↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/50

3. スキル鑑定の儀

 カタンカタン。

 馬車の車輪の回る音がする。

 今、俺はヴァルネスと教会へ向かう馬車に乗っていた。

「申し訳ありません、バサルト様」

「いや、謝ることないよ」

 彼を見ると、彼は申し訳なさそうな顔をしていた。

「いや、崖崩れに巻き込まれてまだ数日だというのに連れ出してしまい」

「謝り足りないぐらいです」

 今、ヴァルネスが誤っている原因は、

 3日前の崖崩れのことだ。

 俺は、崖崩れで軽く怪我してしまった。

 だからこそ、怪我して数日の俺をできるだけ外に出かけさせたくはなかったのだろう。

 頭を軽く打ったぐらいだから、大丈夫なんだけどね……

 馬車の窓から顔を出し、俺は馬車の進む方向を見る。

 道中はいい景色だ。

 その先には、大きな街があった。

 あそこに教会があるそうだ。

 なぜ俺が教会に行っているのかというと……

 この世界では、十三歳になると神からスキルを授かる。

 授かったスキルは一生を左右するものだ。

 誰もが、スキルを活かして人生を過ごしていく。

 だからこそ、

 土魔術の家系である俺は、

 土属性の魔法系スキルを授かることが望ましいのだ。

 窓から頭を出したままの俺は、空を見て放心していた。

 スキルなんて言う大層なものがあるなんて、やっぱり異世界だねぇ、と

 謎にたそがれているだけだ。

 そうしていると、馬車が減速し始め、最終的に止まった。

 放心していたから街に入ったことすら気づかなかったのかは分からないが、

 教会についたようだ。

 着いたらすぐに、ヴァルネスが、馬車の扉を開け俺に手を差し伸べる。

 手を取って馬車の外に出ると、そこは、街らしい街だった。

 いつもは領主邸から外に出ることはあまりないし、

 外出したのはたぶん3日前が始めてだろう。

 教会らしき建物の扉が開くと、

 父を先頭に建物の中に入っていく。

 教会の中は豪華でありながら質素だった。

 父は、教会の最前列の席に座り、ヴァルネスはその横に立ち、俺を見守る。

 俺は、教会の一番奥にいる神父のような人の前で膝をつき、目をつむる。

 前世で読んだ異世界小説では、

 スキルを授かるときはこんな場面だった気がする。

 少し目を開けて前をちらりと見てみると、

 神父はなにやら、魔法陣を描いている。どうやら、魔法を使うようだ。

 おそらく鑑定の魔法だろう。

 それから数秒で、

「目を開けてこちらを見てください」

 と言われた。

 言われたとおりに目を開けて神父の方を見ると、

「あなたのスキルは……」

 神父の表情がわずかに変わる。

「……二つ?」

 神父は魔法陣と俺の顔を見比べている。

「どうしたんですか?」

 何やら悩んでいるので、聞いてみると、

「あぁ、すみません」

「あなたのスキルは」

「《好きこそものの上手なれ》と《岩石刻印》の二つです」

「二つのスキルを持つのは珍しいことなのです」

「それを誇ってお過ごしください」

 それを言われたとき、俺はホッとした。

 神父のこの反応ならば、人生で困ることはないだろう。

 安堵したところで、さすがに父にお褒めの言葉をもらえると思い、後ろを振り返る。

「父上!」

 しかし、俺の目線の先には俺が望まなかった光景が待っていた。

 父が頭を抱えて下を向いていたのだ。

「あっ……」

 俺は察してしまった。

 このスキルは、”父の望んだスキルではなかった”ということを。

 しばらく沈黙の空気が流れる。

 だが、ヴァルネスはこの状況はまずいと感じたのか、

 俺の方に歩いてきて、

「ブレイス様は、あなたに失望したわけではないはずですよ」

 と優しい声でささやいてくれた。

 もし、父が敵になってしまっても、ヴァルネスだけは、俺の味方でいてくれる、

 と少しだけ安堵した。

 だが、問題はこの二つのスキルだ。

 《好きこそものの上手なれ》と《岩石刻印》……

 《好きこそものの上手なれ》は、石が好きでそれをこの人生ずっと楽しみ続けたい俺からしたら、良いスキルだろう。

 おそらくバフ系のスキル。

 《岩石刻印》は……

 使い方はよくわからないが、

 名前からするに、石に何かを刻むスキルなのだろうか。

 父の反応から、マイナスな感情が溢れる中、

 俺は、スキルに対するプラスな面を見ることに専念した。

 一体俺はどうなってしまうんだろう……

 よくある転生モノのように”追放”されてしまうのか?

 教会の中は沈黙に包まれるなか、

 父は、無言で教会を出るのであった。

「バサルト様」

 振り向くと、神父が俺に話しかけていた。

「《岩石刻印》……」

「その名を、文献で一度だけ見たことがあります」

「その文献も途中で途切れていて、詳しくはわかりませんが」

 神父からはその一言だけだった。

 《岩石刻印》……

 石に何かしら刻めるのなら、

 石好きの俺からしたらむしろ当たりスキルでは?


 このときの俺は、まだ知らない……

 石に癒やしを求め続けた人生が、この世界で伝説になることを。

評価をお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。