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30. 川のお魚

 翌朝、

「さて」

 俺、バルト=ソディアは、いつものように冒険者ギルドへやって来た。

 飛び級試験の結果はまだ出ていない。

 待っているだけでは暇だ。

 それなら依頼を受けた方がいい。

「何かいい依頼は……」

 依頼掲示板を眺める。

 薬草採取。

 荷物運び。

 森の見回り。

 そんな中、一枚の紙が目に留まった。


川の凶暴魚討伐

報酬:小銀貨8枚

最近、街の西を流れる川で大型魚が暴れ、漁師たちが困っています。

数は数匹程度と思われます。


「これにしよう」

 魚なら薬草採取より報酬も高い。

 石も拾えそうだ。

 ……最後の理由が一番大きいかもしれない。



 受付で依頼を受ける。

「川の依頼ですね」

「はい」

 受付嬢は少しだけ真剣な顔になる。

「相手は魚ですが、油断はしないでください」

「噛みつかれると危険です」

「分かりました」



 一時間後、

 街の西側を流れる大きな川へ到着した。

 水は澄んでいる。

 太陽の光を受けて、きらきらと輝いていた。

「きれいだなぁ……」

 思わずしゃがみ込む。

 そして、

 川辺を見た瞬間。

「……!」

 石だ。

 丸く磨かれた小石、

 白い石、

 黒い石、

 透明感のある石……

「天国じゃないか!」

 依頼のことを忘れ、夢中で石を拾い始める。

「この模様、いいなぁ」

「おっ、この石は層がきれいだ」

「これは刻印に向いてそう!」

 気付けば袋の中は石でいっぱいだった。

「……はっ」

 我に返る。

 収納の刻印石を使えばよかったのでは?

「違う違う」

「今日は魚退治だった」

 危うく石拾いだけで帰るところだった。



 川の中央を見る。

 すると、

 バシャァァン!!

 巨大な水しぶきが上がった。

「いた」

 体長一メートルほどの魚。

 鋭い歯を持ち、勢いよく跳ねている。

「あれか」

 俺は土壁の刻印石を握る。

「土壁!」

 ゴゴゴッ!

 川岸から土壁がせり上がる。

 魚は驚き、そのまま壁へ激突した。

 ドン!

「今だ」

 さらに石を投げる。

 ゴツン!

 命中。

 魚は気絶した。

「……え」

 終わった?

 思っていたより弱い。



 その時だった。

「きゃあっ!」

 女性の悲鳴が聞こえた。

「!」

 振り向く。

 川の少し上流。

 一人の女性が流れの速い場所へ足を取られていた。

 しかも、

 その近くには、さっきより大きな魚が何匹も集まっている。

「まずい!」

 俺はすぐに走り出した。

「土壁!」

 川の中へ土壁を出現させる。

 流れが少し弱まる。

 その隙に女性へ手を伸ばした。

「つかまって!」

「は、はい!」

 腕を引き、岸へ引き上げる。

「大丈夫ですか?」

「ええ……ありがとうございます」

 女性は安心したように息をついた。

 その瞬間、

 バシャァァァン!!

 今度は巨大な魚が水面から飛び出した。

「まだいたのか!」

 俺は収納の刻印石から石を取り出す。

 そして、

 思い切り投げた。

 ゴン!

 魚の額へ直撃し、

 魚は再び川へ落ちていく。

「石って意外と強いな」

 しみじみ思った。



「あの……」

「ありがとうございます」

「私は大丈夫です」

「それは良かった」

「俺の名前は、バサ――」

「あっ、バルトです」

 危ない。

 本名を言いかけた。

「あっ、私はサーリャです」

 俺の名乗りに合わせてくれたのか、

 女性も自分の名前を答える。

 依頼も終わった。

 女性も助けられた。

 石もたくさん拾えた。

 今日はいい日だ。

 そう思った、その時、

 女性が首をかしげる。

「あれ?」

「……どこだろう」

「どうしました?」

「妹とはぐれちゃいました」

「……え?」

 また厄介事に巻き込まれそうなバサルト……

 いや、バルトだった。

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