景色だった。

「え」

 一本道だと思っていた森は、いつの間にか全く違う場所へ変わっていた。

 大きな杉の木。

 初めて見る花。

 遠くには煙が上がっている。

「ここ……」

「どこですか?」

 女性も困った顔になる。

「分かりません」

「……」

 二人同時にため息をついた。

 完全に迷子だった。

 煙の方向へ歩いてみる。

 森を抜けると、

「あ」

 そこには小さな村があった。

 木造の家が二十軒ほど並び、畑が広がっている。

 入口には木の看板。

 そこには、


サウブ村


 と書かれていた。

「村だ!」

 思わず声が弾む。

「助かりましたね」

 女性も安心したように笑った。

 村へ入る。

 すると、

「あれ?」

 村人たちの様子がおかしい。

 みんな慌ただしく走り回っていた。

「急げ!」

「柵を閉めろ!」

「子どもを家へ!」

 何かが起きている。

 俺は近くのおじさんへ声を掛けた。

「何かあったんですか?」

 おじさんは驚いたようにこちらを見る。

「旅人か!?」

「早く避難しろ!」

「もうすぐ来る!」

「何がです?」

「ウサギだ!!」

「……」

「え?」

 聞き間違えたかな。

「ウサギ?」

「そうだ!」

「大量の凶暴ウサギだ!」

「毎年この時期になると山から降りてくる!」

「今年は特に多い!」

「何匹くらいです?」

 俺は軽い気持ちで聞いた。

「三千匹はいる!」

「……」

 俺は固まった。

「三千?」

「それ、ウサギですよね?」

「ウサギだ!」

「でも普通のウサギじゃない!」

「畑を荒らし!」

「人を噛み!」

「家まで壊す!」

「……」

 もうそれはウサギではない気がする。



 その時、

 村の見張り台から鐘が鳴り響いた。

 カン!

 カン!

 カン!

「来たぞーーーっ!!」

 村人の叫び声。

 俺は振り返る。

 遠くの草原で、土煙が上がっていた。

 ドドドドドドド……。

 最初は小さな白い点だった。

 しかし、

 どんどん近付いてくる。

「……」

 白い。

 ふわふわ。

 耳が長い。

「本当にウサギだ」

 だが、

 数が異常だった。

 地平線を埋め尽くすほどのウサギが、一斉に村へ向かって走ってきている。

「これ……」

「三千どころじゃないんじゃ……」

 村長らしき老人が青い顔で呟く。

「今年は過去最悪じゃ……」

 俺は収納の刻印石へそっと手を置いた。

 どうやら、

 今日も静かな一日にはならないらしい。

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