26. 魔術士ギルドに行ってみた
翌朝、
俺はいつものように宿を出ると、街の大通りを歩いていた。
今日の目的地は冒険者ギルドではない。
「魔術士ギルド……どこだろう」
昨日、鉱石を眺めながら思いついたこと。
もっとたくさんの魔術を見たい。
それが目的だった。
刻印石を増やすためにも、魔術士が集まる場所へ行くのが一番早い。
「すみません」
露店で果物を売っていたおばちゃんへ声を掛ける。
「魔術士ギルドってどこですか?」
「ああ、それなら中央広場の北側だよ」
「高い塔みたいな建物が見えるだろ?」
「あれさ」
「ありがとうございます!」
数分後、
「……おぉ」
思わず声が漏れる。
目の前には五階建てほどの白い建物が建っていた。
壁には複雑な魔法陣が刻まれ、
青い旗が風になびいている。
入口には大きく書かれていた。
『魔術士ギルド』
「冒険者ギルドとは全然違うな」
向こうは酒場のような雰囲気だった。
対してこちらは図書館のように静かだ。
中へ入ると、
「いらっしゃいませ」
受付には眼鏡を掛けた女性が座っていた。
「初めての方でしょうか?」
「はい」
「今日はどのようなご用件ですか?」
「登録をしたいです」
受付嬢は少し驚いた顔をする。
「魔術士登録ですね」
「では身分証をお願いします」
俺は冒険者カードを差し出した。
「冒険者でも登録できるんですね」
「もちろんです」
「冒険者と魔術士は別組織ですから」
「別なんですか?」
「はい」
受付嬢は説明を始めた。
「冒険者ランクは依頼達成や戦闘能力を評価します」
「一方で魔術士ランクは」
「魔術そのものの技量を評価する制度です」
「なるほど」
「ですので」
「冒険者がFランクでも」
「魔術士ではBランクという方もいます」
「逆もあります」
「へぇ」
面白い。
完全に別物らしい。
「登録には簡単な魔術試験があります」
「試験?」
「土属性がお得意と書かれていますので」
「土魔術を一つお願いします」
「分かりました」
俺は練習場へ案内された。
石畳の広場だった。
何人もの魔術士が訓練している。
火球
風刃
水槍
いろいろな魔法が飛び交っていた。
「……」
すごい。
俺の目は完全に輝いていた。
(全部刻印したい。)
そんな欲望が湧いてくる。
危ない危ない。
今は、試験だ。
「では始めてください」
「はい」
俺は小さな石を一つ取り出す。
「土壁」
刻印石へ魔力を流す。
ゴゴゴゴッ!
地面から厚い土壁がせり上がった。
「……」
試験官が目を丸くする。
「魔道具ですか?」
「はい」
嘘ではない。
石なのだから。
「ふむ」
試験官は土壁を軽く叩いた。
「硬い」
「しかも発動が速い」
受付嬢も驚いている。
「登録自体は問題ありません」
「ですが」
試験官が腕を組む。
「この発動速度」
「魔力量」
「魔力制御」
「Fランク相当ではありませんね」
「え?」
そんなに違うのか。
「普通なら」
「最低でもD」
「いえ」
「場合によってはCランクもあり得ます」
「……」
ちょっと嬉しい。
でも、
刻印石のおかげだ。
俺自身がすごいわけではない。
「ちなみに」
受付嬢が一枚の紙を取り出した。
「近々、飛び級試験があります」
「飛び級?」
「はい」
「通常はE、D、Cと順番に昇格しますが」
「実力がある方だけ」
「一気にランクを上げられる制度です」
「へぇ」
「最高でBランクまで認定されます」
「B!?」
思わず声が出た。
そんな制度があるなんて。
「もし興味がおありでしたら」
「明日、説明会があります」
受付嬢は笑顔で言った。
魔術士ギルドを出て、
俺は空を見上げる。
「飛び級か……」
正直、
少し興味がある。
Bランクになれれば、見られる魔術も増えるはずだ。
そして、
刻印できる魔術も、もっと増える。
石好きの心は、
もう決まっていた。
「説明だけでも聞いてみるか」
俺は再び魔術士ギルドの建物を見上げ、小さく笑った。
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