25. さて、大人買いでもしましょうか!
「ありがとうございました!」
結局、
一晩泊めてもらってしまった。
それに加えて朝食まで……
こんなにもてなしてもらって申し訳な
村を出発する朝、
村人たちは村の入口まで見送りに来てくれていた。
「また遊びに来てくださいね!」
子どもたちも元気いっぱいに手を振る。
その中心にはアーシャさんがいた。
「バサルトさん」
「はい?」
彼女は小さな布袋を差し出してきた。
「これ、村のみんなからです」
「え?」
中を見ると、小さな銀貨が数枚。
そして、きれいに磨かれた白い石が入っていた。
「これは……」
「この村の川で採れる石です」
「お守り代わりなんですよ」
俺はそっと手に取る。
乳白色で、なめらかな丸い石。
俺が拾ったのと似ている。
特別高価ではない。
でも、
「……きれいだ」
思わず見惚れてしまう。
「気に入っていただけました?」
「もちろんです!」
銀貨より先に石を眺める俺を見て、村人たちは笑っていた。
街へ戻る頃には、日も傾き始めていた。
「さて」
討伐報酬、依頼報酬。
合わせてそこそこの金額になっているはずだ。
「まずは冒険者ギルドかな」
依頼完了の手続きを済ませる。
受付嬢は書類を確認すると笑顔で言った。
「討伐成功、お疲れさまでした」
「これで、Eランクに昇格ですね」
「ありがとうございます」
そう、これで俺は晴れてE級冒険者だ。
鉱石依頼とかは……
まだか。
「はい、こちらが報酬になります」
革袋が一つ渡される。
中から聞こえる硬貨の音が心地いい。
前より財布はかなり重い。
……よし、
これだけあれば……
「行くか」
十分後、
俺が立っていたのは……
もちろん、
鉱石店だった。
「いらっしゃい!」
店主のおじさんが俺を見るなり笑う。
「あっ!」
「石好きの兄ちゃんじゃねぇか!」
「覚えていてくれたんですね」
「そりゃ覚えるさ!」
「前に全部買っていったからな!」
店内のお客さんまで振り向いた。
少し恥ずかしい。
「今日は何を探す?」
「全部です」
「……は?」
「全部見せてください」
「ははは!」
店主は豪快に笑った。
「相変わらずだな!」
棚の上へ次々と鉱石が並べられる。
水晶
フローライト
アメジスト
タイガーアイ
黒曜石
ラピスラズリ
ガーネット
シトリン
瑪瑙
ルビー
サファイア
「……」
幸せだ。
ここは天国かもしれない。
「うーん」
俺は一つずつ手に取る。
「この透明度……」
「いい」
「この縞模様も……」
「最高」
「この結晶も……」
「美しい」
気付けば三十分……
俺は一人で石を眺め続けていた。
店主も呆れ顔だ。
「兄ちゃん」
「はい?」
「そんなに石好きなのか?」
「はい」
「前世から」
「……?」
「いえ、何でもありません」
危ない危ない。
結局、
俺が選んだのは、
・水晶 五個
・フローライト 三個
・アメジスト 二個
・瑪瑙 四個
・黒曜石 三個
・小さなルビー 一個
・小さなサファイア 一個
・魔力伝導率の高い白い鉱石 二個
「毎度あり!」
店主が笑う。
「代金は……」
「355000メルクルだ」
「……」
俺の頭は止まった。
俺は財布の中を見る。
大銀貨一枚、小銀貨8枚、大鉄貨4枚、小鉄貨5枚、大銅貨2枚……
計184520メルクルだ。
「……」
足りない……
「兄ちゃん、本当に全部選ぶとはな!」
「あっ、お金が……」
俺は事情を説明する。
お金が足りていないことを。
「そうか、足りんか」
そう、足りないのなら買えない。
でも、一個でも……
せめて一つだけは欲しかった。
「じゃあ、ルビーだけください!」
「おう」
店主のおじさんはわらっていった。
会計を済ませ、収納の刻印石の中には
一つのルビー……
石好きとしては間違ってるかもしれない。
いや、
泥棒してまで石を愛すのは、石にも失礼だ。
今度は間違えなかった。
「大人買いしたかったなぁ」
俺はそう漏らすのであった。
「はい!」
財布は少し軽くなった。
でも、
収納の刻印石の中もまた、少し幸せになった。
宿へ戻る。
荷物を机へ並べる。
「ふぅ……」
窓から夕日が差し込む。
石が赤く輝いた。
「綺麗だ……」
前世では、
仕事に疲れて帰宅し、
石を眺める時間だけが癒やしだった。
今世では、
石が、
戦う力にもなる。
人を助ける力にもなる。
「最高じゃないか」
思わず笑ってしまう。
すると、
ふと、一つの考えが頭をよぎる。
「そういえば……」
今までは。
人のスキルだったり自分の魔術だったりを刻印してきた。
土壁
探知
収納
癒し
でも、
「魔術師って」
「もっといろんな魔法を使えるよな?」
炎
風
雷
氷
光
闇
「……」
魔術師が集まる場所。
そんな場所があるはずだ。
「冒険者ギルドじゃなくて」
「魔術士のギルドとか」
もし、そこで魔法を見られたら。
刻印石は一気に増える。
俺の胸は高鳴った。
「よし」
明日は、
魔術士ギルドへ行ってみよう。
石好きの新たな冒険は、まだ始まったばかりだった。
評価をお願いします!




