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27. 飛び級なんてあるの?

 翌日、

 俺は朝早くから魔術士ギルドへ向かっていた。

 昨日聞いた「飛び級試験」のことが、どうしても気になっていたからだ。

「おはようございます」

 受付へ行くと、昨日対応してくれた受付嬢が微笑んだ。

「お待ちしておりました、バサルト様」

「今日は飛び級試験の説明ですよね?」

「はい」

 受付嬢は一枚の冊子を取り出した。

「まず、魔術士ランクは通常、Fから順番に昇格していきます」

 俺も頷く。

 昨日聞いた内容だ。

「ですが、ごく稀に」

「実力が明らかにランクとかけ離れている方がいます」

「そのような方のために設けられているのが——」

「飛び級試験です」

 受付嬢はそう言って、冊子を開いた。

「試験内容は全部で三つです」

「魔力制御」

「魔術の精度」

「応用力」

「応用力?」

「はい」

「決められた魔術を撃つだけではなく」

「状況に応じて使い分けられるか」

「そこまで見られます」

「なるほど……」

 意外と本格的だ。

「ちなみに」

 俺は気になっていたことを聞いてみる。

「Bランクって、どれくらいすごいんですか?」

 受付嬢は少し考えてから答えた。

「街一つに数人程度ですね」

「えっ」

「その街で名の知れた魔術士」

「そのくらいの実力です」

「……」

 思っていた以上だった。

「もちろん」

「飛び級試験でBランクまで到達する方は、数年に一人いるかどうかです」

「そんなにですか」

「はい」

 すると、

 隣で書類を整理していた年配の男性職員が話に加わった。

「最近はBランクどころか」

「Cランク合格でも大騒ぎになりますよ」

「それほど難しいんですね」

「ええ」

「飛び級試験は"才能の証明"とも言われていますから」

 俺は少し考える。

(刻印石は禁止って書いてないよな。)

 冊子をもう一度見る。


 禁止事項

・他者の妨害

・試験官への攻撃

・危険な禁術


 ……刻印石については書いていない。

 つまり、

 ”使っていい”

 少しだけ口元が緩んだ。

「受験されますか?」

 受付嬢が尋ねる。

「もちろん」

 即答だった。

「お願いします」

 受付嬢は少し驚いたあと、優しく笑う。

「承知しました」

「では、明日が試験日になります」

「明日ですか」

「はい」

「緊張します?」

「少しだけ」

 本当は、

 緊張より楽しみの方が大きかった。

 たくさんの魔術が見られる。

 それだけで十分価値がある。

 帰り際、

 訓練場から爆発音が聞こえてきた。

 ドォォン!!

 炎

 風

 氷

 雷

 様々な魔術が飛び交っている。

「……」

 俺は足を止めた。

 すごい。

 全部刻印したい。

 いや、

 我慢しろ。

 今日は説明だけだ。

「明日か」

 自然と胸が高鳴る。

 飛び級試験。

 受かればBランク。

 落ちても経験になる。

 どちらに転んでも損はない。

 宿へ戻ると、俺は机いっぱいに石を並べた。

 土壁

 探知

 収納

 癒し

 今まで作ってきた刻印石たち。

「みんな」

「明日も頼むぞ」

 石に向かって話しかける俺を見た宿屋のおばさんは、不思議そうな顔をしていた。

「石と話す子は初めて見たよ」

「ははは……」

 否定できなかった。

 石は返事こそしない。

 でも、

 見ているだけで落ち着く。

 それだけで十分だった。

 次の日、

 飛び級試験当日、

 魔術士ギルドには、普段以上の人が集まっていた。

「今年は誰が受けるんだ?」

「十人くらいらしいぞ」

「Bランクなんて無理だろ」

 ざわつく会場。

 その中で俺は、小さく深呼吸した。

「さて」

「頑張りますか」

 石好きの挑戦が、いよいよ始まる。

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