28. 飛び級試験を受けましょう
翌朝、
魔術士ギルドの演習場には、多くの受験者が集まっていた。
年齢は様々だ。
二十代くらいの魔術士。
三十代のベテランらしき人物。
ローブを身にまとった女性。
筋骨隆々の男性。
その中で、十代半ばの俺は明らかに浮いていた。
「……子ども?」
「あれも受験者か?」
「親の付き添いじゃないのか?」
ひそひそと話し声が聞こえる。
まぁ、そう思われても仕方ない。
俺自身、この年齢で飛び級試験を受ける人がいるとは思っていなかった。
というか、飛び級試験の存在すら知らなかったわけだから――
人生どう転ぶかわからないな。
俺は心のなかで苦笑した。
「静粛に」
白いローブをまとった試験官が前へ出る。
周囲が静まり返った。
「これより、魔術士ギルド飛び級試験を開始します」
「合格した者には、その実力に応じたランクを授与します」
「なお、不正行為は禁止です」
試験官は受験者を見回した。
「それでは、第一試験」
「魔力制御を始めます」
演習場の中央には、透明な水晶玉が十個並んでいた。
「この魔導具へ一定量の魔力を流してください」
「魔力が安定しているほど高評価となります」
順番に受験者が前へ出る。
最初の男性。
水晶は青く光る。
しかし光は強くなったり弱くなったりを繰り返した。
「合格」
試験官が淡々と記録する。
次の女性。
こちらは安定している。
「良好」
そんな評価が続いていく。
「次」
「バサルト=ガリソディア」
俺の番だった。
水晶玉の前へ立つ。
右手をそっと添え、深呼吸を一回。
そして、
魔力をゆっくり流す。
焦らず、一定に……
ヴァルネスとの訓練を思い出す。
水晶が静かに黄金色へ輝いた。
その光は揺らがない。
一秒、二秒、三秒⋯⋯
ずっと一定だった。
「……」
試験官が少し目を見開く。
「終了」
俺は手を離す。
「非常に安定しています」
「おぉ……」
後ろから小さなどよめきが起きた。
「続いて第二試験」
「魔術の精度」
今度は的が十枚並べられた。
「好きな魔術を使ってください」
「命中率と威力を評価します」
受験者たちが次々と魔法を放つ。
火球
風刃
水槍
土槍
どれも見事だった。
……刻印したい。
いや、
今は試験だ。
「次」
「バサルト」
俺は小さく頷く。
ポケットから一つの石を取り出した。
試験官が首をかしげる。
「魔道具ですか?」
「はい」
嘘ではない。
石だ。
「使用を許可します」
よし、使える。
俺は土壁の刻印石へ魔力を流した。
「土壁」
ゴゴゴゴゴッ!!
巨大な土壁が一瞬で現れた。
「……」
会場が静まり返る。
「速い」
「無詠唱?」
「いや、魔道具か?」
試験官が土壁を叩く。
コンコン。
鈍い音が響く。
「硬度も十分」
「発動速度、極めて優秀」
紙に何かを書き込んだ。
すると、一人の試験官が言った。
「もう一つ見せてもらえますか?」
「別系統の魔術を」
……そう来たか。
俺は少し考える。
癒しは目立ちすぎる。
収納も評価しづらい。
なら、
「承知しました」
俺は探知の刻印石を取り出した。
「探知」
淡い光が周囲へ広がる。
試験官たちが目を見合わせた。
「索敵魔術まで扱えるのですか」
「便利ですね」
俺は苦笑した。
「石のおかげです」
半分本当だった。
第二試験が終わる。
試験官たちは小声で何かを話し合っている。
「面白い」
「あの魔道具……」
「いや、魔術制御も本人の実力だ」
どうやら評価は悪くないらしい。
最後に、
「第三試験」
試験官が笑った。
「これは実戦形式です」
「受験者同士ではありません」
「魔導人形を相手に戦っていただきます」
演習場の奥、
巨大な石人形がゆっくりと立ち上がる。
ゴゴゴ……
「……石」
思わず目が輝いた。
石でできた人形。
美しい。
「違う違う」
今は見惚れている場合じゃない。
倒さなければ。
俺は静かに収納の刻印石へ手を伸ばした。
この試験、少しだけ楽しみになってきた。
評価をお願いします!




