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31. 小川のほとりは天国です

「妹とはぐれてしまって……」

 助けた女性は困ったように言った。

 年齢は二十歳前後だろうか。

 栗色の長い髪に、優しそうな雰囲気をまとっている。

「この辺りで薬草を採っていたんですけど」

「気付いたら姿が見えなくなっていて……」

「なるほど」

 俺は頷いた。

「一緒に探しましょう」

「ありがとうございます!」

 女性は嬉しそうに頭を下げた。



 二人で川沿いを歩く。

 しばらくすると、大きな川から一本の小川が分かれている場所へ出た。

 さらさらと水が流れ、底まではっきり見えるほど透き通っている。

 そして――

「……」

 俺の足が止まった。

「どうしました?」

「いや、その……」

 視線の先には、小川いっぱいに転がる丸い石。

 白。

 黒。

 赤茶色。

 緑がかったものまである。

 水に濡れて太陽の光を反射し、一つひとつが宝石のように輝いていた。

「天国だ……」

「え?」

「いや、何でもありません」

 何でもある。

 ものすごくある。

 気付けば俺はしゃがみ込み、一つの石を手に取っていた。

「きれい……」

 丸く磨かれた石肌。

 何年、何十年も水に転がされて、この形になったのだろう。

「自然ってすごいなぁ」

 思わず見入ってしまう。

「バルトさんって、本当に石が好きなんですね」

 女性はくすりと笑った。

「ええ」

「前世から……」

「?」

「あ、いや」

「昔からです」

 危ない。

 うっかり転生者だと口にするところだった。

 なぜだろう。

 たまに言ってしまいそうになる……

 気をつけねばな。

 だが、

 せっかくだ。

 拾った石を何個か収納へ入れる。

「収納」

 淡い光とともに石が消える。

「便利ですね、その魔道具」

「お気に入りなんです」

 実際には自作だけど。

 そこは秘密だ。



 石を眺めながら歩いていると、ふと一つの石が目に入る。

 他より少し大きい。

 灰色で、表面には細かな筋が入っていた。

「この石……」

 何となく気になった。

 手に取る。

 ずっしり重い。

「刻印に向いてそうだ」

 俺は収納へしまう。

「妹さんは、どんな方なんですか?」

「元気な子です」

「方向音痴なんですけどね」

「それは心配ですね」

「ええ」

 女性は苦笑した。

 その時だった。

 ガサガサッ。

 森の方から音がした。

「!」

 二人同時に振り向く。

「妹さんですか?」

「分かりません……」

 木々が揺れる。

 何かが近づいてくる。

 ドスン。

 ドスン。

 重い足音。

 そして姿を現したのは――

「く、熊!?」

 体長三メートルはありそうな巨大な熊だった。

 あれ?

 あの人じゃないよな?

 まぁ、そんなわけないか。

 巨大な熊。

 黒い毛並み。

 鋭い爪。

 赤い目。

「ま、魔物!」

 女性の顔が青ざめる。

「下がってください」

 俺は前へ出る。

 収納から刻印石を取り出す。

「土壁」

 ゴゴゴゴッ!!

 熊との間に巨大な壁が現れる。

 しかし、

 熊は止まらない。

 ドォン!!

 一撃で土壁を叩き割った。

「えぇ!?」

 予想以上の力だ。

「これは……」

 ちょっと強いぞ。

 俺は次の刻印石へ手を伸ばえながら、小さく笑った。

「久しぶりに、本気かな」

出来事に挟まれたところだからか、

少し文字数少なめになってしまい、すみません……

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